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林野庁

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第1部 第 I 章 第2節 林業の新たな技術の導入(2)

(2)情報通信技術(ICT)の活用

近年の情報通信技術(ICT)の技術革新に伴い、林業においても、森林情報の把握や林業経営の効率化に情報通信技術(ICT)を活用する取組が進んでいる。以下では、「情報通信技術(ICT)の活用」として、森林情報の整備と、林業経営や木材流通への情報通信技術(ICT)の活用に分けて、その必要性や現状を記述する。


(ア)森林情報の整備

(森林情報の効率的で正確な把握が不可欠)

適切な森林整備を推進し、林業の成長産業化を図っていくためには、施業の集約化や路網整備を進めていく必要がある。そして、これらを進めていくための前提条件として、地域の森林における森林蓄積量、地形情報、境界情報、所有者情報等の森林情報を効率的に把握していくことが重要である。

森林情報の整備に向け、これまで森林GIS(*33)(地理情報システム)の導入が進められてきた。森林GISは、個別に管理されていた森林基本図や森林計画図、森林簿といった森林の基本情報をデジタル処理して一元管理するシステムであり、平成21(2009)年度までに全ての都道府県における導入が完了し、平成28(2016)年度までに約半数の市町村においても導入されている。現在では、森林の区域確認に空中写真と森林GISのデータを利用することで、業務の効率化を図っているような取組も実施されている。


(*33)「Geographic Information System」の略。



(森林クラウドの開発と実証)

森林GISに登載されている情報については、その内容を継続的に更新し、精度を向上させていくことが必要である。また、施業の集約化等を進めていくためには、異なる組織に所属する関係者同士が森林情報を共有できるような仕組みを構築することが必要である。これらを踏まえ、現在、クラウド技術(*34)によって地方公共団体及び林業事業体を情報通信回線でつなぎ、森林情報を相互に共有及び利活用する仕組みである森林クラウドが開発されている(資料 I -11)。森林クラウドの導入により、情報システムの運用に要する経費の縮減、森林資源等のデータの精度向上が見込まれ、さらに、施業集約化や原木の安定供給に取り組む林業事業体への円滑な情報提供が期待される。

その一方で、森林クラウドは、広範な関係者が利用することから、登載する森林情報を標準化することや個人情報の取扱いに留意することが不可欠である。このため、林野庁では、森林情報高度利活用技術開発事業により、データの項目・形式の標準仕様を作成するとともに、その仕様に準拠した森林クラウドを実際に構築し、地方公共団体や林業事業体と情報共有を実証することで、活用方法の検討や情報セキュリティの確保等に取り組んでいる。また、同事業では、従来の森林簿や森林計画図等のこれまで森林GISに登載されていたデータに加え、航空レーザ計測による詳細な森林資源量のデータや空中写真、衛星画像、路網計画等を登載することにより、施業の集約化のより円滑な推進に取り組んでいる。

森林クラウドのイメージ(森林情報高度利活用技術開発事業の概要)

(*34)従来のように個々のパソコン等にデータやシステムを格納するのではなく、これらを一か所に集約・管理し、利用者がインターネット等を経由してデータやシステムを活用できるようにする技術のこと。



(森林資源量の計測技術も進展)

立木材積等の森林資源量の情報は、森林整備や木材の供給を計画的に実施していく上での基礎となるものである。しかしながら、その把握のために調査者が実際に森林内で立木の胸高直径や樹高、立木本数を毎木調査又は標本調査等により計測してきたところであり、多大な労力を要してきた。林業の成長産業化を図っていくためには、森林資源の計測に要する労力や経費の縮減が大きな課題となっている。

このような中で、近年では、地上レーザにより立木調査を省力化する技術や航空レーザによる計測技術が導入されてきている。

前者は、林内の地上から照射したレーザの反射を解析することにより、立木の樹高や胸高直径を正確に算出することができる技術であり、これらに加えて、立木の曲がりも把握することが可能となる(*35)。この技術により、熟練技術を有さなくても正確な情報の取得が可能になるとともに、調査に要する時間の短縮も図られてきている。

