サントリーホールディングス株式会社 受賞者レポート
森林×ACTチャレンジ2024
森林づくり部門
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サントリーホールディングス株式会社 | ![]() |
良質な地下水を育む森づくり |
サントリーホールディングス株式会社は良質な地下水の安全・安心とサステナビリティを守るために、国内工場の水源林エリア全国16都府県26か所(2024年8月時点)に国や自治体、地域の森林所有者の方々と「天然水の森」の協定を締結しており、その面積は12,000haを超えます。「天然水の森」では、水源涵養、生物多様性保全、土砂流出防止、CO2吸収等の森林の持つ公益的機能を高めるとともに、環境教育のフィールドとして豊かな自然と触れ合える場を目指し、様々な分野の専門家の協力も得ながら森林整備を行っています。活動を行っている背景には、同社が取り扱う天然水、ビール等の製品が地下水に大きく依存していることから自然資源の持続可能性を守るために、これらの活動を「基幹事業」の一つとして推し進めています。
森林の恵みが育む人とのつながり |
兵庫県西脇市に位置する「ひょうご西脇門柳山」は、約3割がヒノキ・スギの人工林、約7割が落葉・常緑広葉樹林等からなる里山林となっており、10年以上、森林整備を継続し、これまで約350haを間伐し、12,000m3の材を搬出しました。なお、間伐の際には等高線に沿って丸太筋工を必ず入れることで土壌の流出を防ぎ、日照条件が良くなったことで増えた下層植生により土砂災害抑制等の機能の向上に貢献しています。
森を「育む」ために伐った木材の利活用によって生み出されるモノ・コトが「天然水の森」づくりに携わる方々の継続的な活動を支えるとともに、関係者以外の方々にも波及していく仕組みを「育む」ために「天然水の森」からの間伐材を「育林材」と名付け、有効活用しています。2022年度からは西脇市と連携して、育林材を活用した本箱を製作し、市内の学校へ配布する活動を進めています。また、西脇市営日本のへそ日時計の丘公園内のレストランにおいても育林材を活用した机・椅子が設置され、多くの方々に利用いただくことで、森林の大切さや「天然水の森」の整備活動について伝えています。
天然水の森「ひょうご西脇門柳山」
育林材を活用した本箱
豊かな生態系を守る |
同社は、野鳥が「環境のバロメーター」であると捉え、野鳥が住める環境を守る活動を50年以上に渡り継続しています。「ひょうご西脇門柳山」においても10年以上、アンブレラ種であるオオタカやサシバなどの猛禽類について、採餌や営巣等の森林の利用状況を詳細に調査・記録しています。さらに、哺乳類や植物の生息状況の調査の結果、多くの種数が確認されており、豊かな生態系を育む森林が維持・管理されています。
行動調査で確認されたオオタカの飛翔(左)、サシバのひな(右)
自然にやさしい作業道づくり |
「ひょうご西脇門柳山」では、自然にやさしく、かつ効率的に森林整備が進められるよう、現地の土・石・木材を活用し、丈夫で崩れにくい森林作業道を作設しています。兵庫県主催の作業道開設研修のフィールドとしても提供するほか、作設技術を有するオペレーターが「天然水の森」以外の地域でも開設技術を共有・伝達することで、多くの作業道作設人材が育っていく機会を作ることも大切にしており、林業の発展に貢献しています。
作業道開設研修の様子
審査委員の講評 |
地元の森林組合などの組織とも連携し、水源涵養だけでなく、災害に強い森づくり、間伐材の教育施設での利用、作業道開設の技術を持った人材の育成など、多方面に貢献されています。素晴らしい取組として高く評価しました。
龍原 哲(東京大学大学院農学生命科学研究科 准教授)
お問合せ先
森林整備部森林利用課
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