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林野庁

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第1部 第 IV 章 第1節 木材需給の動向(5)

(5)木材輸出対策

(我が国の木材輸出は近年増加)

我が国の木材輸出は、中国等における木材需要の増加や韓国におけるヒノキに対する人気の高まり、円安方向への推移等を背景に、平成25(2013)年以降増加しており、平成28(2016)年の木材輸出額は、前年比4%増の238億円となった。

品目別にみると、丸太が85億円(前年比10%減)、製材が38億円(前年比15%増)、合板等が49億円(前年比63%増)となっており、これらで全体の輸出額の約7割を占めている。前年から製材や合板等の木材製品が増加した一方で、丸太は減少したものの中国・韓国向けの輸出が多いことから、依然として輸出額全体の約3分の1を占めている。

また、輸出先を国・地域別にみると、中国が90億円で最も多く、フィリピンが56億円、韓国が31億円、台湾が16億円、米国が13億円と続いている(資料 IV -20)。このうち、中国向けはスギが主体で、梱包材、土木用材、コンクリート型枠(かたわく)用材等として利用されており、また、韓国向けはヒノキが主体で、内装材等として利用されている。フィリピン向けは、合板等が8割近くを占めている。



(製品輸出への転換等に向けた取組)

平成28(2016)年5月に、政府の「農林水産業・地域の活力創造本部」は、「農林水産業の輸出力強化戦略」を取りまとめた。

同戦略では、林産物のうち、スギ・ヒノキについて、丸太中心の輸出から、我が国の高度な加工技術を活かした製品の輸出への転換を推進するとともに、新たな輸出先国の開拓に取り組むこととした。

林野庁では、同戦略に基づき、日本産木材の認知度向上、日本産木材製品のブランド化の推進、ターゲットを明確にした販売促進等に取り組んでいる。

まず、日本産木材の認知度向上としては、海外における展示施設の設置や展示会への出展、モデル住宅の建築・展示を支援している。平成28(2016)年10月に、「一般社団法人日本木材輸出振興協会(*54)」は、ベトナムのホーチミン市において、日本産木材の展示施設を開設した。同協会では、当施設を拠点として、日本産木材のPR、商談会の開催、ベトナムの木材市場の情報収集等に取り組んでいる(事例 IV -1)。また、同協会と輸出企業との連携により、2016年7月に中国の広州(こうしゅう)市で開催された「広州国際建築装飾博覧会」には、我が国から8の企業・団体が、製材や内装材、家具等を出展、また、2016年12月に台湾の台北(タイペイ)市で開催された「台北国際建築建材及産品展」には、3の企業・団体が合板やLVL等を出展し、日本産木材製品のPRを行った。さらに、同協会が、2015年に中国の大連(だいれん)市に、2017年に中国東莞(とうかん)市に日本産木材を使った木造軸組モデル住宅を設置し、展示・PRを行っている。

次に、日本産木材製品のブランド化の推進としては、中国の「木構造設計規範」の改定を見据え、規範の運用指針となる「木構造設計手引」に木造軸組構法(*55)の設計等を盛り込む提案書の作成に取り組んでいる。中国では、これまで、我が国の「建築基準法(*56)」に相当する「木構造設計規範」に、日本産の木材と我が国独自の工法である木造軸組構法が位置付けられておらず、同国において、構造部材として日本産木材を使用することができなかった。このため、平成22(2010)年から同協会からの依頼を受けた国立研究開発法人森林総合研究所(*57)等の日本側専門家が、同規範の改定作業に参加して、日本産木材と木造軸組構法を位置付けるよう、提案を行ってきた。その結果、日本産のスギ、ヒノキ及びカラマツを構造材として規定するとともに、木造軸組構法を新たに位置付けることが了承され、今後、公布の上、施行される予定となっている。

さらに、ターゲットを明確にした販売促進としては、輸出先国バイヤーの日本への招へいによる意見交換会・セミナーの開催や工場見学、輸出先国の木材加工・販売業者と日本の輸出業者による商談会の開催等に支援している。

このほか、平成28(2016)年度補正予算により、新たな輸出先国開拓のため、有望な輸出先と考えられる米国とインドを対象として、木材輸出のポテンシャルに関する市場調査を支援している。

都道府県においても、輸出促進のため、協議会等を設置する動きが広がっている(事例 IV -2)。

事例 IV -1 ベトナムに日本産木材のPR施設が開設

ジャパンウッドステーションの様子
ジャパンウッドステーションの様子

ベトナムは、家具産業が盛んであり、近年、日本からの木材製品の輸出額が伸びている有望な輸出先国である。

このため、平成28(2016)年10月に、一般社団法人日本木材輸出振興協会は、ベトナムのホーチミン市に日本産木材製品の展示施設として、「ジャパンウッドステーション」を開設した。同施設では、角材や集成材製品のほか、床板や腰板等の内装材、和室キットを展示するなどにより日本産木材のPRを行っている。

同施設の開設後、平成28(2016)年12月までに、28社が来場し、民間の業者間の関係構築に役立っている。

事例 IV -2 各地域における木材輸出の取組

バルク船への積み込み(志布志港)
バルク船への積み込み(志布志港)
アンテナショップ内の様子(韓国)
アンテナショップ内の様子(韓国)

鹿児島県と宮崎県では、県境を越えた近隣の4森林組合が連携して木材輸出戦略協議会を設立し、丸太輸出量全国第1位の志布志(しぶし)港(鹿児島県志布志市)を活用して、主に中国・韓国向けにスギ、ヒノキ丸太の輸出に取り組んでいる。

同協議会で集出荷することにより、安定的な供給や、受注や出荷までの時間短縮が図られ、平成27(2015)年度の輸出量は、輸出を開始した平成23(2011)年度の9倍近い4万m3となった。

今後、同協議会では、付加価値の高い良質材等の更なる輸出拡大に取り組むこととしている。

また、岡山県では、平成28(2016)年8月に、岡山県津山(つやま)圏域の木材産業関連業者が組織する美作(みまさか)材輸出振興協議会が、岡山県と津山市の支援を受けて、ヒノキの人気が高い韓国において、県産ヒノキ製材品(内装・家具用の板材や家具等)を展示・販売するアンテナショップをソウル近郊の城南(ソンナム)市に開設した。

同協議会は、同施設を拠点に、販路開拓の強化や市場調査等にも取り組んでいる。


(*54)平成16(2004)年に「日本木材輸出振興協議会」として設立され、平成23(2011)年10月に「一般社団法人日本木材輸出振興協会」に移行。

(*55)木造軸組構法について詳しくは、160ページを参照。

(*56)「建築基準法」(昭和25年法律第201号)

(*57)平成29(2017)年4月1日から国立研究開発法人森林研究・整備機構に名称変更。


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