また、後者の航空レーザ計測では、急峻な地形等により調査者の立入りが困難な箇所における調査や広範囲の調査が可能であり、詳細な地形の把握も可能である。

近年では、小面積の森林を機動的かつ詳細に計測するために、無人航空機(UAV(*36))を導入する動きもみられる。

さらに、このようなレーザ計測によって得られた森林情報を活用し、路網整備や間伐等の森林整備の計画を策定したり、立木の販売を円滑化したりすることのできるシステムの開発につなげる取組も進められている(事例 I -4)。このほか、平成28年熊本地震により発生した林地の亀裂や崩壊の箇所を把握するためにも、航空レーザ計測を活用した(事例 I -5)。

事例 I -4 「3D森林情報システム」の開発と木材トレーサビリティへの活用

株式会社woodinfo(ウッドインフォ)(東京都練馬区)は、地上からのレーザ照射技術や、これによって得られたデータを解析して林内の地形や立木の位置、胸高直径、樹高、樹幹の曲がり具合等の情報を三次元化する「3D森林情報システム」を開発した。このシステムにより、熟練技術がなくとも、少人数によって低コストで森林資源の現況を把握することが可能となった。

林業の現場では、「3D森林情報システム」を林業経営に活用する動きもみられる。

埼玉県秩父(ちちぶ)地方では、このシステムを活用して木材のトレーサビリティ(注)を構築する取組が進展している。住宅メーカーが建築資材として必要となった木材の情報を入力する一方で、林業事業体が3D化された森林情報を参照して、必要な木材を速やかに生産できるようにするシステムとなっている。住宅メーカーにとっては、効率的な木材の確保が可能になるとともに、素材生産業者も、不要な在庫を持つ必要がなくなり、林業経営の効率化が図られている。

また、木質バイオマス発電事業を営む朝来(あさご)バイオマス発電所(兵庫県朝来市)は、このシステムを活用した木材輸送システムを開発、導入している。兵庫県森林組合連合会等と連携し、山土場に椪積(はいづみ)されている木材の数量や位置、出荷希望時期、交通情報等を入力してこれを公開している。同社は、これらの情報を参照して、木材を発電所まで配送するグラップル付きトラックの配車を効率化することができるとともに、発電用の木材のトレーサビリティを確保できることとなった。

注:木材を含む物品について、生産から加工、製造、流通までの過程を明確にすることや、そういった仕組みのこと。再生可能エネルギーの固定価格買取制度を活用して木質バイオマス発電をしようとする場合、最も単価の高い「未利用木材」の発電単価で電力を販売するためは、木材のトレーサビリティが必要となる。

資料:木材建材ウイクリーNo. 2072(平成28(2016)年7月18日)

秩父地方でのトレーサビリティのイメージ
秩父地方でのトレーサビリティのイメージ
          木質バイオマスのトレーサビリティのイメージ
木質バイオマスのトレーサビリティのイメージ

事例 I -5 平成28年熊本地震における山地災害調査での航空レーザ計測の活用

林野庁による航空レーザ計測の公表結果の一例。紫線が亀裂、赤色が崩壊の箇所を示す。
林野庁による航空レーザ計測の公表結果の一例。
紫線が亀裂、赤色が崩壊の箇所を示す。

平成28(2016)年4月、熊本県を中心とした広範囲で地震が連続して発生し、複数の箇所で山腹崩壊等の被害が発生した。林野庁は、これらの崩壊箇所の現地調査を行うとともに、被災状況を迅速に把握するため、航空レーザ計測を活用し、詳細な地形変化の把握及び解析を実施した。その結果として把握された林地の亀裂や崩壊の箇所については、関係する地方公共団体等に情報提供するとともに、林野庁のホームページにおいても公表している。

このような遠隔から対象の測定や観察等を行う技術はリモートセンシングと呼ばれており、近年では、山地災害に際してこのような技術を活用した災害調査が行われるようになりつつある。立入りが困難なため現地調査がままならない地域や、二次災害が起こる危険性の高い地域等も短時間で調査することが可能であるため、今後、技術の発展とともに、幅広い利用手法が確立されることが期待されている。


