北海道国有林の大自然、森林づくりの現場などから届いた”HOTな写真”を掲載していくギャラリーです
森林(もり)の撮っておき!(2023年7月)
最近見かけた植物の御紹介(2023年7月14日撮影)
業務でよく通行する林道沿いでは、様々な植物を見ることができます。
今回は、7月に見つけた植物をいくつか御紹介します。
こちらはオオウバユリです。白い花をたくさん咲かせる存在感抜群の植物で、ウバユリより花の数が多いのが特徴です。
根からでんぷんを取ることができ、アイヌの人々にも古くから利用されてきた保存食の代表格でもあります。
過去に長野県で撮影したウバユリです。
上の方に5つくらいの花がまとまって咲いていました
林道沿いに、ずらっとアジサイが咲いており、鮮やかな青色がとても綺麗でした。
本州では5~6月頃に開花しますが、北海道では開花時期が6~8月なので、まさに今が旬です。
アジサイは何種類かに分類されていますが、北海道や本州の日本海側では「エゾアジサイ」が分布しています(写真)。
雪の多い山間部で見ることができ、葉や花序が大きいという特徴があります。
一方で、本州の太平洋側や四国では、主に白い花を咲かせる「ヤマアジサイ」が分布しています。
こちらはエゾアジサイよりも葉や花序が小さく、葉の先が尖っているなどの特徴があります。
こちらはクルマユリです。
一輪だけ咲いているのを目撃しました。
オレンジに斑点模様の付いた花を咲かせます。
クルマユリは、右の写真のように葉が輪生しているのが特徴です。
「オニユリ」と似ていますが、こちらは葉が互生(互い違いに付く。)するため、違いが分かりやすいです。
本州では夏の高山で見られますが、北海道では低地でも見ることができます。
今回は植物をメインに御紹介しましたが、林道ではシカやキツネ、リスなどの野生動物ともよく出会います。
夏も本番のこの時期に、ぜひレクリエーションの森などで森林を楽しんで下さい!
レクリエーションの森
https://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/policy/system/rekumori/index.html
(日高北部森林管理署 日高森林事務所 田口)
雌阿寒岳・阿寒富士登山(2023年7月9日撮影)
快晴の日を狙い、3年目3回目の雌阿寒岳・阿寒富士登山に行ってきました。
雌阿寒岳(1,499メートル)は阿寒湖南西部にそびえる山脈地帯で最も標高の高い山で、約2万年前から火山活動を開始し、何度も噴火を繰り返し10の山が複雑な山体を形成した複式火山です。
私たちが俗に言う雌阿寒岳のピーク・主峰のポンマチネシリは標高1,499メートルで、3,000~7,000年前にできたと考えられ、現在も活発な火山活動を続けています。
今年6月29日から30日までに、雌阿寒岳ではポンマチネシリ火口付近を震源とする火山性地震が24時間であわせて234回観測されました。
1日に200回以上の地震が観測されるのは2018年11月以来です。
現在も噴火警戒レベル1が継続されており、火口付近を中心に現在も活発な火山活動が行われているようですので、登山前には必ず火山情報を確認したうえで入山するようにお願いします。
今回は雌阿寒温泉コースから登り、オンネトーコースに下山するルートを計画しました。
朝6時半ごろ登山開始しましたが、すでに下山するパーティにも遭遇しました。
1合目2合目はエゾマツ、トドマツの天然林を森林浴しながら通り抜けます。
陽の光が漏れ入り、とても爽やかな気分で登山がスタートします。
樹林帯の中でシマリスがお出迎えしてくれました。
1時間もしないうちにハイマツ帯へ入り、ここからは多くの高山植物を目にすることができました。
登山道付近に根を張っている植物もあり、踏まないように気を付けながら進みます。
イワブクロ
高山のれき場や岩場に生える植物で、花弁とがくに白い毛が生えているのが特徴です。
カラフトイソツツジ
低地の湿原~高山帯の日当たりの良いところに生える常緑低木です。
葉は長さ3~5センチメートル、幅5~12ミリメートルとなっていますが、さらに葉の幅が狭いものをヒメイソツツジといい国内では大雪山系の高山帯に分布するそうです。
コケモモ
ハイマツの下によく生える常緑低木です。
卵型の厚みと光沢のある葉と鐘形の花が特徴です。花は赤みを帯びたものが多い印象ですが、今回の雌阿寒岳登山では白色のものを多く見かけました。
メアカンキンバイ
メアカンフスマと同じく雌阿寒岳で発見されたことからメアカンの名がついています。
高山のれき場に生える多年草で、根から花茎と葉が両方出ています。
葉は先端が3つに分かれている点がほかのキンバイと異なり、がく片の間に小さい副がく片を持っています。
メアカンフスマ
こちらも高山のれき場や岩場に生える植物で地下茎を張ってマット状に広がります。
花弁とがくは星型が2枚重なったように見えるのが特徴です。
エゾ(アカン)マルバシモツケ
高山れき地に生える落葉低木です。
マルバシモツケのうち葉が小型で表面が細脈までへこんでいるものをエゾマルバシモツケといい、写真はさらに全体的に無毛であるためエゾマルバシモツケの品種の一つであるアカンマルバシモツケと思います。
コマクサ
苔のような形を持つ葉と垂れ下がり先は反り返った花を持つ特徴的な植物です。
これも高山れき地に分布しています。
