CDMのプログラム化
プログラム化の検討
CDM植林を実施する方法として、プロジェクトとして立案する方法に加えて、プログラムとして立案する方法を取ることが出来るようになりました。このプログラムCDMについて概要と本事業での検討結果をご紹介します。
プログラムCDMとは
プログラムCDMの、通常のCDMとの大きな違いは、プログラムレベル(PoA)とプログラム活動レベル(CPA)という2つのレベルで運営されることです。通常のCDMでは個々の排出削減活動ごとに、その内容の説明や方法論の適用などについて記述する必要がありますが、プログラムCDMでは、個別の排出削減活動(=CPA)を包括する形でプログラムを設計することになるので、個々のCPAに共通する組織的・財政的・方法論的な枠組みは、個別のCPAでは再度検討する必要がありません。
CDM用語集 によれば、プログラムCDMにおけるPoAおよびCPAはそれぞれ以下のように定義されています。
1. PoA(Programme of activities)
ある種の政策や手法もしくは宣言した目標(つまり、インセンティブ・スキームや自主的プログラム)を調整・実施する民間/公的団体によって自主的に調整される活動であり、PoAが実施されない場合と比較して追加的な人為的GHG排出削減・純人為的GHG吸収が数の制限のないCPAによって引き起こされる。
2. CPA(CDM programme activity)
ベースライン方法論において決定されたエリア内において1ヶ所または同タイプの複数ヶ所で適用される、GHG排出削減のためのひとつもしくは関連する組み合わせの手法
プログラムCDMの特徴
プログラムCDMで行う場合、以下のような点において、通常のCDMと異なる特徴があります。
PoAの特徴
1. 調整管理主体(CME: Coordinating/Managing Entity)
排出削減をすすめるための枠組み・インセンティブを他のプロジェクト参加者に提供する。PoA設計書の提出等やクレジットの配分等も含めたすべての事項についてCDM理事会との交渉を担当する。CMEは必ずしもホスト国の組織でなくとも良い。
2. 実施期間
排出削減プログラムは最大28年、A/Rプログラムは最大60年で設定可能。
3. 開始日
PoAの開始日は、有効化審査のパブリックコメント開始日である。
4. モニタリング・検証
それぞれのCPAのモニタリングは方法論に沿った形で実施される。検証には、DOEはサンプリング手法を用いることもできる。
5. 境界(バウンダリー)
それぞれのホスト国のDNAがLoAを提出していれば、PoAの物理的な境界は複数の国にまたがることが可能である。
6. 方法論
基本的にはPoAに含まれるすべてのCPAは同じ方法論を適用する必要がある。PoAでは複数の承認方法論を組み合わせることも可能であるが、その際は登録申請の前にCDM理事会に対して承認依頼を行う必要がある。
7. 追加性
プログラムレベルでは以下の条件の一つを満たすことを示せれば追加的であるとの証明になる。
CDMが実施されない場合に、(1)自主的取組が実施されない、(2)義務的な政策・条例の施行が不十分、(3)PoAの実施によってより取り組みが促進される。
CPAの特徴
1. CPAのクレジット期間
通常のCDMプロジェクトのクレジット期間と同様に、7年(2回更新可能)または10年(更新不可)。A/Rの場合も同様に通常のA/R CDMと同様に20年(2回更新可能)または30年(更新不可)から選択。
2. 開始日
CPAはプログラムの実施期間中はいつでも開始可能である。
3. 追加性
CPA追加の適格性条件によって判断される。
プログラムCDMの展開可能性の検討
プログラムCDMは2009年にはじめて登録されて以来、2012年末までに129件登録されています。(下表)
しかし、CDM植林による登録はまだ一件もありません。そこで本事業では、プログラム化によるCDM植林の展開可能性を検討するため、ケーススタディを行いました。
登録年 | 登録件数 | 登録排出削減量 (tCO2/year) |
平均削減量 (tCO2/year) |
---|---|---|---|
2009年 | 2件 | 1,111,783 | 555,892 |
2010年 | 3件 | 122,987 | 40,996 |
2011年 | 12件 | 672,161 | 56,013 |
2012年 | 112件 | 6,564,365 | 58,610 |
計 | 129件 | 8,471,296 | 65,669 |
ブラジルの事例
プログラムCDMとして登録されている植林プロジェクトはまだないため、VCSで同様にプログラム化を目指したプロジェクトを構築していたブラジルの事例をケーススタディの対象として選択しました。
このプロジェクトは、バイーア州南部を対象として、本来であれば土地所有者に植生を保全・回復させる義務が発生するAPP(永久保護エリア)やRL(法的保護区)のうち、荒廃・放置されている区画を植林するプロジェクトです。
対象地が広範に分布し、所有者が多数になること、また、法的強制力が十分に機能していないことから、プログラム化のメリットの高い事例であると考えられます。
この事例を元に、モデルPDDを作成しました。詳細については平成23年度報告書をご参照ください。
スリランカの事例
スリランカでは、CDM植林プロジェクトがまだ登録されておらず、プログラム化による手続きの簡素化が登録促進に繋がる可能性も含め検討することを目的としてケーススタディ対象国として選択しました。
現地調査の結果を受け、スリランカの北西部および南東部に広がる乾燥地域で適用可能なプログラムなどを検討しました。詳細については平成24年度報告書をご参照ください。
お問合せ先
森林整備部計画課海外林業協力室
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