挿し木によるコンテナ苗を用いた低コスト造林技術の開発
キーワード:コンテナ苗、培地、低コスト
1 開発目的
コンテナ苗の育成コスト削減と普通苗より短い育成期間(1~2年)の実現とともに、コンテナ苗の利点を活かした造林の低コスト化を図る。
2 成果の概要
- 4種類の培地(ココピートオールド、ピートモス、鹿沼土(小粒、細粒))の中では鹿沼土のコンテナ苗が他の培地のものより発根率が高い傾向にあったが、灌水の調整と培地の検討(鹿沼土とココピートオールドあるいはピートモスとの組み合わせ)によりさらに発根率をあげることができた。(図1、図2)
- 鹿沼土は、根鉢が崩れやすく、培地には不向きである。(写真1)
- 育苗期間1年では山出し苗を作ることは難しい。

図1 培地種類別の挿し木コンテナ苗生存率・発根率

図2 発根率を高めるための取組

写真1 苗をコンテナから取り出したときの根鉢の状態
3 成果の詳細
- コンテナ苗をココピートオールド、ピートモス、鹿沼土(小粒、細粒)の4種類の培地により育成したところ、全体的に発根率は低いが、鹿沼土が75%で多少高くなった。これらは水のやりすぎなど水管理の不備があったと考えられる。(図1)
- このため、灌水量を少なくするとともに、水はけを良くするために、上部(5cm程度)に鹿沼土を用い、下部にココピートオールドあるいはピートモスを用いる方法を採用したところ、発根率は約90%に上がった。(図2)
- 育苗期間を1年間、培地を最も安価なココピートオールド(150cc)などとして、苗木1本あたりの育苗経費を試算したところ、281円となった。これは茨城県スギ普通苗98円(2013年)、宮城県スギコンテナ苗195.5円(2013年)などと比べて高いものとなった。
- 植付時のコンテナ苗について、ココピートオールド、ピートモスは培地が安定しており300ccを除いて根鉢が崩れないが、鹿沼土は不安定で根鉢が崩れた。特に300ccのコンテナ苗は1年間では根鉢全体に根が回らないため崩れたものと考えられる。(写真1)
- 春植え、秋植えの活着率は秋植えの方が高い傾向にあった。(図3)
- 普通苗と比べて、全体に樹高成長が良くなく初期成長が良いとの結果は得られなかった。樹高成長が悪いことから下刈り作業が年2回必要となり、コストの掛り増しとなった。

図3 培地の種類別春植・秋植別活着率
4 技術開発担当機関及びお問合せ先等
- 担当機関:関東森林管理局 森林技術・支援センター
- 共同研究機関:なし
- 実施箇所:育苗:七会詰所(茨城県城里町)、造林:朝日向国有林(茨城県常陸太田市)
- 開発期間:平成21年度~平成27年度
- お問合せ先:関東森林管理局 森林技術・支援センター、ダイヤルイン(0296-72-1146)
5 参考情報
[関東森林管理局Webサイト掲載情報]
完了報告(PDF : 174KB)
完了報告添付資料(PDF : 3,163KB)