ニホンジカ被害対策における省力化の検討(実証試験)
キーワード:ニホンジカ、防護柵、忌避剤、ツリーシェルター、低コスト
1 開発目的
ニホンジカによる被害対策(防護柵、ツリーシェルター、忌避剤等)について、積雪等による影響、経費等の観点から分析を行い、それぞれの対策の効果的な使用方法を明らかにする。
2 成果の概要
- 多雪地域(1m以上)において、ネットタイプは防護柵の支柱の損傷(傾斜やネットのずりおち)(写真2、写真4)、ツリーシェルターは苗木の倒伏が発生。(写真3)
- 忌避剤は散布後に成長した部分に被害が発生するような結果となった中で、新たに取り組んだ立木を支柱とする防護柵は、今後とも効果の調査を行う必要があるが、立木については積雪による損傷の恐れが少なく、また、経費等の大幅削減が可能となることが明らかとなった。(写真1、表2)

写真1 立木を支柱に利用した防護柵


写真2 防護柵(斜め張り方式)使用 写真3 雪解け後のツリーシェルターの倒伏状況
における積雪による影響」(支柱が傾斜)
3 成果の詳細
- 保護柵(斜め張り方式)は丸太支柱の垂直張り方式よりも経費を40%削減できるが、積雪深40cm以下の地域での使用が望ましい。(写真4)
- ツリーシェルターによる単木保護は経費が高く、また、積雪による被害もある。(表1、写真3)
- 忌避剤は散布後に成長した部分に被害が発生する場合があるとともに、年2回、下刈り終了後に5年間継続する場合は必ずしも経費は安くならない。(表1)
- 保護柵設置は対象面積が小さいほどhaあたりの経費は高くなる。
- 保護柵(垂直張り方式)で支柱に立木を利用した場合(写真1)には、立木については積雪による損傷の恐れが少なく、支柱作設の経費が丸太支柱の垂直張り方式よりも資材費30%、労務費50%が削減できる。(表2)
- 但し、垂直張り方式ではシカが潜り抜ける可能性があり、効果を観察する必要がある。


写真4 保護柵(斜め張り方式)使用に 表1 保護柵・単木保護・忌避剤のhaあたり経費比較
おける積雪の影響
(積雪40cm以下なら支柱に影響なし)

表2 支柱に係る資材及び労務費の比較
4 技術開発担当機関及びお問合せ先等
- 担当機関:中部森林管理局 森林整備課 関係森林管理署
- 共同研究機関:岐阜大学
- 実施箇所:東濃森林管理署 上村恵那国有林1073ろ林小班(岐阜県恵那市)等
- 開発期間:平成27年度~平成29年度
- お問合せ先:中部森林管理局 森林整備課、ダイヤルイン(050-3160-6551)