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第1部 第 II 章 第4節 国際的な取組の推進(2)

(2)地球温暖化対策と森林

(国際的枠組みの下での地球温暖化対策)

地球温暖化は、人類の生存基盤に関わる最も重要な環境問題の一つであり、その原因と影響は地球規模に及ぶため、1980年代以降、様々な国際的対策が行われてきた。

1992年には、地球温暖化防止のための国際的な枠組みとして「気候変動に関する国際連合枠組条約(気候変動枠組条約(UNFCCC(*150)))」が採択された。同条約では、気候システムに危険な影響をもたらさない水準で、大気中の温室効果ガス濃度を安定化することを目的として、国際的な取組を進めることとされた。

また、平成9(1997)年には、京都市で、「気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)」が開催され、条約の目的をより実効的に達成するための枠組みとして、先進国の温室効果ガスの排出削減目標等を定める「京都議定書」が採択された。

「京都議定書」では、2008年から2012年までの5年間を「第1約束期間」としており、この期間において我が国は基準年(1990年)比6%の削減目標を達成し、このうち森林吸収量については、目標であった3.8%分を確保した。また、2013年から2020年までの8年間を「第2約束期間」としており、2011年に開催された「気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17(*151))」では、同期間における各国の森林吸収量の算入上限値を1990年総排出量の3.5%とすること、森林から搬出された後の木材(伐採木材製品(HWP(*152)))における炭素固定量を評価し、炭素蓄積の変化量を各国の温室効果ガス吸収量又は排出量として計上することなどが合意されている(*153)。

我が国は、第2約束期間においては「京都議定書」の目標を設定していないが、COP16で採択されたカンクン合意に基づき、平成32(2020)年度の削減目標を平成17(2005)年度比で3.8%以上として条約事務局に登録し、森林吸収量により約3,800万CO2トン(2.7%)以上を確保することとしている(*154)。また、2015年に開催されたCOP21において、第2約束期間の目標を設定していない先進国も、COP17で合意された第2約束期間の森林等吸収源のルールに則して、2013年以降の吸収量の報告を行い、審査を受けることとなった(*155)。

2015年にフランスのパリで開催されたCOP21では、2020年以降の気候変動対策について、先進国、開発途上国を問わず全ての締約国が参加する公平かつ実効的な法的枠組みである「パリ協定(*156)」が採択された(*157)(資料 II -41)。本協定は、2016年11月に発効し、同月にモロッコのマラケシュで開催されたCOP22において、本協定の実施指針等を2018年までに策定することが合意された。なお、我が国は、平成28(2016)年11月に本協定を締結している。

政府は、「パリ協定」や平成27(2015)年に気候変動枠組条約事務局へ提出した約束草案(*158)等を踏まえ、我が国の地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するための計画である「地球温暖化対策計画」を作成し、平成28(2016)年5月に閣議決定した。同計画では、平成32(2020)年度の温室効果ガス削減目標を平成17(2005)年度比3.8%減以上、平成42(2030)年度の温室効果ガス削減目標を平成25(2013)年度比26%減とし、この削減目標のうち、それぞれ約3,800万CO2トン(2.7%)以上、約2,780万CO2トン(2.0%)を森林吸収量で確保することを目標としている。この森林吸収量を確保するためには、平成25(2013)年度から平成32(2020)年度までの間において年平均52万ha、平成33(2021)年度から平成42(2030)年度までの間において年平均45万haの間伐の実施や地域材の利用等の森林吸収源対策を着実に実施する必要がある。そのため、同計画では、目標達成のため、適切な間伐等による健全な森林整備や、保安林等の適切な管理・保全、効率的かつ安定的な林業経営の育成、国民参加の森林づくりの推進、木材及び木質バイオマス利用の推進等の施策に総合的に取り組むとともに、間伐等の実施に必要な安定的な財源確保について検討することが明記されている。

平成27(2015)年度における間伐面積は45万haであり、森林吸収量は1,367万炭素トン(約5,010万CO2トン)、また、このうちHWPによる吸収量は75万炭素トン(約274万CO2トン)となっている(*159)。

