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林野庁

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列状間伐後の中径木生産による施業の確立

キーワード:列状間伐、同齢複層林、樹冠容積、樹冠長率

1 開発目的

森林は無間伐で推移させると、理論上、林分が多様なサイズの個体がバランス良く残る「同齢複層林」の林型となるとされている。列状間伐はこの林型に至る時間を短縮し、将来は択伐的な施業が可能であるとされている。しかし、劣勢である小径木が隣接木の伐採後にも健全に成長するかどうか不明である。このため、育成単層林を多様なサイズの個体からなる同齢複層林に効果的に誘導できる列状間伐の方法やその後の保育方法について技術開発を行う。

列状間伐後の林相

写真1 列状間伐後の林相

2 成果の概要

  • 列状間伐のタイプや間伐の有無に係わらず、林分内の単木は小径から大径まで直径分布の幅広い林型へ移行する傾向となることが分かった。(図1)
  • 中層間伐を行った後の間伐木周辺の個体の成長を分析したところ、間伐木の影響の少ない(間伐木より2m以上離れている)木は成長が鈍化しているものがあったが、間伐木から2m以内のものはそのような傾向はなかったことから、伐採木周辺の小径木はその後も成長することができると考えられ、同齢複層林における択伐的な木材生産が可能であることが示唆される。(図2)
列状間伐による林内直径幅の広がりの変化

図1 列状間伐による林内直径幅の広がりの変化

列状間伐2年前と列状間伐2年後の直径の標準偏差の変化。どの列状間伐方法でも標準偏差が拡大しており、列状間伐によって大径木から小径木まで幅広く含まれる林型に変化していることを示している。なお、標準偏差の値が大きいほどばらつきが大きい。

間伐率別の単木材積増加量

図2 間伐率別の単木材積増加量

中層間伐実施前後の直径成長の変化。プラスは成長が改善。マイナスは成長が低下。黄色は間伐個体から2m以内。それ以外は2m以上離れた個体。明瞭なパターンは示されていないが、間伐木から2m以上離れた場所では成長が悪化している個体が見られた。(赤い円内)これは個体間の競争が継続したことによると推測され、よって、間伐木周辺の個体は競争関係による成長低下の懸念は低下したと考えらえる。

3 成果の詳細

  • 2007年に37年生のヒノキ人工林において列状間伐(1伐1残、1伐2残、1伐3残)を実施した。その5年後(2012年)に軽微な択伐(中層間伐)を行った。
  • 2012年にその林分で調査した結果、列状間伐のタイプや間伐の有無に関わらず、個体が小径から大径まで直径分布の幅広い林型へ移行する傾向(標準偏差の拡大)にあることが分かった。(通常の下層間伐の場合は直径分布が狭まる林型へ移行する傾向)(図1)
  • 中層間伐の行われた2012年以降の、間伐木周辺の個体の成長変化を分析した結果、間伐木の影響の少ない(間伐木より2m以上離れている)木には成長が鈍化しているものがあったが、間伐木から2m以内のものはそのような傾向はなかった。このことから、間伐(抜き伐り)後に間伐木の周辺木は成長低下が予防されていることが明らかとなったことから、同齢複層林における択伐的な木材生産が可能であることが示唆された。
  • 材積成長と、樹冠長、樹冠幅、樹冠長率、樹冠容積の関係を調べた結果、直径成長ともっとも関連の大きかったのは樹冠容積であった。したがって、個体を健全に育てるには、その樹冠容積(=着葉量の指標)を保つような施業が必要である。なお、樹冠容積の代替として樹冠長率を使用することも大きな問題はない。(図3)
樹冠容積及び樹冠長率と材積成長の関係

図3 樹冠容積及び樹冠長率と材積成長の関係

列状間伐後5年間の調査によるもの。樹冠容積と材積成長はよく相関しており、個体の着葉量と材積成長が深く関係していることを意味する。よって、間伐等の後の残存木の樹冠の拡大が将来の成長を左右することを示している。なお、樹冠長率も材積成長とほぼ相関しているため、簡易な使用として価値がある。

4 技術開発担当機関及びお問合せ先等

  • 担当機関:関東森林管理局 森林技術・支援センター
  • 共同研究機関:森林総合研究所
  • 実施箇所:茨城森林管理署管内269は林小班
  • 開発期間:平成24年度~平成26年度
  • お問合せ先:関東森林管理局 森林技術・支援センター、ダイヤルイン(0296-72-1146)

5 参考情報

印刷版(PDF : 734KB)

[関東森林管理局Webサイト掲載情報]
完了報告(PDF : 87KB)
完了報告添付資料(PDF : 909KB)

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