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第1部 第 I 章 第2節 林業の新たな技術の導入(3)

(3)木材需要の拡大に向けた技術

我が国は今後、急速な高齢化と人口減少が進むと推計されており、既存の用途における木材需要の大幅な増加を見込むことが困難な情勢にある。このため、これまで国産材があまり使われてこなかった分野において、新たな木材需要を創出していく取組が必要となってきている。以下では、「非住宅分野における木材利用技術」、「国産材の利用が低位な部材の利用拡大に向けた技術」、「木質バイオマスの利用に向けた技術」に分けて、木材需要の拡大に向けた技術の開発と導入の現状について記述する。


(ア)非住宅分野における木材利用技術

(中高層建築物等への木材の利用)

我が国では、新設住宅着工戸数の約半分が木造となっている一方で、商業施設をはじめとする中高層建築物や低層の非住宅分野においては、これまで木材があまり使われてこなかった。

このような中、これらの分野を対象とした新たな木材製品の開発と実用化が進められている。


(CLTの利用と普及に向けた動き)

一定の寸法に加工されたひき板(ラミナ)を繊維方向が直交するように積層接着した「CLT(*39)」(直交集成板)が、近年、新たな木材製品として注目されている。欧米を中心にCLTを様々な建築物の壁や床等の建物の構造部分にも活用して、木造の共同住宅、オフィスビル等の建築が進められている。我が国においても、CLTの活用を契機として、木造の中高層建築物等の建設が進むなど、新たな木材需要を創出することが期待されている。

平成26(2014)年11月には、CLTの普及に関する施策を計画的かつ総合的に進めるため、「CLTの普及に向けたロードマップ(*40)」が林野庁と国土交通省の共同で公表された。このロードマップでは、平成28(2016)年度の早期を目途に基準強度や一般的な設計法の告示を整備することや、実証的建築を積み重ねて施工ノウハウの蓄積に取り組むこと、平成36(2024)年度までに年間50万m3程度の生産体制を構築することなどを目指す成果として掲げた。

平成28(2016)年3月31日及び4月1日には、それまでの林野庁及び国土交通省の事業による実験等を通じてCLTの構造や防火に関する技術的知見が得られたことから、CLTを用いた建築物の一般的な設計法等に関する告示(*41)が公布・施行された。これにより、告示に基づく構造計算を行うことで、国土交通大臣の認定を個別に受けることなくCLTを用いた建築が可能となった。また、この告示に基づく仕様とすることによって、準耐火建築物(*42)として建築することが可能な建築物については、燃えしろ設計により防火被覆を施すことなくCLTを用いることが可能となった。実証的建築については、林野庁支援により、平成27(2015)年度に9棟、平成28(2016)年度に22棟が竣工するとともに、平成28(2016)年度には、岡山県や宮城県、石川県、鳥取県、宮崎県、鹿児島県において、JAS認定を取得したCLT工場が稼働している。特に、岡山県では、平成28(2016)年度には、国内初となる量産工場が稼働を開始するなど、生産体制の構築に向けた取組も進みつつある。

このような中、今後はまとまった需要を確保してコストを縮減し、広く民間建築物におけるCLTの需要を創出することが重要な課題となっている。平成29(2017)年1月に「CLTの活用促進に関する関係省庁連絡会議」が作成・公表した「CLTの普及に向けた新たなロードマップ~需要の一層の拡大を目指して~」では、CLT需要の一層の拡大に向けて、関係省庁が連携・協力して取組を推進することとしている(資料 I -12)。

CLTの普及に向けた新たなロードマップ~需要の一層の拡大を目指して~

(*39)「Cross Laminated Timber」の略。

(*40)農林水産省プレスリリース「CLTの普及に向けたロードマップについて」(平成26(2014)年11月11日)(https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/mokusan/141111.html)

(*41)平成28年国土交通省告示第561号、平成28年国土交通省告示第562号、平成28年国土交通省告示第563号、平成28年国土交通省告示第564号及び平成28年国土交通省告示第611号

