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林野庁

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第1部 第 III 章 第3節 山村(中山間地域)の動向(2)

(2)山村の活性化

(地域の林業・木材産業の振興と新たな事業の創出)

山村が活力を維持していくためには、地域固有の自然や資源を守るとともにこれらを活用して、若者やUJIターン(*90)者の定住を可能とするような多様で魅力ある就業の場を確保し、創出することが必要である。

平成28(2016)年12月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2016改訂版)」等においては、林業の成長産業化が地方創生の基本目標達成のための施策の一つとして位置付けられており、木材需要の拡大や国産材の安定供給体制の構築等の取組を推進するとしている。

平成27(2015)年3月には、「山村振興法」の有効期限を10年間(平成37(2025)年3月31日まで)延長するとともに、山村振興対策の充実を図るための改正が行われた。このことを受け、農林水産省では、平成27(2015)年度から「山村活性化支援交付金」による振興山村への支援を実施している。

農林水産省では、地域の第1次産業と第2次・第3次産業(加工や販売等)に係る事業の融合等により、地域ビジネスの展開と新たな業態の創出を行う「6次産業化」の取組を進めており、林産物関係で95件の計画(*91)が認定されている(平成28(2016)年11月時点)。さらに、「農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)(*92)」は、農林漁業・食品産業に関心のある地方金融機関等との共同出資によってサブファンド(支援対象事業活動支援団体)を設立し、地域に根ざした6次産業化の取組を支援している。

さらに、農林水産省及び経済産業省では、農林漁業者と中小企業者が有機的に連携し、それぞれの経営資源を有効に活用して新商品開発や販路開拓等を行う「農商工等連携」の取組を推進しており、林産物関係では39件の計画(*93)が認定されている(平成28(2016)年10月時点)。

このほか、内閣官房及び農林水産省は、「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」として、埋もれていた地域資源の活用等により農林水産業・地域の活力創造につながる事例を選定し、全国へ発信している。


(*90)「UJIターン」とは、大都市圏の居住者が地方に移住する動きの総称。「Uターン」は出身地に戻る形態、「Jターン」は出身地の近くの地方都市に移住する形態、「Iターン」は出身地以外の地方へ移住する形態を指す。

(*91)「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」(平成22年法律第67号)に基づき、農林漁業者等が作成する「総合化事業計画」。

(*92)「株式会社農林漁業成長産業化支援機構法」(平成24年法律第83号)に基づき、平成25(2013)年2月に設立されたもの。

(*93)「中小企業者と農林漁業者との連携による事業活動の促進に関する法律」(平成20年法律第38号)に基づき、農林漁業者と中小企業者が作成する「農商工等連携事業計画」。



(里山林等の保全と管理)

山村の過疎化及び高齢化等が進む中で、里山林の保全及び再生を進めるためには、地域住民が森林資源を活用しながら持続的に里山林と関わる仕組みをつくることが必要である。このため、林野庁では、「森林・山村多面的機能発揮対策交付金」により、里山林の景観維持、侵入竹の伐採及び除去等の保全管理、広葉樹の薪への利用、路網や歩道の補修・機能強化等、自伐林家を含む地域の住民が協力して行う取組に対して支援している(事例 III -7、8)。また、間伐等の森林施業を支援するとともに、除伐等の一部として行う侵入竹の伐採及び除去に対しても支援している。

事例 III -7 竹林整備による地域の活性化に向けた取組

チッパーで竹を粉砕
チッパーで竹を粉砕
タケノコの乾燥作業の様子
タケノコの乾燥作業の様子

高知県南国市(なんこくし)の「白木谷(しらきだに)ゆめクラブ」は、それまで適切な管理が行われず荒廃していた竹林を整備して、タケノコの生産に取り組んでいる。

同団体は、モウソウチクに加えて、地域特産のシホウチクを栽培しており、これらを道の駅等で販売している。また、タケノコを乾燥させて加工したものを、契約を結んでいる飲食チェーン店へ販売するなど、販路の拡大にも取り組んでいる。さらに、竹粉砕機械(チッパー)等を活用して、伐採した竹を竹チップや竹パウダー等に加工し、土壌改良材として販売しており、タケノコ以外の竹資源の有効活用にも取り組んでいる。

これらの取組により、竹林が整備されるだけでなく、地域の特産品や雇用が創出されており、地域経済の活性化につながっている。

資料:「活動事例集(平成27年度作成)」(林野庁ホームページ「森林・山村多面的機能発揮対策交付金」)

事例 III -8 産学公と地元の連携による森林整備と地域の活性化

森林整備の様子
森林整備の様子
環境教育(ツリークライミング)の様子
環境教育(ツリークライミング)
の様子

東京都あきる野市(のし)では、菅生(すがお)地区の市有林において、近隣のIT企業、大学、あきる野市の産学公と、地元の町内会やNPO法人等が連携して、森林整備や環境教育等が行われている。

