北海道における未立木地(ササ生地)の解消のための土壌保全型更新手法の開発
キーワード:トドマツ、アカエゾマツ、地拵え、下刈り、低コスト
1 開発目的
大型機械による地拵えにおいて土壌の保全を図るとともに、下刈り等の森林整備の低コスト化に向けた技術開発を行う。
2 成果の概要
- 緩傾斜のササ生地では、地拵え方法の違いによって土砂流出量や苗木の成長に顕著な差はなかった。(図1、図2)
- バックホウを使用した「ササの根系を除去する地拵え」の場合、下刈りまでの省力化が見込まれることから、造林コストの低減に有効である。

写真1 ササ生地

図1 土砂流出量の推移

図2 普通・大苗別地拵え方法別成長比較(トドマツ)
3 成果の詳細
- 試験地については、トドマツとアカエゾマツを秋植えし、下刈り開始年度が異なる4つのプロット(植栽2年目、3年目、4年目、無下刈り)を設置し、それぞれのプロットにおいて、植付け前の地拵え方法等が異なる7種類の処理区を設けた。
- 地拵え方法が異なる7種類の処理区については、1.バックホウ、2.ブルドーザ、3.ブラッシュカッター+粉砕物敷詰、4.ブラッシュカッター、5.ブラッシュカッター+粉砕物敷詰+大苗、6.ブラッシュカッター+大苗、7.人力。1と2は地掻き、3~7はササ等の刈払い。粉砕物敷詰とは、刈払い時に粉砕したササ等を刈払いしたところに敷詰めることで植生回復や土壌流出の抑制を期待したもの。
- 土壌流出の低減については、施工当初はササ根系が残る地拵え仕様(ササ下刈り)で土壌流出量が抑えられる傾向があるものの、傾斜10度という比較的緩い条件の下では、その後の植生回復によりその後顕著な差はなかった。(図1)
- 地拵え方法等の違いによる苗木成長に対する差はトドマツ、アカエゾマツともにほとんどなかった。(図2)
- 下刈り条件(開始時期)による成長については、全期間下刈りのトドマツ普通苗とアカエゾ大苗で良好であり、トドマツ普通苗と大苗、アカエゾマツの普通苗で下刈りを実施しないことによる低下が顕著に現れた。(図3、図4)
- コスト比較については、バックホウ地拵え実施後に植えた普通苗が、植栽3年目から2回程度の下刈りで植生の被圧を脱する可能性があることから、地拵えから下刈りまでの造林コストを低減できる可能があると考えられる。(図5)

図3 普通・大苗別下刈り省略期間別成長比較
(トドマツ)

図4 普通・大苗別地拵え方法別成長比較
(アカエゾマツ)

図5 地拵え方法別・樹種別コスト比較(試算)
4 技術開発担当機関及びお問合せ先等
- 担当機関:北海道森林管理局 森林技術・支援センター
- 共同研究機関:なし
- 実施箇所:上川北部森林管理署 2200な小林班
- 開発期間:平成20年度~平成27年度
- お問合せ先:北海道森林管理局 森林技術・支援センター、ダイヤルイン(0165-23-2161)
5 参考情報
[北海道森林管理局Webサイト掲載情報]
平成27年度技術開発委員会(完了報告資料)(PDF : 1023KB)
機械化林業 平成29年6月号(PDF : 938KB)
天然更新補助作業試験地(PDF : 921KB)