(*35)林政ニュース第453号(平成25(2013)年1月30日)

(*36)「Unmanned Aerial Vehicle」の略。一般にはドローンとも呼ばれる。



(イ)林業経営や木材流通への情報通信技術(ICT)の活用

(林業経営への情報通信技術(ICT)の活用が進展)

林業を効率的に経営していく上で、出材することが可能な木材の数量やその品質を即時に把握したり、木材需要の変動に応じて木材の出荷量を調整したりするなどの生産管理手法の導入が必要となっている。

近年は、情報通信技術(ICT)を活用した革新的な生産管理手法の導入が進められているところであり、デジタルカメラ画像を用いて林内の土場に椪積(はいづみ)された製材用材や合板用材を自動解析する取組や、出材する木材の数量や出荷量等について、情報通信技術(ICT)を用いて瞬時に把握する取組が進展している。


(木材流通への情報通信技術(ICT)の活用も)

木材の流通には、森林所有者から素材生産業者、木材市売市場等の木材流通業者、製材工場、合板工場、建築事業者、木質バイオマス発電事業者に至るまで広範な事業者が関わる。この結果、木材の需給に関する情報を共有することが困難となりがちであり、原木が適時適切に供給できないことにつながっている。林業の成長産業化のためには、需給情報を共有し、木材需給のマッチングの円滑化を推進することが課題となっている。このことを踏まえ、近年では、木材流通において情報通信技術(ICT)を活用しつつ、森林情報や出材が可能な原木の数量に関する情報を統合させて、効率的な木材流通を実現しようとする動きもみられる(事例 I -4)。


(ソフトウェア開発の分野からも林業に関心)

これまで森林や林業との関わりが少なかったソフトウェア(*37)開発の分野においても、森林資源の充実や今後の林業の成長産業化への期待も背景に、林業への関心が高まりつつある。近年においては、プログラマーやデザイナーがチームを組み、特定のテーマに対してアイデアを出し合いながら集中的にアプリケーション(*38)やサービスを形成していき、その内容を競うイベントであるハッカソンについて、近年、林業の技術開発をテーマとして開催される機会もみられる(事例 I -6)。これまでに林業の技術開発をテーマとしたハッカソンにおいて開発されたアプリケーション等については、意欲があれば誰でも使用することができるとされている。林業の技術開発をテーマとしたハッカソンの開催が、今後、新たな技術革新に貢献していくことが期待される。

事例 I -6 林業をテーマとしたハッカソンの開催

林業をテーマとしたハッカソン参加者による林業現場の見学
林業をテーマとしたハッカソン
参加者による林業現場の見学
林業をテーマとしたハッカソン参加者による開発作業の様子
林業をテーマとしたハッカソン
参加者による開発作業の様子

平成28(2016)年3月に、熊本県人吉市(ひとよしし)において、「テクノロジーを活用して林業で働く人を応援すること」をテーマとしたハッカソンが開催され、2日間の開催期間中に42名が参加した。最優秀賞には、人感センサー、温度計、湿度計、振動計、照度計等のセンサーとカメラを樹木に取り付け、得た情報をリアルタイムにSNS(ソーシャルネットワークサービス)に発信するシステムが選ばれた。このシステムでは、人感センサーに反応して樹木から音声が出る仕組みとなっており、鳥獣被害防除にも資することが期待されている。

また、同9月には、北海道札幌市において、昨年度に引き続き林業をテーマとするハッカソンが開催され、2日間で25名が参加した。参加者は、近隣の国有林において林業機械の操作等の現地見学を実施した後、アプリケーションの開発に取り組んだ。優秀賞には、伐採区域等の図面をスマートフォンに表示させ、その区域から出た場合にブザーを鳴らすアプリケーションが選ばれた。

資料:森林技術 No. 892(平成28(2016)年7月)

         現代林業 平成28(2016)年8月


(*37)コンピューターを動作させるための命令や処理等のプログラム及びこれらのための文書化された情報のこと。

(*38)アプリケーションプログラムの略称で、コンピューターの使用者の業務に応じて作成したプログラムのこと。


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