同市は、市内の森を市民の共通の財産として捉え、100年後の将来を見据えた自然環境の保全を進めるため、「郷土の恵みの森構想」を策定しており、この構想を具体化する取組の一つとして、平成23(2011)年に近隣のIT企業、大学、あきる野市により「自然環境保全活動等に関する協定書」が締結された。協定の実現に向け、同年に菅生町内会や青年会議所、NPO法人等が加わって「あきる野菅生の森づくり協議会」が設置され、現在は同協議会を中心に活動が進められている。

活動場所の市有林は、コナラを中心とした落葉広葉樹林となっており、その保全と利用を図る観点から、萌芽更新を促すための森林整備が行われている。収穫されたコナラ原木はしいたけ等のきのこ栽培に利用されているほか、地元の小学生等を対象として、しいたけの種駒打ち体験やツリークライミング等の環境教育も行われている。

これらの取組は、活動当初から市が主体的に関わることで、多様な団体の連携や地域の活性化につながるなど成果を挙げており、今後も参加団体で連携して取組が進められることが期待される。

資料:「活動事例集(平成27年度作成)」(林野庁ホームページ「森林・山村多面的機能発揮対策交付金」)


(自ら伐採等の施業を行う「自伐林家」の取組)

主に所有する森林において、自ら伐採等の施業を行う、いわゆる「自伐林家」が、近年、地域の林業の担い手として、特に地域活性化の観点から注目されている。こうした林家では、主に自家労働により伐採等を行うことから、労働に見合う費用分が収入として残るという特徴がある。

このような林家等の取組で、全国各地で実施されている例として「木の駅プロジェクト」がある。林家等が自ら間伐を行って、軽トラック等で間伐材を搬出し、地域住民やNPO等から成る実行委員会が地域通貨で買い取って、チップ原料やバイオマス燃料等として販売する取組であり、地域経済を活性化する点でも注目されている。平成29(2017)年3月には、愛知県岡崎市(おかざきし)において「第6回木の駅サミット」が開催され、同様の取組を行っている地域等が集まり、意見交換等が行われた。


(都市との交流により山村を活性化)

近年、都市住民が休暇等を利用して山村に滞在し、農林漁業や木工体験、森林浴、山村地域の伝統文化の体験等を行う「山村と都市との交流」が各地で進められている。

都市住民のニーズに応えて、都市と山村が交流を図ることは、都市住民にとっては、健康でゆとりある生活の実現や、山村や森林・林業に対する理解の深化に役立っている。また、山村住民にとっては、特用林産物や農産物の販売による収入機会の増大や、宿泊施設や販売施設等への雇用による就業機会の増大につながるのみならず、自らが生活する地域を再認識する機会ともなり得る。

このため、各市町村では、地域住民と都市住民が参画して、森林環境教育、アウトドアスポーツ、地元の特産品を使った商品開発や販売等を通じた体験・交流活動が進められている。

また、「子ども農山漁村交流プロジェクト」によって、子どもの農山漁村での宿泊による農林漁業体験や自然体験活動等を推進できるよう、農林水産省では山村側の宿泊・体験施設の整備等に対して支援している。林野庁でも、都市住民を対象とした森林環境教育の活動等に対して支援している。

さらに、平成26(2014)年に農林水産省と観光庁が「農山漁村の活性化と観光立国実現のための連携推進協定(農観連携の推進協定)」を締結し、農林漁業体験等のグリーン・ツーリズムと他の観光の組合せによる新たな観光需要の開拓、森林浴やアウトドアスポーツ等、森林を活用した観光の振興等の取組を推進している。

コラム 多様な広葉樹の魅力を活かした商品の展開

原材料となる国産広葉樹
原材料となる国産広葉樹
広葉樹でつくられた木製品
広葉樹でつくられた木製品

木製品や木造建築等の制作・販売を行っているオークヴィレッジ株式会社(岐阜県高山市(たかやまし))は、平成27(2015)年に木材生産者や製材業者と連携し、「Neo Woods 根尾(ねお)の広葉樹活用プロジェクト」(注)を立ち上げた。

同プロジェクトでは、根尾地域(岐阜県本巣市(もとすし))の森林施業の過程で一定量が発生する広葉樹のうち、流通規格を満たさない木材を原料として、商品開発や販売を行うこととしている。木工職人が造林現場で木材を直に見て用途を見定めることや、実験を繰り返して効率の良い製材の仕組みや人工乾燥の条件を導き出すことにより、樹種や形状、太さにばらつきがある広葉樹材を適材適所に用いた付加価値の高い商品開発を行っている。また、その収益の一部は根尾地域の広葉樹林の育成に活用することとしている。

注:詳しくはホームページ(http://www.neowoods.jp)を参照。

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219