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林野庁

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ヤベホーム株式会社/対馬市(長崎県) 受賞者レポート

森林×ACTチャレンジ2024
J-クレジット部門

優秀賞

王冠 ヤベホーム株式会社/対馬市(長崎県)
王冠
カーボン・オフセットがつなぐ豊かな暮らしと森林づくり
   森とともに暮らすために

   ヤベホーム株式会社は、長崎県諫早市に所在する工務店で、「森の中にいるような健康で長生きできる家づくりで社会へ貢献する」を企業理念に掲げています。2013年度から建築住宅における県産材の活用に加え、県内森林由来のクレジット活用に取り組んでいます。また、同社の温室効果ガス削減目標がパリ協定に整合した科学的根拠がある水準として認められ、2024年4月に中小企業向けSBT(Science Based Targets)認証を取得しました。
   長崎県対馬市は、島の約9割が森林で、貴重な固有種を含む生き物の生息の場となっています。森林整備を行った市営林について、「国境の島対馬市の市有林における大陸とのつながりを示す多様な生態系の保全のための森林吸収(間伐促進)プロジェクト」を立ち上げ、2013年度から環境活動等に取り組む企業や団体等を対象にJ-クレジット販売を開始しました。

クレジットを創出した対馬市の森林
クレジットを創出した対馬市の森林

   カーボン・オフセットが支える “島の生態系”

   同社では、2013年度から継続的に、社内の節電・オンライン打合せ・社員同士の乗り合わせによる車両利用の縮減等のCO2排出削減努力の徹底を行うとともに、購入したクレジットは住宅建築に係る仮設電気使用や移動に伴う社用車利用、モデルハウスの電気使用等で発生する、努力による削減が難しいCO2排出量をオフセットしています。
   同市では、クレジット販売の収入を「対馬市森林づくり基本計画」や「対馬市森林施業ガイドライン」に基づく、公共建築物等への木材利用や木質バイオマス燃料としての利用促進等の森林資源の活用や、主伐後の適正な再造林の実施、島の多様な生態系に配慮した森林空間づくり等の森林環境の保全へ活用していくこととしています。例えば、対馬ではニホンジカの食害の増加により希少種であるツシマヤマネコ等の生息環境に悪影響が生じているため、上記ガイドラインを遵守する林業事業者による防鹿ネット設置に対する助成を行う等、ツシマヤマネコと共生できる森林環境づくりを進めています。

ヤベホームスキーム図
クレジットの活用に関するスキーム図

ツシマヤマネコ
対馬の固有種   ツシマヤマネコ

       みんなで守る長崎の森

       同社は、クレジット購入をきっかけに、カーボン・オフセットの取組を県内に推進していくことが重要と考え、「ながさきカーボン・オフセット推進協議会」を中心となって設立しました。
       同協議会は、同市も含むクレジット創出者及び購入者から構成されており、会員間で想いを一つにクレジットを取引するだけでなく、お互いがクレジット活用のメリットをPRすることで、会員が創出したクレジットについて、これまで会員外である48団体以上の購入へと繋げています。さらに、普及活動として、企業を対象としたカーボン・オフセットに関するフォーラム等の開催や、長崎大学と連携し学生へカーボン・オフセットの重要性を伝える取組も実施しており、カーボン・オフセットの取組の輪を広げています。
       また、同社は、企業の森として「ヤベホームの森」を会員の社有林に設定し、施主やその家族等を対象に、森林学習や、植樹や間伐体験を行う森林ツアーを毎年開催しており、家を建てることが森林を守ることに繋がることや森林を育てていくことの大切さを伝えています。

    ヤベホームの森における森林ツアー
    ヤベホームの森における森林ツアー

       審査員の講評

       J-クレジットを通じて対馬市の森林資源の活用と対馬固有の希少種が生息する森林生態系の保全に貢献されています。木材を利用する工務店と森林を管理する市という川上川下の連携がうまく機能した事例として高く評価しました。

    龍原   哲(東京大学大学院農学生命科学研究科   准教授)

    お問合せ先

    森林整備部森林利用課

    ダイヤルイン:03-6744-2409