農林水産省は、森林吸収量を確保するために必要となる間伐等を推進するための安定的な財源の確保について、平成16(2004)年以来長年にわたり、税制改正要望を行ってきている。

平成29(2017)年度与党税制改正大綱においては、森林吸収源対策及び地方の地球温暖化対策に関する安定的な財源の確保として、「エネルギー起源CO2の排出抑制のための木質バイオマスのエネルギー利用や木材のマテリアル利用を普及していくことは、森林吸収源対策の推進にも寄与することから、地球温暖化対策のための税について、その本格的な普及に向けたモデル事業や技術開発、調査への活用の充実を図る」ことや、森林所有者の特定困難や境界の不明、担い手の不足といった課題を解決しながら森林整備等を進めるため、市町村の役割を明確にしつつ、施策の具体化を進めることとして、「このような施策を講じることにより市町村が主体となって実施する森林整備等に必要な財源に充てるため、個人住民税均等割の枠組みの活用を含め都市・地方を通じて国民に等しく負担を求めることを基本とする森林環境税(仮称)の創設に向けて、地方公共団体の意見も踏まえながら、具体的な仕組み等について総合的に検討し、平成30年度税制改正において結論を得る」ことが盛り込まれた。

「パリ協定」の概要

(*150)United Nations Framework Convention on Climate Change

(*151)ここでは、「COP11」以降の「COP」は、「京都議定書締約国会合(CMP)」を含む一般的な呼称として用いる。

(*152)「Harvested Wood Products」の略。

(*153)京都議定書第2約束期間における森林関連分野の取扱いについては、「平成24年度森林及び林業の動向」78-80ページを参照。

(*154)平成25(2013)年11月に条約事務局に暫定の削減目標として3.8%を登録、地球温暖化対策計画の閣議決定を踏まえて、改めて平成28(2016)年7月に3.8%以上とする削減目標を正式に登録している。

(*155)農林水産省プレスリリース「「気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」、「京都議定書第11回締約国会合(CMP11)」等の結果について」(平成27(2015)年12月15日付け)

(*156)「Paris Agreement」の日本語訳。

(*157)「平成27年度森林及び林業の動向」の5ページも参照。

(*158)自国が決定する貢献案。平成27(2015)年7月に地球温暖化対策推進本部で平成42(2030)年度に平成25(2013)年度比で26.0%減とすることを決定。

(*159)二酸化炭素換算の吸収量(CO2トン)については、環境省プレスリリース「2015年度(平成27年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について」(平成29(2017)年4月13日付け)による。CO2トンは、炭素換算の吸収量(炭素トン)に44/12を乗じて換算したもの。



(開発途上国の森林減少及び劣化に由来する排出の削減等(REDD+)への対応)

開発途上国の森林減少及び劣化に由来する温室効果ガスの排出量は、世界の総排出量の約1割を占めるとされており(*160)、その削減は地球温暖化対策を進める上で重要な課題となっている。「REDD+(レッドプラス)(*161)」とは、開発途上国の森林減少及び劣化に由来する温室効果ガスの排出の削減に向けた取組である「REDD(レッド)」に、森林保全、持続可能な森林経営等の取組を加えたものである。2007年のCOP13で提唱された後、2010年のCOP16の「カンクン合意」では、REDD+の5つの基本的な活動(森林減少からの排出の削減、森林劣化からの排出の削減、森林炭素蓄積の保全、持続可能な森林経営及び森林炭素蓄積の強化)が定義され、2013年のCOP19では、COP16からの課題であったREDD+の実施に必要な技術的課題等について検討し、REDD+の実施のための技術指針を含む一連の決定文書(通称:REDD+のためのワルシャワ枠組)が採択された(*162)。また、2015年にパリで開催されたCOP21で採択された「パリ協定」には、REDD+の実施や支援を奨励する条項が盛り込まれた。

我が国はREDD+について、森林減少・劣化を効率的に把握する技術の開発、人材育成、森林資源を活用する事業モデルの開発や普及等により開発途上国の取組を支援している。

