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北海道森林管理局

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    空知地域の林業による地域振興に貢献

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                                                                                                           空知森林管理署
                                                                                                           森林技術指導官   木村雅代


    空知森林管理署管内の概要

      空知森林管理署は、夕張山系地域に位置する夕張市、岩見沢市、美唄市、芦別市、赤平市、三笠市、南幌町、由仁町、長沼町、栗山町、月形町の6市5町に広がる約16.4万ヘクタールの国有林野の管理経営をしています。そのうち、トドマツ、エゾマツ、ミズナラ、カンバ類等が混交する天然林が全体の約68%、トドマツ、アカエゾマツ、カラマツ等の人工林が約32%となっており、天然林を主体とした森林で構成されています。

      管内の石狩平野には、防風保安林が格子状に配置されており、防風効果の恩恵を受け、水稲生育に適した気象条件であることから、道内随一の米どころとなっています。また、月形町には1890(明治23)年樺戸集治監の開庁10周年の記念として、受刑者の手により植栽されたスギ林があり、開拓を支えた囚徒たちの歴史的な時代背景を感じられる場となっております。

       利根別自然休養林展望台岩見沢から望む       月形スギ希少個体群保護林月形町
              利根別自然休養林展望台(岩見沢市)から望む                        月形スギ希少個体群保護林(月形町)

    管内の森林林業の現状と課題

      地域の人工林が本格的な利用期を迎えている中、森林所有者の林業への関心が薄れていることなどにより、適切な森林整備が実施されない人工林の増加が懸念されています。森林所有者の関心を高めるためには、収益性の高い林業を確立していくことが重要であり、隣接する複数の森林所有者が所有する森林をとりまとめて、路網整備や間伐等の森林施業を一体的に実施する「施業の集約化」や、遠隔操作・自動機械等の新技術を取り入れ収益性を向上させた「新しい林業」の普及を進めていく必要があります。また、管内には林務経験の少ない市町林務担当者が多いことから、これらの技術を効果的に普及するため、市町林務担当者の森林・林業に関する知識や技術の更なる向上も図る必要があります。

    課題解決に向けた取組の内容

    (1)地域林業関係者との連携

      空知森林管理署では、市有林と国有林が一体となり、効果的な路網の整備及び効率的な森林施業の実施に取り組むことを目的として、令和5年3月に芦別市と芦別市落辺地域森林整備推進協定を締結しました。伐採搬出に当たっては相互に調整を図るとともに、土場の共同利用及び路網整備について、協力して維持修繕に努めることとしています。

      調印式の中で、荻原芦別市長から「今回は市有林と国有林が対象の協定であるが、森林の多面的な機能を維持するには適切な森林の管理が必要であり、連携して効率的に施業ができる地域が広がることを期待したい」との話がありました。

      今後も、管内民有林と連携した森林施業を推進して施業の集約化を図り、林業による地域振興に貢献していきたいと考えています。

       森林整備実施計画の打合せ       芦別市落辺地域森林整備推進協定調印式
                      森林整備実施計画の打合せ                                        芦別市落辺地域森林整備推進協定調印式

      令和5年9月には本協定に基づき、地域の林業関係者と適切な森林整備の在り方について深く考えていく機会の場として勉強会を開催しました。

      勉強会には、芦別市と隣接している赤平市や、なかそらち森林組合にも参加いただき、民有林、国有林双方の現場を見学し、伐採方法だけでなく森林作業道や土場の設定、丸太や末木枝条の販売方法、林道の維持管理等について意見交換を行い、参加者からは、「年に何回かこのような機会があれば関係者の距離も縮まり、話がしやすくなる」、「国有林と連携した取組や制度について、一緒にできることがあれば提案してほしい」といった意見があり、地域の民国連携に対する意識の向上と林業関係者の関係構築ができたとともに、双方の施業方法について理解を深めることができ、今後の民国連携に向けて、有意義な勉強会となりました。
       勉強会の様子 赤平市民有林主伐後の造林地にて       勉強会の様子 国有林の間伐直後の人工林にて
             勉強会の様子(赤平市民有林主伐後の造林地にて)              勉強会の様子(国有林の間伐直後の人工林にて)

    (2)林業技術の提供

      空知森林管理署では、管内の市町林務担当者に対して、森林・林業に関する知識や技術の向上を図る取り組みを実施しています。

      令和4年度は、市町村林政連絡会議の際に、近隣の緑地に移動してもらい、森林調査に用いる輪尺・測高器などの林業道具の使い方や、全天球カメラを使用した簡易な森林調査の手法を実際に体験してもらいました。

       輪尺で木の径級を測る       全天球カメラを活用した森林調査の紹介
                        輪尺で木の径級を測る                                            全天球カメラを活用した森林調査の紹介

      また、国有林では造林作業の担い手不足や造林事業量の増加に対応するため、伐採から造林までの一貫作業システムの導入やコンテナ苗の普及など、造林作業の低コスト化や軽労化に取り組んでいますが、民有林では「新しい林業」への取組があまり進んでいないのが実情です。

      このため、令和5年度は関係市町や振興局、森林組合を対象に、ラジコン草刈り機およびクラッシャーによる下刈り作業の現地見学会を開催し、刈払い機による人力作業が主体の下刈り作業について、機械による軽労化への取り組みに関する情報を共有し、普及を図りました。

       ラジコン草刈り機 現地見学会の様子 長沼町       クラッシャーによる下刈り 機械の説明 長沼町 
               ラジコン草刈り機現地見学会の様子(長沼町)                 クラッシャーによる下刈り機械の説明(長沼町)

      見学会に出席した市町の林務担当職員からは、「機械下刈りを前提とした植え付け設計が印象に残った」「労働力の軽減という点ではかなり大きいものではあると同時に、効率面を考えると刈払い機で刈ったほうが早いと感じた」「基礎知識がないので機械を見ただけではイメージが付かみにくい部分もあり、基礎的な内容の研修会があれば助かる」などの感想が寄せられました。

       初めてコンテナ苗を見る 市町林務担当者に植付体験をしてもらう
             初めてコンテナ苗を見る市町林務担当者に植付体験をしてもらう

    課題解決に向けた取り組みの成果・今後の課題

      芦別市との森林整備推進協定を通じて得られた大きな成果としては林業関係者間の関係構築が挙げられます。見学会や勉強会を通じて地域の林業関係者が国有林の技術に触れ、「新しい林業」に向けた知識を深めることができ、国有林職員にとっては自身も含め民有林行政について理解を深めるきっかけとなりました。今後は地域森林の多面的機能の高度発揮と資源の循環利用を図っていくため、これまで各機関が行ってきた森林整備の進め方、販売方法等を踏まえ、関係者が一体となって「施業の集約化」や「新しい林業」に向けた具体的な取り組みを模索していきたいと考えています。

      また、林務経験が少ない管内関係市町の職員に対しては、見学会等を通じた先進事例も紹介しつつ、基礎的な林業技術や知識を学べるような機会を提供していきたいと考えています。

    国有林フォレスターとしての想い

      人工林資源の成熟に伴う主伐再造林の増加、造林事業における担い手不足、省力化など国有林、民有林共に課題は同じです。これらの諸課題に対処していくためには、空知総合振興局や森林室、各市町、森林組合などの林業関係者と情報共有し、連携しながら取り組んでいくことが重要であると考えています。

      今後も、地域の課題や要望に対して自分ができることを考え、地域林業の活性化に貢献できるよう、フォレスター活動に取り組んでいきます。

    お問合せ先

    空知森林管理署
    ダイヤルイン:050 - 3160 - 5715