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北海道森林管理局

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    低コストで効率的な施業の推進に向けた取組と森林づくりについて

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                                                                                                十勝西部森林管理署東大雪支署
                                                                                                       
    森林技術指導官 諸橋 大介  

    東大雪支署管内の概要

    東大雪支署は、十勝北部の上士幌町、新得町、鹿追町、士幌町にまたがる約15万haの国有林の森林を守り育てています。
    当支署管内は、日本百名山にも数えられるトムラウシ山や十勝岳のほか、二ペソツ山、石狩岳など、北海道を代表する山々に囲まれた地域で、亜寒帯性針広混交林の広がる日本でも有数の森林地帯です。
    また、大雪山国立公園をはじめ、保安林や保護林、緑の回廊、レクリェーションの森などの多様な森林を広く有しており、森林の持つ公益的機能の発揮が特に期待される地域となっています。
    これらの恵まれた自然の中では貴重な野生動植物も多くみられます。

    三国峠から見下ろす樹海
                                   三国峠から見下ろす樹海

    十勝岳からの展望
                                      十勝岳からの展望

    管内の森林・林業の現状

    「上士幌町」
    上士幌町は、十勝の北部に位置し、二ペソツ山、石狩岳、クマネシリ岳等に囲まれた十勝圏の最北部大雪山国立公園区域が多くを占めています。大雪山の山々を水源とした音更川が町の中央を南北に流れており、その東西に農用地が広がり集落が形成されています。
    上士幌町の総面積は約70,000ha、そのうち森林面積が約53,000haと総面積の76%を占めています。
    民有林面積は約5,800haで、そのうちカラマツを主体とした人工林の面積は約3,200haであり人工林の割合が55%と全道平均(27%)を大きく上回っています。
    さらに林齢では、民有林の人工林面積のうち、伐採期を迎える35年生以上のカラマツ人工林が約1,800ha58%)を占めています


    三国峠
                                          三国峠
         
    「鹿追町」
    鹿追町は十勝の北西に位置し、北端は大雪山国立公園の一部となっており、大雪山系の山並みを水源とする然別川が町内を南北に流れており、鹿追町の母なる川として町民に親しまれています。
    また気象的には積雪寒冷地帯にありますが、晴天日が多く降水量、降雪量は少ないものの寒暖の差は厳しいものがあります。
    鹿追町の面積は約40,500haで、うち森林面積は約21,000haで総面積の52 %を占めています。
    民有林面積は約3,000haで、そのうちカラマツを主体とした人工林の面積は約1,700haであり人工林の割合が57%と全道平均を大きく上回っています。
    さらに林齢では、民有林の人工林面積のうち、40年生以下のカラマツを主体とした森林が約710ha(42%)を占めています。


    然別湖
                                          然別湖

    「新得町」
    新得町は、十勝総合振興局管内の最西部に位置し、東に鹿追町、上士幌町、南に清水町、西には上川総合振興局管内の上川町、美瑛町、南富良野町に接しており、北に大雪山国立公園、西に日高山脈に囲まれ、大雪山連峰を源とする十勝川、佐幌川流域に添ったなだらかな丘陵地となっています。
    新得町の総面積は約106,000haで、そのうち森林面積は約93,000haと総面積の88%を占めており、このうち国有林は約84,000haで、3分の2が大雪山国立公園に指定された森林となっています。
    民有林面積は約10,000haで、そのうちカラマツ及びトドマツを主体とした人工林の面積は約5,600haであり、人工林の割合が56%で、全道平均を大きく上回っています。
    さらに林齢では、民有林の人工林面積のうち、伐採期を迎える35年生以上の林分が約3,800ha(67%)を占めています。

    トムラウシ山からの御来光
                                  トムラウシ山からの御来光

    「士幌町」
    士幌町は十勝の中北部に位置し、西部には東大雪山系の東ヌプカウシヌプリがあり、この一帯は大雪山国立公園に指定されています。
    町のほぼ中央を音更川が南北に流れています。
    東部は標高300mの佐倉山の丘陵地と居辺川の河岸段丘地で土壌は火山灰性土壌からなっており、一部にローム層、扇状地れき層などになっています。
    士幌町の総面積は約26,000haで、そのうち森林面積は約5,600ha(21%)です。
    民有林面積は約5,500haで、そのうちカラマツを主体とした人工林の面積は、約3,200haで人工林率は58%となっています。
    さらに林齢では、民有林のカラマツを主体とした人工林面積のうち、伐採期を迎える35年生以上の林分が約2,300ha72%)を占めています。

