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第1部 第 IV 章 第3節 木材利用の動向(4)

(4)木質バイオマスのエネルギー利用

(木材チップや木質ペレット等による木材のエネルギー利用)

木材は、昭和30年代後半の「エネルギー革命」以前は、木炭や薪の形態で日常的なエネルギー源として多用されていたが、近年では、木材チップや木質ペレットが再生可能エネルギーの一つとして再び注目されている(*150)。

平成28(2016)年5月に変更された「森林・林業基本計画」では、平成37(2025)年における燃料材(ペレット、薪、炭及び燃料用チップ)の利用目標を800万m3と見込んでいる。その上で、木質バイオマスのエネルギー利用に向けて、「カスケード利用(*151)」を基本としつつ、木質バイオマス発電施設における間伐材・林地残材等の利用、地域における熱電併給システムの構築等を推進していくこととしている(事例 IV -8)。

事例 IV -8 山村地域における木質バイオマスエネルギー利用の取組

ペレットの原料となる曲がり材・小径材
ペレットの原料となる
曲がり材・小径材
木質バイオマス発電の設備
木質バイオマス発電の設備

群馬県多野郡(たのぐん)上野村(うえのむら)は、木質バイオマスエネルギーの地産地消に取り組んでおり、村内の森林整備により伐採・搬出した木材のうち製材用として利用できない曲がり材・小径材を村内の工場でペレットに加工しており、年間1,600トン生産している。これらのペレットについては、村内でボイラーやストーブの燃料として利用するとともに、木質バイオマス発電にも利用している。

平成27(2015)年から稼働している同村の木質バイオマス発電施設は、エネルギーの利用効率が高い熱電併給システムであり、発電出力180kW、熱出力270kW、ペレット使用量約930トン/年の小型のもので、村内で調達できる木材の量を考慮したものとなっている。

また、木質バイオマス発電施設にはきのこセンターが併設されている。きのこ生産に当たっては、同発電施設から供給される電力と冷暖房用の熱が利用されている。このきのこ生産により約60名の雇用を確保するなど、木質バイオマスエネルギーの地産地消の取組全体で約150名の雇用が創出されている。


(*150)林野庁が毎年取りまとめている「木材需給表」においても、平成26(2014)年からは、近年、木質バイオマス発電施設等での利用が増加している木材チップを加えて公表している。

(*151)木材を建材等の資材として利用した後、ボードや紙等の利用を経て、最終段階では燃料として利用すること。



(間伐材・林地残材等の活用が重要)

エネルギー源として利用される木質バイオマスには、製材工場等で発生する端材(製材等残材)、建築物の解体等で発生する解体材・廃材(建設資材廃棄物)、木材生産活動から発生する間伐材・林地残材等がある。「木質バイオマスエネルギー利用動向調査」によれば、平成27(2015)年にエネルギーとして利用された木材チップの量は、「製材等残材」が143万トン、「建設資材廃棄物」が420万トン、「間伐材・林地残材等」が117万トンで、合計690万トンとなっている(*152)。このほか、木質ペレットで16万トン、薪で5万トン、木粉(おが粉)で37万トンがエネルギーとして利用されている(*153)。

このうち、製材等残材については、その大部分が、自工場内における木材乾燥用ボイラー等の燃料や、製紙等の原料として利用されている。平成23(2011)年における工場残材の出荷先別出荷割合は、「自工場で消費等」が31.8%、「チップ等集荷業者・木材流通業者等」が26.8%、「火力発電施設等」が1.7%となっている(*154)。

また、建設資材廃棄物については、平成12(2000)年の「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(*155)」により再利用が義務付けられたことから利用が進み、木質ボードの原料、ボイラーや木質バイオマス発電用の燃料等として再利用されている。

さらに、間伐材・林地残材等については、木材チップや木質ペレットの形でエネルギーとして利用された量が年々増加しており、平成27(2015)年には、前年から60%増加して、268万m3となった(資料 IV -43)。しかしながら、間伐材・林地残材等の収集・運搬にはコストが掛かるため、林内に放置されるものも多くなっている。