(*42)火災による延焼を抑制するために主要構造部を準耐火構造とするなどの措置を施した建築物(「建築基準法」(昭和25年法律第201号)第2条第7号の2及び第9号の3)



(木質耐火部材の開発)

関係法令に基づき所要の性能を満たす木質耐火部材を用いれば、木造でも大規模な建築物等を建築することが可能である。木質耐火部材には、木材を石膏(こう)ボードで被覆したものや木材を難燃処理木材等で被覆したもの、鉄骨を木材で被覆したものがある(資料 I -13)。

これらのうち所要の耐火性能を満たすものは、関係法令に基づき1時間の耐火性能を有する部材として国土交通大臣の認定を受けた場合、建築物の柱や梁(はり)等に使うことで、最上階から数えて4階建てまでを木造とすることが可能となる。さらに、平成26(2014)年11月には、2時間の耐火性能を有する耐火集成材が開発され、耐火性能の観点からは最上階から数えて14階建てまで木造とすることが可能となっている。各地では、これらの木質耐火部材を使用した建築物の建設が進められている。

木質耐火構造の方式

(イ)国産材の利用が低位な部材の利用拡大に向けた技術

(合板原料として国産材を利用するための技術)

合板(*43)製造業は、かつて東南アジアからの南洋材がその原料の中心であったが、南洋材丸太の輸入減少に伴って、ロシアからの北洋材丸太の輸入が増加した。このように合板製造業は、その原料を輸入に依存してきたが、その後、ロシアが針葉樹丸太の輸出税を引き上げたこと、国内の人工林資源が充実してきたこと、原木から単板を製造するスピンドルレス式ロータリーレースの開発(*44)により間伐材等の小径材や曲がり材を利用することが可能となったこと、同技術の開発を踏まえて、「新流通・加工システム(*45)」の取組を実施したこと等により、構造用合板(*46)への国産材の利用が平成14(2002)年頃から急速に拡大することとなった。一方、型枠(かたわく)(*47)用合板については、より高い強度性能や耐水性能が求められることから、現在においても、東南アジアから輸入される南洋材型枠(かたわく)用合板がその大半を占めている。型枠(かたわく)用合板の原料としての国産材の利用促進に向け、現在では、単板の構成を工夫するなど、国産材を使用した型枠(かたわく)用合板の性能を向上させる技術の導入が進展している。表面塗装を施した国産材を使用した型枠(かたわく)用合板については、現場での性能の試験が実施されており、南洋材型枠(かたわく)用合板と比較しても遜色のない性能を有していることが実証されている(事例 I -7)。

事例 I -7 地域材を原料とする型枠(かたわく)用合板の強度の実証

湿潤時における型枠用合板の曲げ強度試験
湿潤時における型枠用合板の
曲げ強度試験
12回転用した国産材型枠とこれを活用した間仕切り壁
12回転用した国産材型枠と
これを活用した間仕切り壁

日本合板工業組合連合会は、林野庁の支援を受け、治山堰堤(えんてい)設置等の土木工事やマンション等の建設工事にカラマツやヒノキ等の地域材を使用した型枠(かたわく)用合板を用いて、その性能の実証に取り組んだ。

この結果、地域材を使用した型枠(かたわく)用合板は、従来の南洋材型枠(かたわく)用合板と比較しても、強度、耐久性、耐アルカリ性能、接着性能等について遜色のない品質や性能を有していることが実証された。

また、14階建てマンションの建設工事において、地域材を使用した型枠(かたわく)用合板を最上階まで転用(繰り返し使用すること)しながら打設試験を行ったところ、転用回数が増加しても、コンクリート壁面の「たわみ」や「はらみ」がおおむね1mmの範囲に収まるなど、十分な打設精度が得られた。このことから、転用回数の多いマンション等の建設工事においても、地域材を使用した型枠(かたわく)用合板は、南洋材型枠(かたわく)用合板と比較しても遜色のない性能を有することが実証された。

