このページの本文へ移動

北海道森林管理局

    文字サイズ
    標準
    大きく
    メニュー

    地域でのコンテナ苗普及と造林作業の省力化に向けて

    顔写真



                                                                                                     上川北部森林管理署
                                                                                                     森林技術指導官   山岸寛明  

    上川北部森林管理署管内の概要

       上川北部森林管理署は、北海道北部の内陸部、天塩川上・中流域、名寄川上流域に位置し、名寄市、士別市、下川町、和寒町、剣淵町、美深町、中川町、音威子府村の2市5町1村に広がる国有林を管轄しています。国有林の面積は約16万2千haと管内の森林面積約32万4千haの5割を占めています。
       また、南東部には、優れた山岳景観を有する天塩岳道立公園などの自然が広がっており、観光資源に恵まれ、アウトドアスポーツなどの参加型・体験型観光が盛んな地域です。

       西天塩岳から天塩岳を望む       士別市と比布町にまたがる笹の平
                    西天塩岳から天塩岳を望む                               士別市と比布町にまたがる笹の平

    管内の森林林業の現状と課題

       主伐後の再造林の実施においては、林業従事者の高齢化や減少により、造林事業における機械化、省力化が急務となっています。特に、下刈り作業は、炎天下での人力作業となるため重労働となり、作業員の確保が難しく、造林事業からの撤退等が見受けられます。
       そのため、下刈り作業の軽労化、省力化を図り、造林作業自体のコスト低減や、担い手不足の解消に向けた取り組みが必要となっています。

    課題解決に向けた取組の内容

    (1)コンテナ苗生長量調査

       令和元年度に植栽したカラマツ裸苗、令和2年度に植栽したカラマツコンテナ苗の大苗及び緩効性肥料施肥苗の植栽箇所において調査プロットを設定し、下刈りコストの削減が図られるか令和2年度から生長量調査を行っています。

    カラマツコンテナ苗平均生長量

       生長量については、大苗及び緩効性肥料施肥苗ともに生長が良く、植生高は令和3年度と令和4年度を比較すると、大苗が111cmで188%、緩効性肥料苗は97cmで168%の生長率となっています。
       裸苗については、植栽年度が1年早いことから植生高は高くなっていますが、同じく令和3年度と令和4年度を比較すると、207cmで150%の生長率となっています。

    コンテナ苗生長量試験プロットの生育状況
       コンテナ苗生長量試験プロットの生育状況

    試験プロットを設定した造林地のオルソ画像
                             試験プロットを設定した造林地のオルソ画像

    (2)天然更新の調査

       造林コスト(植付経費)の削減には、天然更新による稚幼樹の活用が有効な手段の一つと考え、調査プロットを3箇所設定し、調査を行っています。

    天然稚幼樹の発生状況(単位:本)

       林縁部のプロットにトドマツ稚幼樹が残っていますが、それ以外はカバ類が主となっています。広葉樹は樹高が1m前後のものもあり、着実に生長しています。
       しかし、調査プロットの位置により生長に差異が見られることから、引き続き調査を行い、経過観察をしていきます。

    天然更新調査プロットの様子
                 天然更新調査プロットの様子

    (3)コンテナ苗植栽現地検討会

       コンテナ苗は、普通苗と比較して植栽が容易であり、作業員が一日に植栽できる本数も多くなることから、造林作業の省力化や担い手の確保にも貢献できる可能性があります。しかし、管内市町村とコンテナ苗の導入状況について意見交換を実施したところ、ほぼ全ての市町村でコンテナ苗が未活用となっている現状であることがわかりました。
       このため、管内市町村の林務担当者を対象に、コンテナ苗の植栽の容易さなどを体験してもらうことを目的として、コンテナ苗植栽に係る現地検討会の開催を今年度秋季に計画しているところです。

    中川町での打ち合わせの様子
                中川町での打ち合わせの様子

    現地検討会で使用予定のコンテナ苗植栽器具
       現地検討会で使用予定のコンテナ苗植栽器具
    左からスペード、ディプル、モーラー、プランティングチューブ、電動ドリルドライバ(アイスオーガ取付)

    管内市町村との具体的な取り組み

       上川北部森林管理署では、管内の下川町と中川町の2町と「森林整備推進協定」を、和寒町と「水源林整備協定」をそれぞれ締結し、市町村と協働の森林整備に取り組んでいます。
       また、下川町と中川町にそれぞれ共同土場(ストックヤード)を設置し、国有林材と町有林材の集積や搬出に役立てています。

    下川町の共同土場の使用状況(右:町有林材、左:国有林材)
    下川町の共同土場の使用状況(右:町有林材、左:国有林材)

       今後については、国有林材と民有林材の共同販売や協調出荷など、有利販売に向けた取り組みについても検討しているところです。
       また、下川町では、共同土場を活用し、地元の企業や個人を対象に町有林から搬出した広葉樹材の「せり売り」を実施しています。

    共同土場でのせり売りの様子
                 共同土場でのせり売りの様子

       和寒町との「水源林整備協定」では、和寒町の取水施設がある上流の国有林を対象に、和寒町が契約相手方となる分収造林地の森林整備と併せて、国有林でも作業道整備を含めた森林整備を行っています。

    水源林整備協定区域内のトドマツ人工林
         水源林整備協定区域内のトドマツ人工林

       引き続き、上川北部森林管理署管内の市町村と連携を図り、森林の様々な機能を発揮させるため森林整備を進めていきます。

    国有林フォレスターとしての想い

       植栽作業においては、いまだに機械化が進んでおらず、炎天下で人力により1本1本植え付けられていることに加え、長期的な作業員の減少や高齢化などにより、地域の森林整備そのものが厳しい状況となってきています。
       また、人工林資源の成熟化に伴い、地域の民有林においても人工林が伐採(主伐)されていますが、このままでは再造林が進展しない状況となる恐れも危惧されます。
       これらの課題に対処していくためには、地域の植栽作業においてコンテナ苗を効果的に活用し、作業の省力化や担い手対策などに活かしていくことが重要です。
       今後も、上川総合振興局や森林室、各市町村など林業関係者との連携を図りながら、また、ご協力をいただきながら、地域林業課題の解決に向け、地域と密着したフォレスター活動に精一杯取り組んでいきたいと考えています。

    お問合せ先

    上川北部森林管理署
    ダイヤルイン:050 - 3160 - 5735