低コスト化を目指した適正本数・施業体系の解明
キーワード:低密度植栽、低コスト、下刈り、スギ、ヒノキ
1 開発目的
植付密度及び保育の違いによる利用材積、樹幹形及び低コスト造林の解明する。
2 成果の概要
- スギ、ヒノキとも1,500本/haで肥大成長に優位な傾向(植栽密度に比例)が見られ、上長成長では植生密度の違いによる差は見られなかった。形質については、スギは高密度箇所で曲がりが少なく、ヒノキでは顕著な差は見られなかった。(図1、図2、図3)
- スギの下刈りでは筋刈り箇所が効率的で、植栽密度が高密なほど効率が良い傾向となった。(図4)
- 低密度植栽は、成長状況において大きな影響は見られず、苗木代等の縮減と植付などの保育経費の削減が見込まれる。但し、形質では、曲がりが多かった。また、下刈りでは作業功程が掛り増しとなる傾向となった。

図1 スギ植栽密度別胸高直径の比較

図2 ヒノキ植栽密度別胸高直径の比較

図3 スギ植栽密度別形質の比較
評価区分1~5については数字が小さいほど曲がりが大きい。
3 成果の詳細
- 植栽密度別(1,500本、2,000本、2,500本、3,000本、3,500本)のスギ及びヒノキの試験地を設定した。
- スギ試験地では、低密度植栽の1,500本/ha箇所において、肥大成長・上長成長ともに高い値となり有意差も見られた。原因として、生立本数が少ないため個々の成長が促進されたものと考えられた。また、3,500本/ha箇所においても、上長成長が高い値となり有意差が見られる結果となったが、他の植栽箇所と比較し緩傾斜であったことに加え、方位や土壌等々の地況的要因(地位)が成長に影響したものと考えられた。
- スギ形質について。根曲がりは低密度箇所で多く見られ、幹曲がりは1,500本/ha箇所で多く見られた。下刈り時のつる類の割合では、3,500本・1,500本/haで大きく、幼齢期のつる類の影響と、台風被害等が形質に影響したのではないかと推察された。(図3)
- ヒノキ試験地では、低密度植栽箇所で肥大成長が促進され、上長成長では植栽密度別での成長差は見られないことがわかった。(図2)
- ヒノキ形質について。根曲がりでは2,000本/ha箇所で多く見られ、幹曲がりでは2,500本/ha箇所で形質の値が高い個体が多い結果となったが、明確な傾向までは見られなかった。地床植生割合においても殆ど差はなかった。
- 下刈りは、スギは各密度別に全刈りと筋刈りを設定、ヒノキは全刈りで実施した。
スギの下刈りでは筋刈り箇所が効率的で、植栽密度が高密なほど効率が良い傾向となった。(図4) - 植付では植栽本数が造林コストに大きく影響し、また、下刈りから除伐までは、埋土種子やぼう芽等による下層植生の繁茂による影響を受けやすいことから、植生に応じ全刈りや筋刈り等を組み合わせることでこのような影響を最小限とすることにより低コストにつながるものと考えられた。
- また、保育間伐の実施については、コスト削減に大きく影響するため成長状況等を勘案した施業計画が重要であるとともに、除伐実施に造林木の不形成木等を含めて除去することにより作業の省略が期待できる。

図4 樹種・植栽密度別除伐及び下刈り人工数(ha当たり)
「ヒ」はヒノキ。ヒノキは全て全刈り。「ス」はスギ。「全」は全刈り、「筋」は筋刈り。
4 技術開発担当機関及びお問合せ先等
- 担当機関:九州森林管理局 森林技術・支援センター
- 共同研究機関:なし
- 実施箇所:楠見国有林237へ2林小班(宮崎県宮崎市)
- 開発期間:平成6年度~平成27年度
- お問合せ先:九州森林管理局 森林技術・支援センター、ダイヤルイン(0985-82-2211)
5 参考情報
[九州森林管理局Webサイト掲載情報]
完了報告・実施報告(H19(イ)~25)(PDF : 6292KB)
実施報告(H15(イ)~19(ア))(PDF : 8277KB)
実施報告(H15(ア))(PDF : 8824KB)
実施報告等(H6~13)(PDF : 8263KB)