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G7宮崎農業大臣会合サイドイベント結果概要

「宮崎農業大臣会合」前日となる4月21日(金曜日)に、農林水産省主催のサイドイベントのセッションとして、「持続可能な木材利用によるネット・ゼロ及び循環経済の実現に向けて」を開催しました。

1. 開催日時・場所

     日時:令和5(2023)年4月21日(金曜日)1030分~1200


場所:シーガイア・コンベンションホール(宮崎市)

形式:ハイブリッド

2. G7宮崎農業大臣会合サイドイベント セッション1の結果概要

(1)背景・目的

持続可能に経営された森林はその生育の過程で二酸化炭素を吸収し炭素を貯蔵するほか、そうした森林から合法的に伐採された木材を建築物等に利用することで、炭素が長期的に貯蔵されます。加えて、木材は製造・加工時のエネルギー消費が鉄やコンクリートなど他の建築資材よりも少ないことから、材料代替による排出削減にも貢献します。

合法で持続可能な森林経営を通じて生産される、再生可能な資源である木材を持続的に利用していくことは、二酸化炭素の排出削減と循環経済の実現に大きく貢献します。このため、木造建築による二酸化炭素の排出削減の可能性への期待は大きくなっています。

本セッションは、各国政府・国際機関や民間セクター、研究機関の協働により、持続可能な森林経営に基づく合法で持続可能な木材利用に関する政策対話や研究、イノベーションを、国際協調の下に促進していくための契機とすることを目的としています。

(2)開会あいさつ

我が国政府を代表し、農林水産大臣政務官は、森林資源の循環利用による気候変動対策及び持続可能な社会の構築への貢献、その前提としての木材の合法性確認の重要性等について、言及しました。
政務官

(3)オルガンスキ氏による基調講演

米国イェール大学で長く教鞭をとり、建築家として活躍されているアラン・オルガンスキ氏が、「気候変動対策における森林・林産物の役割」と題した基調講演を行いました。
オルガンスキ氏は、森林と人間社会における建築活動との間の共存関係の構築について、特にその素材や建築方法を持続可能な木材利用に置き換えていく可能性について提案されました。都市建設に際して、温室効果ガスの排出が大きい金属等の建材に代えて、木材を利用することで、都市に大規模な炭素の貯蔵庫としての機能を持たせることが可能となり、また、生物由来の強力な炭素の隔離と貯蔵を行うシステムを構築することは、森林の保全や再造林の奨励などの相乗効果も期待されると指摘されました。

オルガンスキ氏

(4)パネリストによる取組発表

国際熱帯木材機関(ITTO)シャーム・サックル事務局長がモデレーターを務め、パネルディスカッションが行われました。カナダ・ブリティッシュコロンビア(BC)州政府、国際機関、研究機関、生産国の民間セクターから、持続可能な木材利用によって森林機能の強化と脱炭素化を促進し、新しい循環経済を生み出していく方策について、それぞれの取組や見解が発表されました。

各パネリストの主な発言は、以下のとおりです。なお、これらのパネリスト以外に、カナダ・BC州のジャレット・ハッチンソン マス・ティンバー推進事務局長と国連食糧農業機関(FAO)の三次啓都特別顧問が質疑応答に加わりました。

パネリスト

◆カナダ・BC州 雇用・経済開発・イノベーション省 貿易担当副大臣 ジャグルップ・ブラル氏:

我が州の経済強化政策の中心に位置付けられ、先住民と協力して実施しているマス・ティンバー行動計画(Mass Timber Action Plan)は、我が州の豊かな森林資源を活用し、マス・ティンバーと呼ばれる、強度の高い構造用集成材の利用を促進することにより、森林セクターの高付加価値化と競争力を高めるものである。我が州をマス・ティンバーの世界的なハブとすべく、新たな雇用、経済成長、イノベーションの機会を促進している。

◆国連食糧農業機関(FAO)マリア・ヘレナ・セメド事務局次長:

世界的な消費増加が見込まれる中、持続可能な木材生産と利用によって、ネット・ゼロで循環型の経済の実現に向かって共に行動することを国際社会に呼び掛けたい。FAOITTO等の国際機関とともに「持続可能な未来のための持続可能な木材(SW4SWSustainable Wood for a Sustainable World)」イニシアティブを展開している。引き続き、木材バリューチェーンや森林ガバナンスの改善、包括的な森林政策と投資を進め、持続可能な森林経営を推進していく。

◆国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所 中静透所長:

持続可能な森林経営と木材の利用は、社会の持続可能性と深く繋がっており、気候変動対策において、生物多様性等との相乗効果が期待できるコストの低い緩和策や二酸化炭素を貯蔵する木造建築や化石燃料由来の素材を代替する新素材として期待される。さらに、防災機能を持つ海岸林等での活用などは、Nature-based Solutions(自然を活用した解決策)として国際社会が直面している社会的課題に対処することが可能であるほか、野生生物との緩衝帯や人のストレスの緩和などへも貢献するものである。

◆マレーシア木材協議会 タン・ティン・ワイ 最高執行責任者代理 兼 国際事業開発部門長:

持続可能な木材利用における民間セクターの役割は重要である。持続可能な木材のサプライチェーンを実現するためには、森林認証スキームを推進することが有効である。このため、生産国における森林ガバナンスの改善への努力が国際マーケットで評価され、プレミアム価格で取引されること等を通じた、実効性確保のための経済的なインセンティブが重要である。

パネルディスカッションの最後に、モデレーターのシャーム・サックルITTO事務局長から、気候変動対策や地域経済に貢献する合法で持続可能な木材利用を推進していくためには、生産国を巻き込む必要があること等が指摘されました。

 

本セッションでは、持続可能な木材利用によるネット・ゼロ及び循環経済の実現に向けて、G7メンバー国はもとより、G7メンバー以外の国、国際機関や民間セクター、研究機関と協力して、持続可能な森林経営と木材利用に関する行動をグローバルに促進することを確認、発信しました。

また、本セッションの概要については、翌日(22日)、オルガンスキ氏から農業大臣会合の席上、報告がなされました。

添付資料

G7宮崎農業大臣会合サイドイベントプログラム(PDF : 1,949KB)

お問合せ先

林政部木材利用課木材貿易対策室

ダイヤルイン:03-3502-8063

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