雌阿寒岳の頂上からは阿寒湖や阿寒湖温泉街、雄阿寒岳まで見渡すことができました。
雌阿寒岳頂上へ到着した後は火口の稜線を歩き、いったんオンネトーコースを阿寒富士分岐まで下ります。
阿寒富士の登山道がくっきりと見え、下りながら急登の覚悟を決めます。
オンネトーコースの頂上から8合目までは非常に滑りやすくなっていますので、足元に気を付けてください。
阿寒富士(標高1,476メートル)はポンマチネシリの南側にあり、1,000~2,500年前に誕生したと考えられています。阿寒富士の登山道は細かい砂利質で非常に滑りやすいので、上り下りともに注意して進みます。
阿寒富士の山肌には、メアカンキンバイ、メアカンフスマ、イワブクロが一面に咲き誇っていました。
ヒメイワダテ
オヤマソバと迷いましたが高さが低いこと、分枝が少ないことやおしべが複数あるためヒメイワダテかと思います。
阿寒富士の山頂からは、雌阿寒岳、雄阿寒岳、阿寒湖まで広く見渡すことができました。
阿寒富士下山中も雌阿寒岳の雄姿を眼下に収めながら、雄大な景色を十分に堪能できました。
下りはオンネトーコースを通りました。雌阿寒温泉コースでは見れなかった植物を見ることができました。
ハクサンシャクナゲ
樹林下に生える常緑低木です。
葉は厚く光沢をもっており、縁が裏面に巻き込んでいます。
花は数個がまとまって咲いています。花の色は白色からピンクまで様々です。
ジンヨウイチヤクソウ
樹林下に生える常緑多年草です。
よく似たコバナノイチヤクソウとの見分け方は葉脈に沿って葉に入った白い模様です。
ゴセンタチバナ
山地の針葉樹林体に生える常緑多年草です。
花が咲く茎には6枚が輪生、そうでない茎に4枚が輪生します。
高山植物の解説では、梅沢俊著『新版北海道の高山植物』を参考としました。
登山を計画されている方は以下のサイト等をご参考にしてください。
雌阿寒岳|北海道足寄町公式ホームページ (town.ashoro.hokkaido.jp)
(十勝東部森林管理署 螺湾森林事務所 森林官 氏家)
7月上旬は大雪山系では春を迎えるころです(2023年7月8日撮影)
残雪期の景色とお花畑を見るため、黒岳・御鉢平を訪問しました。
黒岳は標高1,984メートルの大雪山の一座で山麓の層雲峡温泉から黒岳ロープウェイとリフトを使って7合目まで登ることができます。
黒岳の頂上から黒岳石室に向かうと、北鎮岳、中岳、間宮岳などの2,000メートル級の山々に囲まれた御鉢平があり、この時期は残雪がハイマツ等と重なりゼブラ模様となっています。
朝7時のロープウェイに乗車し、7時半ごろから7合目より登山を開始します。
登山道ではウコンウツギが見ごろでした。
ウコンウツギ
高山の尾根や斜面に生える落葉高木で高いもので2メートル程度になり、ラッパ状の黄色い花を持ち、中にはオレンジ色の斑点があります。
低木帯に生える落葉高木で、深紅の花におしべの黄色が非常に鮮やかです。
チシマヒョウタンボク
高さ40センチメートル程度になる多年草で、葉はコブシ上に3~5の切込みが入り、さらに先端は細かく避けています。
ミヤマキンポウゲ
高山などの湿った草地に生えるラン科の多年草で、尖った花びらを持つ複数の花がまとまっています。
ハクサンチドリ
ラン科のハクサンチドリの一種で、葉に黒い斑点模様があるのが特徴です。
ウズラハクサンチドリ
フウロソウ科チシマフウロのうち、花色が薄いものです。(チシマフクロは花が紫色。)
海岸から高山の草地まで幅広く分布しています。
トカチフウロ
斜面に広がるウコンウツギの群生地(奥に見えるのは天塩岳)は非常に鮮やかな色合いでした。
黒岳の頂上から石室までの道のりではゼブラ模様の大雪山の絶景でした。
黒岳石室から御鉢平展望台へ向かう道中ではチングルマを主体としたお花畑が広がっていました。
チングルマ
バラ科の落葉低木です。
草本かと思っていましたが、枝が地面を這うようにして広がることで、1本の草本のように見えるそうです。
奇数羽状複葉で葉には鋭く細かい切れ込みが入っています。
高山のれき地等に生える常緑低木で枝が分岐しながら地面を這うように広がり、梅に似た花を持っています。
イワウメ
高山のれき地等に生える常緑低木でトドマツのような線形の葉を持ちます。
エゾノツガサクラ
高山のれき地やハイマツ帯に生える常緑低木で、花は淡いクリーム色でたまに赤みを帯びます。
キバナシャクナゲ
写真に写っている楕円形の葉はイワヒゲのものではありません。
ひじきのような…茎のように見える葉を持っています。
イワヒゲ
下山中に晴れ間が広がり、黒岳山頂~黒岳石室間で雄大な景色に出会えました。
下山時になると登山道の残雪が溶け、ぬかるみになっている箇所がありました。
また御鉢平の稜線には雪渓が残っている箇所がまだありましたので、登山を計画されている方は情報収集されることをお勧めします。
たくさんの登山客の方に囲まれていると本格的な夏山シーズンを実感します。
暑い日も続いていますので、無理のない登山計画、十分な装備、勇気のある下山判断等を肝に命じて、今年のシーズンも山を楽しみたいと思います。
高山植物の解説では、梅沢俊著『新版北海道の高山植物』を参考としました。
(十勝東部森林管理署 螺湾森林事務所 森林官 氏家)
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