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北海道森林管理局

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     各地からの便り

    北海道大学天塩研究林の見学会を実施

     

    【留萌北部森林管理署】 


    さわやかな秋晴れとなった10月28日(月曜日)、北海道大学天塩研究林の見学を行いました。

    留萌振興局との林政連絡会議や初山別森林共同施業団地運営会議の中で「地域林業の発展に向けた取組」として現地検討会、技術研修会を行っていくとしており、管内林業関係者の森林整備に対する技術向上(スキルアップ)を目的として今年度は標記見学会を企画し、留萌管内の市町村担当者にも呼びかけたところ、管内の7機関計35人が参加しました。

    まず、天塩研究林庁舎で北海道大学天塩研究林 高木林長からの概要説明では、天塩研究林は東西で地質が大きく異なっており、特に東側は、植物の成長に適さない超塩基性土壌である蛇紋岩地帯に、アカエゾマツの天然林が成立しているという、世界的に見ても珍しいフィールドであること、また、度重なる山火事により荒廃した森林を再生するため、大規模な植林事業を行ってきたことなどをご紹介いただきました。

    その後、研究林内を見学しました。


    (1) 36年生のアカエゾマツ造林地
    この造林地は、1984年にヘクタール当たり1,071本の低密度で植栽し、1984年から1990年まで下刈り、その後は2017年に切り捨て間伐及び枝打ちが行われるまで、施業は行われませんでした。

    2017年の間伐・枝打ちではアカエゾマツの植栽後に天然更新した広葉樹と、他の個体よりも成長が悪いアカエゾマツを選び伐採し、アカエゾマツの密度はおよそヘクタール当たり800本となっており、林内は明るく開放的な印象で、枝打ちを行うことで、節のない高品質な材の生産を目指しています。

    枝打ちが施された36年生アカエゾマツ造林地
    2017年に間伐・枝打ちが施された36年生アカエゾマツ造林地

    下の写真は36年生アカエゾマツ造林地のうち、天然更新した広葉樹を伐採していない箇所の様子です。ここでは広葉樹、特にダケカンバなどのカンバ類が大きく成長しており、アカエゾマツを被圧していました。仮に、この林分で、アカエゾマツの優良材生産を目指していくのであれば、このような広葉樹は伐採しなければなりません。

    カンバ類が大きく成長している36年生アカエゾマツ造林地
    カンバ類が大きく成長している36年生アカエゾマツ造林地

    (2) 天然更新表土戻し試験地
    この試験地では、レーキドーザーによる「通常掻起し」に対して、通常掻起しを行った後、剥いだササと表土を2ヶ月間にわたって堆積・乾燥させ、ササが枯死した後に再び施行地に敷き戻す「表土戻し」が、植生の回復と蓄積の増加に与える影響を調査しています。

    「通常掻起し」地の様子
    「通常掻起し」地の様子

    「表土戻し」地の様子
    「表土戻し」地の様子

    「通常掻起し」地の林床に更新した針葉樹の稚樹
    「通常掻起し」地の林床に更新した針葉樹の稚樹

    「通常掻起し」を行った場所では、カンバ類が高密度で更新しており、樹高はそれほど高くないことが見て取れますが、表土戻し」を行った場所では、埋土種子や表土戻し後の天然下種により更新したと考えられるカンバ類が、人の背丈を優に超えるほど成長していました。通常掻起し及び表土戻しのどちらの処理も2009年に行われ、今年でちょうど10年が経過したとのことですが、地表処理方法の違いが、更新木の成長にこれほどまでの差を生じさせることに驚かされました。

    また、通常掻起し地では、林床に針葉樹の稚樹が更新していましたが、表土戻し地では針葉樹の稚樹はほとんど見られませんでした。このような差が生じたのは、表土戻しにより土壌養分の流出が抑えられたため、更新したカンバ類や、表土戻し後に侵入したササが旺盛に成長し、針葉樹の更新が阻害された為だと考えられています。

    (3) 天然更新エゾマツ刈り出し、カンバ強度間伐試験地
    この試験地では、2002~2003年にかけて掻起しを行い、2011年には試験地の一部で針葉樹の刈出しや、定性または列状間伐を実施しました。また、2019年には、この箇所において、ヘクタール当たり1,000本の密度となるよう定性間伐を行いました。

    2019年春に定性間伐を行った箇所
    2019年春に定性間伐を行った箇所

    カンバ類の樹冠面積を確保すべく、かなり強度の間伐が行われていました。また、地際からかなり高い位置で伐採が行われたことが写真から分かります。この試験地では2011年の間伐後、カンバ類、特に有用樹種であるウダイカンバに、エゾシカの角擦りによる被害が見られたそうで、エゾシカの林内への侵入を抑制することを目的とし、このような伐採方法をとったとのことです。

    (4) 81年生アカエゾマツ造林地
    この林分では植栽後11年間にわたって下刈りが行われ、その後1974年から89年にかけて、間伐5回、枝打ち4回を行いました。

    81年生アカエゾマツ造林地
    81年生アカエゾマツ造林地

    間伐や枝打ちの効果がしっかりと現れた、通直かつ節の少ないアカエゾマツが育っていました。

    今回の見学会は、「天然力を活用した多様な森づくり」を目指すわれわれ国有林の職員にとって、大いに参考になるものであったと思います。
    今回得た知見を、地域の森林・林業の発展のために活かしていきたいです。

    (一般職員 鈴木)

    お問合せ先

    総務企画部企画課
    ダイヤルイン:050-3160-6271

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