資料:日本合板工業組合連合会「地域材を使用したコンクリート型枠用合板の開発・普及について 事業成果普及版」(平成28(2016)年6月)


(*43)木材を薄く剥いて製造した単板を3枚以上、繊維方向が直交するよう交互に接着した木材製品。

(*44)ロータリーレースとは、丸太を回転させながら桂剥きのように切削して、単板を製造する機械。かつては、原木の両端をモーターに連動したスピンドル(回転軸)で押さえて単板を製造していたが、平成5(1993)年に、原木を横と下から支えるロールを配置することで、原木からスピンドルを外しても単板の製造が可能なスピンドルレス式ロータリーレースが開発され、曲がり材や小径材から単板を製造することが可能となった。詳細については、「平成26年度森林及び林業の動向」36ページを参照。

(*45)平成16(2004)年度から平成18(2006)年度にかけて、曲がり材や間伐材等を使用して集成材や合板を低コストかつ大ロットで安定的に供給するために林野庁が実施した取組。国産材の利用が低位であった集成材や合板等の分野で、地域における生産組織や協議会の結成、参加事業体における林業生産用機械の導入、合板・集成材等の製造施設の整備等を推進するものであり、全国10か所でモデル的な取組を実施した。その結果、曲がり材や間伐材等の利用量は、平成16(2004)年の約45万m3から、平成18(2006)年には121万m3まで増加した。これを契機に、合板工場における国産材利用の取組が全国的に波及したため、これまでチップ材等に用途が限られていた低質な原木が、合板用材として相応の価格で利用されるようになった。

(*46)合板のうち、建築物等の構造として利用されるもの。

(*47)コンクリート等の液状の材料を固化させる際に、所定の形状になるように誘導する部材。



(建築資材として国産材を利用するための技術)

木造軸組構法による住宅建築において、構造用合板や柱材と比較して、梁(はり)や桁等の横架材は、一部の地域材利用に積極的な工務店を除き、国産材の使用割合は低位にとどまっている。横架材には高い強度や多様な寸法への対応が求められるため、ベイマツ製材やレッドウッド(欧州アカマツ)集成材等の輸入材が高い競争力を持つ状況となっている。この分野での国産材利用を促進する観点から、各地で、乾燥技術の向上や心去(しんさ)り(*48)等による品質向上や、柱角等の製材を用いた重ね梁(ばり)の開発等が進められている。

また、木造軸組構法の部材以外にも、国産材割合の低いツーバイフォー工法用部材、フロア台板用合板、木製サッシ等の部材等に国産材を利用する技術の開発・普及が進められている。

木造率の低い中大規模建築の分野では、一般流通材を用いたトラス梁(ばり)(*49)や縦ログ工法(*50)等の開発・普及が進められている。


(*48)丸太の中心部である心材を除く技術。乾燥しても割れが生じにくい長所がある。

(*49)三角形状の部材を組み合わせて、外力に対する抵抗を強化した骨組み構造の梁。

(*50)製材を縦に並べることによって壁を構成する工法。



(ウ)木質バイオマスの利用に向けた技術

(木質バイオマスの利用の現状)

平成28(2016)年9月に閣議決定された「バイオマス活用推進基本計画」においては、バイオマスは持続的に再生可能な資源であり、バイオマスをエネルギーや製品として活用していくことは、農山漁村の活性化や地球温暖化の防止、循環型社会の形成といった課題の解決に寄与するものとされている。

木質バイオマスは、従来から、製紙、パーティクルボード(*51)等の木質系材料やエネルギー用として利用されている。


(*51)パーティクルボードについては、第 IV 章(154ページ)を参照。



(木質バイオマスのエネルギー利用に向けた技術の開発)

平成24(2012)年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度が開始されたことにより、木質バイオマス発電施設の稼働が本格化するなど、木質バイオマスのエネルギー利用量は増加している。このような中、ガス化炉による小規模で高効率の発電システム、竹の燃料としての利用、熱効率の高い固形燃料の製造技術や利用技術等、木質バイオマスのエネルギー利用に向けた技術開発が行われている(*52)。


