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林野庁

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第1部 第 IV 章 第3節 木材利用の動向(2)

(2)住宅分野における木材利用

(住宅分野は木材需要に大きく寄与)

我が国では、木材需要の約4割、国産材需要の過半が建築用材であるが(*124)、建築物の木造率は住宅分野で高く、新設住宅着工戸数の約半分が木造となっている(*125)。また、平成27(2015)年に農林水産省が実施した「森林資源の循環利用に関する意識・意向調査」で消費者モニター(*126)に対して今後住宅を建てたり、買ったりする場合に選びたい住宅について聞いたところ、「木造住宅(昔から日本にある在来工法のもの)」及び「木造住宅(ツーバイフォー工法など在来工法以外のもの)」と答えた者が74.7%となり、「非木造住宅(鉄筋、鉄骨、コンクリート造りのもの)」と答えた者の11.1%を大きく上回った(資料 IV -37)。このように、住宅の建築用材の需要が、木材の需要、特に国産材の需要にとって重要となっている。

我が国における木造住宅の主要な工法としては、「在来工法(木造軸組構法)」、「ツーバイフォー工法(枠組壁工法)」及び「木質プレハブ工法」の3つが挙げられる(*127)。平成28(2016)年における工法別のシェアは、在来工法が75%、ツーバイフォー工法が23%、木質プレハブ工法が3%となっている(*128)。在来工法による木造戸建て注文住宅については、半数以上が年間供給戸数50戸未満の中小の大工・工務店により供給されたものであり(*129)、住宅メーカーだけではなく、中小の大工・工務店も木造住宅の建築に大きな役割を果たしている。

林野庁では、安定的な原木供給、生産、流通及び加工の各段階でのコストダウンや、住宅メーカー等のニーズに応じた最適な加工・流通体制の構築等の取組、地域材の需要を喚起する取組を進めてきた。このような中で、住宅メーカーでは、国産材を積極的に利用する取組が拡大しており、最近では、ツーバイフォー工法など、木造軸組構法以外の工法を中心とする住宅メーカーでも、国産材の利用が進んでいる。なお、平成27(2015)年3月には、ツーバイフォー工法部材の「日本農林規格(JAS(ジャス))」が改正(*130)され、国産材(スギ、ヒノキ、カラマツ)のツーバイフォー工法部材強度が適正に評価されるようになり、今後、同工法への国産材利用が更に進むことが期待される。


(*124)林野庁試算による。

(*125)新設住宅着工戸数と木造率については、135-136ページを参照。

(*126)この調査での「消費者」は、農林水産行政に関心がある20歳以上の者で、原則としてパソコンでインターネットを利用できる環境にある者。

(*127)「在来工法」は、単純梁形式の梁・桁で床組みや小屋梁組を構成し、それを柱で支える柱梁形式による建築工法。「ツーバイフォー工法」は、木造の枠組材に構造用合板等の面材を緊結して壁と床を作る建築工法。「木質プレハブ工法」は、木材を使用した枠組の片面又は両面に構造用合板等をあらかじめ工場で接着した木質接着複合パネルにより、壁、床、屋根を構成する建築工法。

(*128)国土交通省「住宅着工統計」(平成28(2016)年)。在来工法については、木造住宅全体からツーバイフォー工法、木質プレハブ工法を差し引いて算出。

(*129)請負契約による供給戸数についてのみ調べたもの。国土交通省調べ。

(*130)「枠組壁工法構造用製材の日本農林規格の一部を改正する件」(平成27年農林水産省告示第512号)



(地域で流通する木材を利用した家づくりも普及)

平成の初めごろ(1990年代)から、木材生産者や製材業者、木材販売業者、大工・工務店、建築士等の関係者がネットワークを組み、地域で生産された木材や自然素材を多用して、健康的に長く住み続けられる家づくりを行う取組がみられるようになった(*131)。

林野庁では、平成13(2001)年度から、森林所有者から大工・工務店等の住宅生産者までの関係者が一体となって、消費者の納得する家づくりに取り組む「顔の見える木材での家づくり」を推進している。平成27(2015)年度には、関係者の連携による家づくりに取り組む団体数は421、供給戸数は10,654戸となった(資料 IV -38、事例 IV -3)。

また、国土交通省では、平成24(2012)年度から、「地域型住宅ブランド化事業」により、資材供給から設計・施工に至る関連事業者から成るグループがグループごとのルールに基づき、地域で流通する木材を活用した木造の長期優良住宅(*132)等を建設する場合に建設工事費の一部を支援してきた。平成27(2015)年度からは「地域型住宅グリーン化事業」により、省エネルギー性能や耐久性等に優れた木造住宅等を整備する地域工務店等に対して支援しており、平成29(2017)年3月現在、793のグループが選定され、約8,900戸の木造住宅等を整備する予定となっている。