間伐材・林地残材等については、発電の燃料としての需要が拡大しつつあることから、施業集約化や路網整備等による安定供給体制の構築により、エネルギー等としての利用を進めていくことが重要である。平成28(2016)年9月に見直された「バイオマス活用推進基本計画」では、「林地残材(*156)」について、現在の年間発生量約800万トンに対し約9%となっている利用率を(資料 IV -44)、平成37(2025)年に約30%とすることを目標として設定している。

エネルギー源として利用された間伐材・林地残材等由来の木質バイオマス量の推移
データ(エクセル:39KB)
          木質バイオマスの発生量と利用量の状況(推計)

(*152)ここでの重量は、絶乾重量。

(*153)林野庁プレスリリース「「平成27年 木質バイオマスエネルギー利用動向調査」の結果(確報)について」(平成29(2017)年1月31日付け)

(*154)農林水産省「平成23年木材流通構造調査」

(*155)「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(平成12年法律第104号)

(*156)「木質バイオマスエネルギー利用動向調査」における間伐材・林地残材等に該当する。



(木質ペレットが徐々に普及)

木質ペレットは、木材加工時に発生するおが粉等を圧縮成形した燃料であり、形状が一定で取り扱いやすい、エネルギー密度が高い、含水率が低く燃焼しやすい、運搬や貯蔵も容易であるなどの利点がある。

木質ペレットは、石油価格の高騰を受けた代替エネルギー開発の一環として、昭和57(1982)年に国内での生産が始まったが、当時は十分に普及しなかった(*157)。その後、地球温暖化等の環境問題への関心の高まり等もあり、木質ペレットの国内生産量は増加傾向で推移してきたが、平成27(2015)年については前年比5%減の12.0万トンとなっており、工場数は前年と同様の142となっている(資料 IV -45)。これに対して、平成27(2015)年の木質ペレットの輸入量は、前年から2倍以上増加し、23.2万トンであった(*158)。

木質ペレット生産工場の生産規模をみると、我が国では、年間100~1,000トン程度の工場が約6割を占めており(*159)、年間数万トン程度の工場が中心の欧州諸国と比べて相当小規模となっている。国内で生産される木質ペレットの競争力を高めるためには、木質ペレット生産工場の規模拡大を進める必要がある。


(*157)小林裕昇 (2009) 木材工業, Vol.64(4): 154-159.

(*158)財務省「貿易統計」における「木質ペレット」(統計番号:4401.31-000)の輸入量。

(*159)公益財団法人日本住宅・木材技術センター (2010) 木質ペレットのすすめ.



(木質バイオマスの熱利用)

近年、公共施設や一般家庭等において、木質バイオマスを燃料とするボイラーやストーブの導入が進んでいる(事例 IV -9)。平成27(2015)年における木質バイオマスを燃料とするボイラーの導入数は、全国で1,945基となっている(資料 IV -46)。業種別では、農業が403基、製材業・木製品製造業が298基等、種類別では、ペレットボイラーが935基、木くず焚きボイラーが780基、薪ボイラーが129基等となっている(*160)。

また、欧州諸国では、燃焼プラントから複数の建物に配管を通し、蒸気や温水を送って暖房等を行う「地域熱供給」に、木質バイオマスが多用されている(*161)。例えば、オーストリアでは、2013年における総エネルギー量1,425PJのうち、14%が木質バイオマスに由来するものとなっている。同国では1990年代後半以降、小規模を中心に木質バイオマスボイラーの導入が増加しており(*162)、2013年には全世帯の20%で木質バイオマスによる暖房等が導入されているほか、25%で地域熱供給が行われている(*163)。

これに対して我が国では、木質バイオマスを利用した地域熱供給はほとんど進んでいなかったが、一部の地域では取組がみられる(*164)。今後は、小規模分散型の熱供給システムとして、木質バイオマスによる地域熱供給の取組も推進していくことが重要である。

事例 IV -9 温浴施設における薪ボイラーの導入

「数馬の湯」
「数馬の湯」
設置された薪ボイラー
設置された薪ボイラー

東京都西多摩郡(にしたまぐん)檜原村(ひのはらむら)では、これまで利活用されていなかった村内の資源をエネルギー利用することで二酸化炭素の排出量を削減することを目標として、木質バイオマスの活用に取り組んでいる。