また、民間企業による開発途上国での活動を促進するため、平成26(2014)年度から関係省庁が連携して、二国間オフセット・クレジット制度(*163)(JCM(*164))でREDD+を実施するための規則やガイドライン類の検討を開始しており、平成28(2016)年度はラオス及びインドネシアとREDD+の実施に向けた協議を行った。

さらに、国立研究開発法人森林総合研究所REDD研究開発センターでは、民間企業支援のため、REDD+の実施に必要とされる技術の開発や作成した技術解説書による情報提供等に取り組んでいる。

平成26(2014)年、独立行政法人国際協力機構(JICA)と国立研究開発法人森林総合研究所は、REDD+を含む開発途上国での森林保全活動を推進していくため、関係省庁、民間企業、NGO等が連携を強化し、情報を発信・共有する場として、「森から世界を変えるREDD+プラットフォーム」を立ち上げた。平成28(2016)年12月現在、84団体が加盟している。

国際機関を通じた協力としては、我が国は、2007年に世界銀行が設立した「森林炭素パートナーシップ基金(FCPF(*165))」の「準備基金(*166)」に対して、これまでに14百万ドルを拠出している。また、森林減少を抑制するための拡大資金を提供する世界銀行のプログラム(FIP(*167))に60百万ドル、開発途上国のREDD+戦略の準備や実施を支援するためにFAO、UNDP(*168)、UNEP(*169)が設立したプログラムであるUN-REDDに3百万ドルを拠出している。また、平成27(2015)年には、REDD+の成果に応じた開発途上国への資金の支払に活用されることが決定している緑の気候基金に15億ドルを拠出している。


(*160)IPCC(2014)IPCC Fifth Assessment Report: Climate Change 2014: Synthesis Report: 88.

(*161)「Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries; and the role of conservation, sustainable management of forests and enhancement of forest carbon stocks in developing countries」の略。

(*162)農林水産省プレスリリース「「気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)」、「京都議定書第9回締約国会合(CMP9)」等の結果について」(平成25(2013)年11月26日付け)

(*163)開発途上国への温室効果ガス削減技術、製品、システム、サービス、インフラ等の普及や対策を通じ、実現した温室効果ガス排出削減・吸収への日本の貢献を定量的に評価するとともに、日本の削減目標の達成に活用するもの。

(*164)「Joint Crediting Mechanism」の略。

(*165)「Forest Carbon Partnership Facility」の略。

(*166)開発途上国に対して、森林減少の抑制やモニタリング等のための能力の向上(技術開発や人材育成)を支援するための基金。

(*167)「Forest Investment Program」の略。

(*168)「United Nations Development Programme(国連開発計画)」の略。

(*169)「United Nations Environment Programme(国連環境計画)」の略。



(気候変動への適応)

農林水産省は、平成27(2015)年8月に「農林水産省気候変動適応計画」を策定し、同11月には、政府全体の「気候変動の影響への適応計画」が策定された。

これらの計画では、将来、気候変動による大雨の発生頻度の増加や台風の最大強度の増加等が予測されている。これらに対応するため、森林・林業分野においては、山地災害が発生する危険性の高い地区のより的確な把握を行い、土砂流出防備保安林等の計画的な配備を進めるとともに、土石流等の発生を想定した治山施設の整備や健全な森林の整備等を実施することとしているほか、集中豪雨の発生頻度の増加を考慮した林道施設の整備を推進していくこととしている。また、気候変動による影響についての知見が十分ではないことから、人工林における造林樹種の成長等に与える影響や天然林における分布適域の変化等の継続的なモニタリングや影響評価、高温・乾燥ストレス等の気候変動の影響に適応した品種開発等の調査・研究を推進していくとともに、被害先端地域における松くい虫被害の拡大防止や国有林野における「保護林」や「緑の回廊」の保護・管理等についても積極的に取り組んでいくこととしている(*170)。


(*170)松くい虫被害の拡大防止対策については、69-70ページを参照。


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