サンデン株式会社 受賞者レポート
森林×ACTチャレンジ2024
森林づくり部門
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サンデン株式会社 | ![]() |
「生物多様性が向上する事業所の森」を目指して
森の中の工場 |
サンデン株式会社は2002年に「環境と産業の矛盾なき共存」をコンセプトに赤城山南麓に自然生態系が復元するように整備する近自然工法を用いて事業所「サンデンフォレスト」を開設しました。「サンデンフォレスト」は、敷地の半分が製造業のための工場等、残りが動植物の住む森林や草地、ビオトープ等である環境共存型の「森の中の工場」であり、工場用地は傾斜に対し階段状に4つの宅盤に分けられ、生物の移動の妨げにならないよう、用地間が造成森林による緑のネットワークで繋がれています。
造成時には赤城山の潜在植生を考慮して選定した広葉樹等を3万本植樹し、現在それらの木々が利用期を迎えており、毎年間伐を実施しています。間伐木は、丸太や薪として販売することで、収益を次の森林整備費用に充填するといった循環も生み出すほか、絶滅危惧種の生息地の保護柵に使用する杭としての活用や、乾燥させずに生木のまま加工するグリーンウッドワークの材料等として活用しています。
サンデンフォレスト
森林整備活動(利用間伐)の様子
間伐木を活用した
グリーンウッドワーク
生き物のための森づくり |
開設当初から20年以上、生物多様性保全や絶滅危惧種保護を最優先にした管理方法で森林を育成・維持しており、環境アセスメント調査の結果、確認された動植物は、2002年には396種であったところ、2017年には約2倍の786種となりました。現在は森林を落葉樹林、薪炭林、潜在自然植生の常緑樹林といった11ゾーンに区分して、それぞれの環境に生育している生物に合わせた森林整備を実施しています。その中でも、絶滅危惧種に指定されているキンランが自生しているエリアでは、キンランの生育に適した明るい林床を維持するための下草刈りの実施や、自然に生えてきた広葉樹の実生をマーキングし保全することで天然更新を誘導する等の配慮を行っています。
希少植物であるキンランが自生する森
森と人をつなぐ拠点 |
開設当初より、小学校の校外学習の受け入れを開始し、地域の環境教育の拠点として広く提供されており、現在では、年間約8,000名の方に利用されています。例えば、木の伐倒や枝打ち、実生保護、下草刈りなどを体験活動として組み込んだ森林環境教育プログラムを行い、森林を育成し利用することの意味を学ぶ機会や林業に興味関心を抱く機会を提供しています。また、様々な生き物を題材にして自然環境の見方を学ぶ「こども生態学教室」等、森林整備と生物多様性の関連や重要性を学ぶ貴重な場となっています。さらに、誰もが森林内の散策路を歩くことができるように社有林を解放する日を設け、人と人のコミュニケーションの場としても提供しています。このように「生物多様性が向上する事業所の森」を目指し、地域の方々とも協力しながら、維持・管理に努めつつ、その恵みを広く共有することで、地域の活性化にも寄与しています。
小学生の森林整備体験プログラム
審査委員の講評 |
購入した土地を長年にわたって整備し、産業と環境を両立される取組を続けています。そして、地域の住民をその森へと誘う工夫をし、さまざまな体験プログラムを提供することで地域からも喜ばれる素晴らしい取組です。
青木 亮輔(株式会社東京チェンソーズ 代表取締役)
お問合せ先
森林整備部森林利用課
ダイヤルイン:03-6744-2409