(*52)一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会ホームページ(https://www.jwba.or.jp/)



(木質バイオマスのマテリアル利用に向けた技術の開発)

バイオマス活用推進基本計画においては、化石資源由来の既存製品等からバイオマス由来の製品等への代替を進めるため、バイオマスを汎用性のある有用な化学物質に分解・変換する技術や用途に応じてこれらの物質から高分子化合物を再合成する技術、これらの物質を原料とした具体的な製品の開発が重要とされている。

このような新たな技術の開発により、木質バイオマスのマテリアル(素材)利用が促進されるようになれば、林地残材等の未利用木材の高付加価値化につながることが期待される。

平成28(2016)年に閣議決定された「日本再興戦略2016」では、セルロースナノファイバー(CNF(*53))の製品化に向けた研究開発やリグニンを用いた付加価値の高い製品の研究開発を進めることが掲げられた。

木材の組成のうち約40%から約50%を占める主要成分であるセルロースをナノ(10億分の1m)レベルまでほぐすと、軽量かつ高強度で膨張・収縮しにくいなどの特性をもつ素材であるCNFになる。このCNFについては、透明フィルムやプラスチックの補強材料、高機能フィルター等への利用が期待されている。林野庁では、スギや竹を原料とし、中山間地域に適応した小規模・低環境負荷型でCNFを製造する技術や、生産されたCNFを用いた新素材開発を支援している。農林水産省においても、CNF等の農林水産・食品産業の現場での活用に向けた研究開発を推進している。また、CNFの製品化に向けては、これを製品の素材として利用する産業分野において、高機能化・用途開発等の取組が進展している。CNFの実用化・利用拡大に向け、関係する農林水産省、林野庁、経済産業省、環境省、文部科学省が連携しつつ、施策を進めている。

リグニンは、木材の組成のうち約20%から約35%を占める主要成分の一つであり、これまでも木材パルプを製造する際に抽出されていた成分であったが、その化学構造があまりにも多様であることから工業材料として利用するには不向きであるとみなされ、「未開の原料」とも呼ばれていた。

現在、国立研究開発法人森林総合研究所等において、化学構造がある程度一定な改質リグニンの製造技術の開発や、この改質リグニンを用いたコンクリート混和剤の開発、粘土材料との組み合わせによって高い耐熱性やガス遮断性を有するハイブリッド膜の開発等の取組が進展している(事例 I -8)。

事例 I -8 スギリグニンを工業材料として利用するための技術開発の取組

国立研究開発法人森林総合研究所は、スギの木材に含まれるリグニンとポリエチレングリコール(PGE)との組み合わせにより、化学構造がある程度一定な「改質リグニン」の製造技術を開発した。また、この「改質リグニン」を使い、リグニン系コンクリート用化学混和剤や、ナノクレイ(注)等の粘土材料を組み合わせた高い耐熱性を有するハイブリッド膜等の開発を行っている。

さらに、「改質リグニン」の製造についても安全性を十分に確保できる方法を開発した。製造に必要な全ての熱源は、木質ボイラーからの蒸気だけで供給できるよう設計されているため、山村地域等の製材工場に「改質リグニン」の製造施設を併設することが可能となる。

このような技術開発により、山村地域の木質資源を原料として、既存の石油化学製品と同等以上の性能を有する、より安価な代替品を製造できる可能性が広がっている。その市場規模は1,000億円を超えると見込まれており、リグニン製造業という新産業を国内の山村地域に創出することで、経済の活性化や新規雇用の創出等「地方創生」に大きく貢献することが期待される。

注:モンモリロナイト等の層状の鉱物ケイ酸ナノ粒子の総称。

資料:国立研究開発法人森林総合研究所

         

(*53)「Cellulose Nano Fiber」の略称。以下では、単にCNFと表記する。


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