総務省では、平成12(2000)年度から、都道府県による地域で流通する木材の利用促進の取組に対して地方財政措置を講じており、地域で流通する木材を利用した住宅の普及に向けて、都道府県や市町村が独自に支援策を講ずる取組が広がっている。平成28(2016)年7月現在、37府県と261市町村が、地域で流通する木材を利用した住宅の普及に取り組んでいる(*133)。

事例 IV -3 林業活性化に寄与する住宅建築・供給の取組

施主自らが選木・伐採を体験
施主自らが選木・伐採を体験
木や家への愛着が高まる
木や家への愛着が高まる

住宅会社の株式会社フォレストコーポレーション(長野県伊那市(いなし))は、身近な資源である「信州の木」を使った住宅の建築・供給に取り組んでいる。同社では、県産材の流通ルートとなる「産地」「製材」「プレカット」「建設」の各工程をグループ化し、供給の安定化を図ることで、従前35%だった県産材使用率を85%まで高めている。

同社では、施主自らが山に入り、選木・伐採し、壁の塗装を行うなど、家づくりを体験してもらうことで、木や家への愛着を高めることにつながる取組や、間伐材を薪ストーブの燃料として有効利用する取組も行っている。また、長野県を中心に800軒を超える実績を通じ、関係者の雇用を促進するなど、長野県の林業活性化にも寄与している。平成28(2016)年には、こうした取組が評価され、優れたサービスを表彰する日本で初めての表彰制度である、サービス生産性協議会の「第1回 日本サービス大賞」の「地方創生大臣賞」を受賞した。

コラム 熊本地震における木造住宅の耐震性

「建築基準法(注1)」に基づく現行の耐震基準(新耐震基準)は、昭和53(1978)年の宮城県沖地震等を踏まえて昭和56(1981)年6月に導入され、木造住宅については、必要壁量の増加が行われた。その後、平成7(1995)年に発生した阪神・淡路大震災における被害等を受けて、平成12(2000)年に「建築基準法施行令(注2)」の改正と告示(注3)の制定・改正がなされ、木造住宅の基礎の仕様や接合部の仕様、壁配置のバランスのチェック等、同震災の被害調査を踏まえ、規定の明確化等が行われた。

平成28(2016)年4月に発生した熊本地震は、2回の最大震度7の地震を含め、震度6弱以上を観測する地震が計7回発生し、熊本県を中心に建築物に倒壊等の被害をもたらし、木造住宅等の木造建築物も被害を受けた。

一般社団法人日本建築学会、国土交通省国土技術政策総合研究所及び国立研究開発法人建築研究所が実施した熊本県益城町(ましきまち)における被害調査によると、旧耐震基準の木造建築物については、新耐震基準導入以降のものに比べて、顕著に倒壊率が高かった一方で、新耐震基準導入以降の木造建築物においては、接合部の仕様等が明確化された平成12(2000)年以降の倒壊率が低くなっていた。また、住宅性能表示制度に基づく耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)が3のものには大きな損傷が見られず、その大部分が無被害であった。

林野庁においても、こうした木造住宅の耐震性に関する情報の提供に努めている。

注1:「建築基準法」(昭和25年法律第201号)

2:「建築基準法施行令」(昭和25年政令338号)

3:「木造建築物の軸組の設置の基準を定める件」(平成12年建設省告示第1352号)、「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」(平成12年建設省告示第1460号)

資料:「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書」(平成28(2016)年9月)

木造の建築時期別の被害状況
木造の建築時期別の被害状況

(*131)嶋瀬拓也 (2002) 林業経済, 54(14): 1-16.

(*132)構造の腐食、腐朽及び摩損の防止や地震に対する安全性の確保、住宅の利用状況の変化に対応した構造及び設備の変更を容易にするための措置、維持保全を容易にするための措置、高齢者の利用上の利便性及び安全性やエネルギーの使用の効率性等が一定の基準を満たしている住宅。

(*133)林野庁木材産業課調べ。都道府県や市町村による取組の事例については、ホームページ「日本の木のいえ情報ナビ」を参照。



(木材利用に向けた人材の育成)

戸建て住宅のみならず様々な建築物について、幅広く木材利用を推進していくためには、木造建築物の設計を行う技術者等の育成も重要である。このため、林野庁では、国土交通省と連携し、平成22(2010)年度から、木材や建築を学ぶ学生等を対象とした木材・木造技術の知識習得や、住宅・建築分野の設計者等のレベルアップに向けた活動に対して支援してきた(*134)。平成26(2014)年度からは、中高層建築物等への木材利用を促進するため、このような建設物の木造化・木質化に必要な知見を有する設計者等の育成に対して支援している。また、都道府県独自の取組としても、木造建築に携わる設計者等の育成が行われている。


(*134)一般社団法人木を活かす建築推進協議会「平成25年度木のまち・木のいえ担い手育成拠点事業成果報告書」(平成26(2014)年3月)


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