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林野庁

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四国苗販売株式会社 受賞者レポート

森林×ACTチャレンジ2024
森林づくり部門

優秀賞

王冠 四国苗販売株式会社 王冠
豊かな森林を次の世代にも繋げたい   地域と林業の持続的な発展を目指して
   森林の循環「伐って、使って、植えて、育てる」を実現

   四国苗販売株式会社の所在地である愛媛県久万高原町は、総面積の約9割を森林が占めており、優良かつ豊富な森林資源を核として「林業日本一のまちづくり」を目指す県内でも特に林業が盛んな地域です。しかし、近年、過疎化や森林所有者の高齢化、相続人の関心の薄さから手付かずの森林が増加する等の課題が生じています。そこで同社はそれらの森林を取得し、伐期を迎えた森林については皆伐、100%の再造林を行うことで「森林の循環」を推し進めています。「森林の循環」の実現により、地元事業体への作業委託や雇用の促進にも繋がり、林業の振興と地域社会の持続的な発展に貢献しています。

   技術を活かし林業の発展へ

   林業を次世代にも引き継ぎ、豊かな森林を守り育てていくには、強くまっすぐな苗木が必要です。同社では、専用のガラスハウスで活着率や初期成長等の点で優れているコンテナ苗の水耕栽培を行っています。オートメーションで水の管理を行い、苗木が規格サイズに育つまで、日光や風通し、病害対策等にも配慮しながら育成管理をしており、再造林の促進に資する苗木の安定供給にも貢献しています。また、樹種はスギ、ヒノキのほかクヌギを取り扱うことで、針葉樹と広葉樹がバランスよく混交した生物多様性に富んだ森林を目指した植栽にも取り組んでいます。さらに、スギ等の一般的な針葉樹と比較して早いサイクルで収穫が可能な早生樹であるコウヨウザンの試験的な植栽を通してノウハウを蓄積し、早期の本格的な生産を目指すほか、愛媛県と連携し、標準的な品種に比べ、成長量やCO2吸収量に優れ、花粉量も少ない等の優れた特性をもつスギエリートツリーの普及にも貢献しています。

ガラスハウスでのコンテナ苗の水耕栽培
ガラスハウスでのコンテナ苗の水耕栽培

   林業は傾斜地での作業となるため、作業時の負担軽減や安全性向上、経費削減等が課題です。同社では、この課題解決に向けて図面の作成に必要な測量にドローンを積極的に活用しているほか、皆伐後の再造林において苗木や資材をドローンにより効率的に運搬する技術の実用化に向けた研究にも取り組んでいます。これらの成果を地域の林業事業者と共有することで、地域全体で林業の生産性・安全性の向上に繋げており、産業としての魅力向上に寄与しています。

ドローンを用いた作業省力化の様子
ドローンを用いた作業省力化の様子

植林作業の様子
植林作業の様子

   地域資産を生かした山村振興

   同社では遊休資産である休耕ハウスを有効活用した苗木の生産も実施しており、規模は2023年度現在、1,200m2になります。新たなハウス建設が不要となりコスト低減と短期間での生産拡大が実現できる上、ハウス所有者にとっても未使用ハウスの収益化と維持管理の縮減といった双方にメリットがあります。また、同社では地域住民を積極的に採用するとともに林業の担い手不足の解消のため、育苗・植栽作業に外国人技能実習生を積極的に受け入れており、教育にも注力しています。技能実習生の住まいは、借用した近隣地域の未利用住宅であり、空き家問題解消と消費増加に伴う地域の活性化に貢献するとともに、活動状況のSNS等を通じた発信や、他の事業者に受け入れや指導方法等のノウハウを伝達することで、その取組が波及する等、国際貢献にも寄与しています。

外国人技能実習生による育苗の様子
外国人技能実習生による育苗の様子

   審査委員の講評

   雇用創出や地元企業への委託等、地域と協働を実践していることを高く評価しました。
   今後は林業事業者のみならず、SDGs11を取り入れ、他業種の企業等も仲間に入れ、「共創」を意識した「まちづくり視点」での活動拡大を期待しています。

小寺   徹(一般社団法人CSV開発機構   専務理事)

お問合せ先

森林整備部森林利用課

ダイヤルイン:03-6744-2409