平成24(2012)年4月から、檜原村温泉センター「数馬(かずま)の湯」において、従来の灯油ボイラーに加え、薪ボイラー(出力80kW)2基を活用している。

年間に使用する薪70トンは全て村内の森林で伐採された丸太から生産されており、これまで使っていた灯油の量を減らすことで二酸化炭素排出量を削減し、地域の貴重な資源を地域内で循環させる取組となっているほか、薪製造施設の運営を地元のシルバー人材センターへ委託することにより、雇用創出にも貢献している。

資料:檜原村「木質バイオマス利活用サイト」


(*160)林野庁プレスリリース「「平成27年 木質バイオマスエネルギー利用動向調査」の結果(確報)について」(平成29(2017)年1月31日付け)

(*161)欧州での地域熱供給については、「平成23年度森林及び林業の動向」の37ページを参照。

(*162)Woodheat solutions(2010) Sustainable wood energy supply

(*163)Austrian Energy Agency:Basisdaten 2015 Bioenergie

(*164)「平成25年度森林及び林業の動向」の181ページ、「平成27年度森林及び林業の動向」の163ページも参照。



(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)

平成24(2012)年7月から、電気事業者に対して、再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を一定の期間・価格で買い取ることを義務付ける再生可能エネルギーの固定価格買取制度(*165)が導入され、太陽光、風力、中小水力、地熱、バイオマスを用いて発電された電気を対象として、電気事業者が買取りに必要な接続や契約の締結に応じる義務を負うこととされた。

木質バイオマスにより発電された電気の平成28(2016)年度の買取価格(税抜き)は、「間伐材等由来の木質バイオマス」を用いる場合は40円/kWh(出力2,000kW未満)、32円/kWh(出力2,000kW以上)、「一般木質バイオマス」は24円/kWh、「建設資材廃棄物」は13円/kWh、買取期間は20年間とされている。平成28(2016)年12月に開催された第28回調達価格等算定委員会では、平成29(2017)年10月以降、出力20,000kW以上の木質バイオマス発電所で「一般木質バイオマス」を燃料として発電される電気の調達価格を21円/kWhとして新設するとともに、新設した区分も含めて、調達価格を平成29(2017)年度から平成31(2019)年度までの3年間適用することが提言された(*166)。

林野庁は、平成24(2012)年6月に、木質バイオマスが発電用燃料として適切に供給されるよう、発電利用に供する木質バイオマスの証明に当たって留意すべき事項を「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」として取りまとめており、伐採又は加工・流通を行う者が、次の流通過程の関係事業者に対して、納入する木質バイオマスが間伐材等由来の木質バイオマス又は一般木質バイオマスであることを証明することとしている。また、木質バイオマスを供給する事業者の団体等は、間伐材等由来の木質バイオマスと一般木質バイオマスの分別管理や書類管理の方針に関する「自主行動規範」を策定した上で、団体の構成員等に対して、適切な取組が行われている旨の認定等を行うこととしている(*167)。


(*165)平成23(2011)年8月に成立した「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(平成23年法律第108号)に基づき導入されたもの。

(*166)調達価格等算定委員会「平成29年度以降の調達価格等に関する意見」について(平成28(2016)年12月13日)

(*167)林野庁「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」(平成24(2012)年6月)



(木質バイオマスによる発電の動き)

再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入を受けて、各地で木質バイオマスによる発電施設が新たに整備されている。主に間伐材等由来のバイオマスを活用した発電施設については、平成28(2016)年10月末現在、出力2,000kW以上の施設29か所、出力2,000kW未満の施設5か所が同制度により売電を行っている。さらに、全国で合計40か所の発電設備の新設計画が、同制度の認定を受けており、順次稼動していくことが見込まれている(資料 IV -47)。

