スギ及びヒノキの系統別の挿し木苗と実生苗による成長比較試験
キーワード:系統、さし木苗、実生苗、肥大成長、上長成長、根曲り、幹曲り
1 開発目的
九州におけるスギ及びヒノキの系統(品種)について、挿し木苗と実生苗の成長等の比較を行う。
2 成果の概要
- スギについて、肥大及び上長成長は、挿し木苗より実生苗が良好な系統(品種)が多かった。(図1)
形質は、実生苗より挿し木苗が、根曲が少ない傾向が見られた。しかし、幹曲は挿し木苗と実生苗の違いによる明確な違いは見られなかった。(図2) - ヒノキについて、肥大成長は、実生苗が全ての系統(品種)において挿し木苗より良好であった。(図3)
また、上長成長についても、実生苗がほぼ全ての系統において挿し木苗より成長良好であった。形質は、根曲、幹曲ともに挿し木苗と実生苗の違いによる明確な傾向は見られなかった。(図4)

図1 根元及び胸高直径並びに樹高について実生苗が優良なスギ系統の例(早良1)

図2 スギの系統・苗種別形質(平均値+標準偏差、5段階評価、数字が高いほど曲がりが少ない、8系統)

図3 根元及び胸高直径並びに樹高について実生苗が優良なヒノキ系統の例(姶良3)

図4 ヒノキの系統・苗種別形質(平均値+標準偏差、5段階評価、8系統抜粋)
3 成果の詳細
(スギ関係)
- スギ8系統について調査を行い、平均根元直径と平均胸高直径は、8系統中5系統は実生苗が挿し木苗より生長良好な傾向であり、最終調査の胸高直径は、8系統中3系統は実生苗が挿し木苗より値が高かった。(図1は実生が良い例であり、図5は挿し木が良い例である)
- スギの平均樹高は、8系統中3系統は実生苗が挿し木苗より生長良好な傾向であり、それ以外の5系統では同等もしくは実生苗より挿し木苗が生長良好な傾向であった。(図1は実生が良い例であり、図5は挿し木が良い例である)
- スギの系統別に、根曲と幹曲の形質を5段階評価して平均値を比較すると、挿し木苗の根曲の値が実生苗よりも高い傾向であった。幹曲については苗種の違いによる明確な傾向は見られなかった。(図2)
(ヒノキ関係)
- ヒノキ25系統について調査を行い、平均根元直径、平均胸高直径及び最終調査の胸高直径について、全系統の実生苗が挿し木苗より生長良好な傾向であった。(図3)
- ヒノキの平均樹高は、全系統について、実生苗が挿し木苗より生長良好な傾向であった。(図3)
- ヒノキの系統別に、根曲と幹曲の形質を5段階評価して平均値を比較したが、両形質ともに苗種の違いによる明確な傾向は見られなかった。(図4)

図5 胸高直径並びに樹高について挿し木苗が優良なスギ系統の例(八女9)
4 技術開発担当機関及びお問合せ先等
- 担当機関:九州森林管理局 森林技術・支援センター
- 共同研究機関:林木育種センター九州育種場
- 実施箇所:宮崎森林管理署楠見国有林233ち4、ぬ2林小班(宮崎県宮崎市)
- 開発期間:平成11年度~平成26年度
- お問合せ先:九州森林管理局 森林技術・支援センター、ダイヤルイン(0985-82-2211)
5 参考情報
[九州森林管理局Webサイト掲載情報]
完了報告・実施報告(H19(イ)~25)(PDF : 8,644KB)
実施報告等(H11~19(ア))(PDF : 6,598KB)