野村不動産ホールディングス株式会社 受賞者レポート
森林×ACTチャレンジ2024
森林づくり部門
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野村不動産ホールディングス株式会社 | ![]() |
自然と都市が共生するモデルケースを目指して |
野村不動産ホールディングス株式会社(野村不動産グループ)では2050年のありたい姿としてサステナビリティポリシー「Earth Pride-地球を、つなぐ-」を掲げ、その実現に向けた2030年までに取り組むべき重点課題として「脱炭素」、「生物多様性」等を定め取組を進めています。この一環として、同社は、主要事業エリアである東京において、都市部に近く面積の94%を占める森林を有しながら、過疎化や林業の衰退といった深刻な課題を抱える奥多摩町と2021年に包括連携協定を締結しました。そして、翌年、同町が保有する森林に30年間の地上権設定を受け(名称:つなぐ森)、多面的機能を発揮させる森林づくりを通して、自然と都市が共生するモデルケースとなることを目指す「森を、つなぐ」東京プロジェクトが始動しました。
「つなぐ森」からサプライチェーンの構築 |
つなぐ森では、森林経営を目的に設立したつなぐ森合同会社が地域の森林組合と連携し、伐採、植栽、保育等の森林整備を行っています。また、地域の製材加工所やメーカー、建設会社等とも連携し、川上から川下までの一貫したサプライチェーンを構築しています。独自の流通経路により、材質に応じた適材適所な利用を可能としており、つなぐ森から伐採された木材は、建築等の用材として用いることに加え、一般的には木質バイオマスチップとなってしまう大きな曲がり部材や端材等においても、デザイン性・経済性を備えたオリジナル家具の材料として加工することで、製材歩留まりの向上を図り、木一本の価値を高めることを可能としています。さらに、トレーサビリティの安心感から顧客満足度が向上し、投資が促される等、更なるサプライチェーンの強化も期待できます。このような取組を通して、「伐って、使って、植えて、育てる」循環する森林づくりによるCO2 吸収量の向上と木材利活用による炭素固定の促進、さらに、木材の地産地消を含む地域内経済循環による奥多摩町の林業振興と地域の発展に貢献しています。
つなぐ森における森林整備(間伐)の様子
低質材を有効活用したオリジナル家具
浜松町トライアルオフィスの床材に
つなぐ森からの木材を活用
木材生産と生物多様性の両立を図る |
つなぐ森において、2023年度に生態系調査を実施したところ、サンショウウオの一種やクマタカ等の50種の重要種を含む1,003種の生物の生息が確認されました。この結果を踏まえ独自に生態系管理計画を策定し、つなぐ森を「生態系保全」、「木材・生物共生」、「渓流保全」、「レクリエーション」の4つのエリアにゾーニングし、健全な生態系ピラミッドの維持、林業と生物多様性の共生、重要種の保全、生態系サービスの活用を4本柱とする生態系管理を進めています。例えば、アンブレラ種であるクマタカの個体数を安定させるため、営巣期の伐採の原則禁止や、毎年離れたエリアをモザイク状・小規模に皆伐・植栽することで餌場環境の創出とともに多様な生態系を有する複層林化を目指す等の施業に努めています。このように、何もしない生態系保全ではなく、木材を含む生態系サービスを積極的に活用していく森林づくりに取り組んでいます。
つなぐ森で観察されたヒガシヒダサンショウウオ
審査委員の講評 |
単なる森林保護やCSR活動ではなく、事業の一部として「伐って、使い」、サステナブルなサプライチェーンを構築することで、森林を育て地域振興や生物多様性保護に貢献する同社のような取組こそが、今求められていることではないかと思います。
榎堀 都(一般社団法人CDP Worldwide-Japanアソシエイト・ディレクター)
お問合せ先
森林整備部森林利用課
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