多雪寒冷地等におけるコンテナ苗の改良と低コスト育林手法の開発

キーワード:コンテナ苗、植付時期、下刈り、海岸林

1 開発目的

多雪寒冷地において、積雪移動圧や寒風害に対するスギ・カラマツコンテナ苗の実証試験を行い、植付から下刈りまでの初期作業における低コスト育林手法を開発する。
また、海岸林造成に向けたアカマツやコナラコンテナ苗、ケヤキ普通苗等の実証試験を行い、海岸林造成におけるコンテナ苗の育林手法を開発する。

2 成果の概要

• コンテナ苗と普通苗の成長比較については、スギはコンテナ苗の成長が良い。カラマツは同程度。(図1)
• 積雪移動圧による融雪時の苗抜けや折損については問題が見られなかった。
• 植付時期の違い(春植え、秋植え)については、春植えが成長のスタートが早い分優位であるが、秋植えでも1成長期分遅れるが問題はない。(図2)
• 下刈り作業頻度の違い(隔年、毎年)による成長量の差はほとんどなく、1～2回の下刈り作業の削減が可能である。(図3)
• 海岸林造成については、アカマツコンテナ苗は100%近い残存率で、ケヤキとコナラも90%程度の残存率となった。心配された津波による塩害土壌や岩石混じりの土壌においても成林が見込まれる。(図5)

図1 コンテナ苗と普通苗の成長比較

   

       図2 植付時期別成長比較                                                                  写真1 スギコンテナ苗5年目(3.5m)

3 成果の詳細

• コンテナ苗と普通苗の成長比較については、スギの場合はコンテナ苗が若干勝っているが、カラマツは、ほぼ同等の成長である。(図1)
• 最大積雪1～2mの岩手県北部の気象条件で、積雪移動圧による融雪時の苗抜けや折損については問題が見られなかった。
• 植付時期の違い(春植え、秋植え)については、山での成長のスタートが早い春植えが成長がよく、下刈り高の目安を超えるには優位である。秋植えについては成長のスタートが遅れるものの一定の成長はあり、作業の平準化のためには実行が可能である。(図2)
• 下刈り作業頻度の違い(隔年、毎年)にほとんど差がないことから、植生観察をして判断は必要であるが、1～2回の下刈り作業の削減が可能である。(図3)
• コンテナ苗の植付作業功程(能率)調査により普通苗と比較して30～40%の時間の削減が可能であることが確認できた。(図4)
• 海岸林造成にあたって、3タイプの土壌(津波浸食土壌・津波浸食土壌+BQソイルバーク堆肥混入土壌・塩害のある森林土壌)でアカマツコンテナ苗の成長量を調査し比較した結果、どの条件においても良好な成長が見られた。ケヤキとコナラにおいては、ケヤキが初期に先枯れが発生したが、翌年に再生枝から伸張するなど樹種の特性により成長を見せている。コナラコンテナもアカマツとの混植で成長を見せている。
• 5年間の植栽試験の残存率はアカマツで98%、ケヤキの95%と高い。コナラが80%～95%とばらつきがあるが、アカマツとの混植による活着残存率が高く、成長量も優れている。(図5)

                     

          図3 下刈り頻度別成長量比較                                        図4 普通苗とコンテナ苗の植栽功程比較

図5 樹種別残存率の推移

A津波アカマツは津波浸食土壌におけるアカマツである。Bバークアカマツは津波浸食土壌におけるバーク堆肥を土壌に混入させたアカマツである。D～Gの土壌は津波浸食土壌であり、ケヤキ混植及びコナラ混植とはアカマツとの混植したそれぞれの樹種をさす。

4 技術開発担当機関及びお問合せ先等

• 担当機関:東北森林管理局 岩手北部森林管理署、三陸北部森林管理署
• 共同研究機関:森林総合研究所東北支所、森林総合研究所林木育種センター東北育種場ほか
• 実施箇所:岩手北部森林管理署444林班り2小班(岩手県八幡平市)(多雪寒冷地)、三陸北部森林管理署20林班ろ2小班他(岩手県宮古市)(海岸林)、ほか2個所
• 開発期間:平成24年度～平成28年度
• お問合せ先:東北森林管理局 岩手北部森林管理署、ダイヤルイン(0195-72-2221)
  東北森林管理局 三陸北部森林管理署、ダイヤルイン(0193-62-6448)

5 参考情報

印刷版(PDF : 732KB)

[東北森林管理局Webサイト掲載情報]
完了報告(PDF:3088KB)、中間報告(H26)(PDF : 984KB)