木質バイオマス発電施設の導入による地域への経済波及効果を試算すると、送電出力5,000kWの発電施設の場合、未利用材の燃料として年間約10万m3の間伐材等が使用され、約12~13億円の売電収入(燃料代は約7~9億円)が得られるほか、燃料の収集等を含めて50人以上の雇用が見込まれる(*168)。また、今後は、地域で発生する木質バイオマスを小規模な発電施設の燃料として有効に活用し、地域の活性化につなげる地域密着型の取組の広がりも期待される。


(*168)林野庁「固定価格買取制度地方説明会」資料



(木質バイオマスの安定供給と有効活用が課題)

木質バイオマス発電施設の導入に当たっては、原料の安定供給を確保するため、地域の資源量及び供給可能量の把握、木質バイオマスの収集方法等といった点について、事前によく検討を行う必要がある。各地では、発電施設等が地元の森林組合等と協定を結び、間伐材・林地残材等の原料の安定的な確保を図っているほか、林家等が搬出するものを定額で買い取るなどの取組も行われている(事例 IV -10)。

また、木質バイオマスの安定供給に向けて、施業の集約化、路網の整備、高性能林業機械の導入等により、収集・搬出コストの低減を進める必要もある。間伐材・林地残材等だけを搬出すると、販売価格に対して搬出コストが高くなることから、素材生産において全木集材等の方法により、製材・合板等の他の用材と併せて搬出することが合理的である。このため、製材・合板等の需要と供給の拡大に向けて取り組むことにより、併せて木質バイオマスの安定供給を確保することが重要である。

一方、木質バイオマスの活用に当たっては、発電のみを行う場合はエネルギー変換効率が低位となることもあることから、熱利用も含めて適切かつ有効に活用することが重要である。

林野庁では、低コストで効率的な作業システムの普及等に取り組むとともに、木質バイオマスのエネルギー利用が円滑に進むよう、間伐材・林地残材等の活用に資する木質バイオマス関連施設の整備、木質バイオマスの利用等に関する相談・サポート体制の構築や技術開発への支援を行っている。平成25(2013)年度からは、木質バイオマスの有効活用を推進するため、環境省と連携して「木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業」を実施し、9か所(*169)で未利用材の低コスト搬出・運搬システムの構築やボイラーの導入等による木質バイオマス利用システムの実証に取り組んでいる。平成28(2016)年度には、事業の成果分析・評価を行って報告書(*170)に取りまとめるとともに、取組を推進するためシンポジウムを開催した。

平成28(2016)年12月からは、エネルギーの安定供給や林業の成長産業化、中山間地域の振興の観点から、木質バイオマスの利用を一層推進するため、農林水産省と経済産業省が連携して、副大臣及び政務官による「木質バイオマスの利用促進に向けた共同研究会」を開催している。

事例 IV -10 木質バイオマス発電を地域の連携で推進

朝来市の工業団地内に整備された施設
朝来市の工業団地内に
整備された施設
木質バイオマス発電所
木質バイオマス発電所

平成28(2016)年12月、兵庫県朝来市において、兵庫県、朝来市(あさごし)、兵庫県森林組合連合会、公益社団法人兵庫みどり公社、関西電力株式会社の5者で締結した協定に基づく木質バイオマス発電事業が開始した。

同事業は、未利用木材の搬出から乾燥、燃料チップ製造、燃料チップを活用した発電までを地域で連携して行うもので、バイオマス発電所への燃料の供給は、隣接する未利用木材の貯蔵、チップの製造・保管を行う施設から行われる仕組みとなっている。バイオマス発電所の発電出力は5,600kWであり、年間約6.3万トンの未利用木材が燃料として必要となる。このことから、長期契約により使用する燃料用チップを調達することにより、需給を安定的に行うこととしている。

兵庫県では、本事業を推進することにより、未利用木材の活用を促進し、林業再生や地域経済の活性化並びに再生可能エネルギーの普及・拡大を図っていくこととしている。


(*169)岩手県釜石地域、福島県いわき・南相馬地域、福島県南会津地域、栃木県那珂川地域、千葉県山武・長生地域、山口県地域、高知県四万十地域、岩手県遠野地域及び福井県あわら・坂井・南越前地域の9か所。

(*170)林野庁「木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業活動評価報告書」(平成29(2017)年3月)


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