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林野庁

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鹿島建設株式会社 受賞者レポート

森林×ACTチャレンジ2024
森林づくり部門

優秀賞

王冠 鹿島建設株式会社 王冠
社有林の利活用を通した価値創出を目指して
   先人から受け継いだ社有林を次世代へつなぐ

   鹿島建設株式会社では、グループ全体で全国49か所、約5,500haの山林を保有し、適切な維持管理を行っています。
   2023年には、社有林における長期的な森林管理の観点に基づく、公益的機能の発揮と森林資源の活用の推進を目的とした「社有林協議会」を設置し、中期経営計画の下、社有林による新たな価値創出を掲げ、木造・木質建築の拡大、社有林等での生態系保存・再生、生物多様性や生物資源への配慮等への対応を強化することとしています。
   同社では、先人から受け継いだ社有林を活かしながら、次世代に着実につないでいきたいという思いで、新たな技術開発を含めて「知る」「いかす」「つなぐ」をモットーに社有林の整備に取り組んでいます。

鹿島建設社有林の好循環サイクル

社有林の好循環サイクル

   自社施設での社有林材の利活用と新工法の開発

   同社では、木材サプライチェーンの上流(山林所有)と下流(建設、木材利用)に直接携わる立場を活かして、中高層建築等の木造・木質化を推進し、森林の循環的な利用が促進されるよう国産材・地域産材の活用に取り組んでいます。
   同社による設計・施工で、2023年に開設した研修施設の建設にあたっては、宮崎県清蔵ヶ内社有林から伐採したスギ材300m3をCLTに加工・活用しており、伐採を地元林業事業体に、CLT材への製材・加工を山元から最も近いメーカーに依頼する等、地域連携を深めた取組を進めました。施工においては、現場の地組ヤードにてPC床版とCLTパネルを組み立て、内装まで仕上げた状態で揚重し、所定の位置に取り付ける新たな工法を開発・適用しています。在来工法に比べ仕上材等の揚重回数が大幅に減少するため、生産性や安全性の向上にもつながりました。

CLT研修施設CLT図


社有林材を活用したCLTを用い建設した研修施設

   生態系に配慮した森林経営

   福島県日影山・ボナリ社有林(約100ha)では、2023年に広範囲な生物調査を実施した結果、環境省や福島県のレッドリスト掲載の重要種18種を含む500種以上の動植物が確認されました。同社では、林業と生物多様性の保全の両立を目指し、地形、水理、植生等のデータから「生産林」、「環境林」としてゾーニングを実施し、それぞれの特性に合わせた管理計画を策定し維持管理しています。また、外来種の駆除や定期的な下刈りの実施、希少な両生類の産卵調査等の生物モニタリングを実施しています。これらの取組やこれまでの生態系に配慮した森林経営が評価され、2023年度後期の環境省「自然共生サイト」に認定されました。

森林づくり計画におけるゾーニング例

森林づくり計画におけるゾーニング例

オオアカゲラ

カモシカ
社有林において観察された
オオアカゲラ(上)、ニホンカモシカ(下)

   デジタル山林管理とその普及に向けて

   同社では、研究機関等と連携して、森林上空を飛行するドローンと林内を自律飛行するドローンからのレーザー計測データを森林管理に活用する取組を進めています。他のリモートセンシングデータや希少種の生育環境調査等の現地調査データと組み合わせることで、より適切かつ円滑な森林管理計画の策定が可能となります。現在、森林づくりを総合的にサポートするサービスの提供を開始しており、こうした取組を通じて、林業の発展や自然環境への貢献を目指しています。

   審査委員の講評

   環境に配慮した森林経営を行いながら、地域産業とも連携を進め、木材のサプライチェーンを構築されている。加えて、ICTを活用した森林づくりを支援する新しいサービスの展開は企業版森林経営のモデルとなり、今後の波及が期待されます。

青木   亮輔(株式会社東京チェンソーズ   代表取締役)

お問合せ先

森林整備部森林利用課

ダイヤルイン:03-6744-2409