    ヌプカの里第一展望台から十勝平野を見る
                        ヌプカの里第一展望台から十勝平野を見る

    管内の森林・林業の問題、課題

    「上士幌町」
    高齢化等により世代交代が進む中、林業の採算性が悪化してきたこれまでの経験から、森林所有者の造林意欲が低迷している状況の中で、水源かん養、山地災害の防止、生物多様性の保全等、森林の持つ様々な機能の低下や、将来の森林資源の保続が危ぶまれている状況となっており、その結果、林業・木材産業に対する影響が懸念されています。
    現在、施業の集約化に伴う健全な林業経営の推進等が進められている状況ですが、合わせて、今後も引き続き林業技術者の養成や確保していくことが町として重要な課題となっています。

    「鹿追町」
    人工林のうち、伐採期を迎えた40年生の林分が約100ha6%)となっており、とりわけ戦後主体的に植林されたカラマツが約80haとなっています。
    今後これらの森林は伐採・造林が必要となること、また、近年の外材の輸入減少による伐採が進んでいる状況ですが、採算性の悪化等理由から、植栽や保育などの森林整備に対する意欲は減少しているところです。
    そのことから、林業生産活動と合わせ、適切な森林整備として、また、環境に優しい素材である木材の有効活用の観点から、計画的な伐採及び間伐をすることが必要となっています。

    「新得町」

    民有林の造林は、1992年をピークとして、主に南新得・広内・福山・北新得などにカラマツを中心とした植林が実施されており、今後伐期を迎える森林も多く存在することから、林業生産活動を通じた適切な森林整備を図るとともに、環境に優しい素材である木材の有効利用の観点も含めて計画的な伐採、また、事後の造林をすることが求められています。
    また、合わせて、各種保安林も点在していることから、災害に強い森づくりを目指す森林整備が課題となっています。

    「士幌町」

    人工林の林齢では、30年生以下の若い林分が約850haであり、計画的な保育・間伐を適正に実施することが重要となっています。
    また、35年以上の林分は約2,300haであり、多くの林分が主伐の時期を迎える中で、森林の状況に応じた伐採と合わせ、伐採後に確実に造林を実施する必要があります。
    なお、士幌町の広範囲の農業地帯に配置された防風保安林の面積は約770haとなっており、防風保安林の管理についても、森林の持つ多面的機能を発揮するため、計画的な施業を実施する必要があります。
    合わせて居辺川(おりべがわ)流域は、土砂の流出や崩壊の恐れがあり、農地などを保全するために、山地災害防止機能の高い森林の整備を進めていくことが求められています。

    課題解決に向けた取組の内容

    各町の課題では、適切な森林施業を実施する意向ありつつも、林業従事者の不足や林業採算性の悪化等の影響により、その実施が難しい状況となっています。
    そのことから、東大雪支署、その問題を解決する1つの手段として、「低コストで効率的な施業の推進に向けて」と題し、「列状間伐の推進」という重点目標を定め、各種会議や現地検討会を開催する中で情報発信をしてきたところです。
    平成30年には「功程管理プログラム」を利用して、列状間伐※1と定性間伐※2の功程における比較検討(表1)を行い、結果として、功程的には列状間伐の優位性が示されたところです。

    列状間伐と定性間伐の功程分析
                     (表1)列状間伐と定性間伐の功程分析


    ※1:間伐を行う列を決めて、その列の全ての木を伐る方法。
    ※2:立木の形質や形状、成長等を確認しながら木を一本一本選んで間伐する方法。

     

    また、平成31年には、地域林政連絡会議等で列状間伐が程的に優れていることを情報するとともに、総合振興局主催の現地検討会にも参加し、民有林関係者に対して列状間伐のメリット、作業システム等の技術情報の説明を行い、列状間伐への理解と普及を図りました。
    その後、令和3年度には、民有林の状況を把握している森林組合に対して列状間伐に対する「アンケート調査」を実施しました。
    結果は、列状間伐の実施は皆無という結果であり、その具体的理由などの詳細を把握するため、若年職員の育成も含めて、森林組合の造材現場・製材工場の見学を実施しました。
    その見学会では、森林組合の部長さんから、単に「列状間伐」か「定性間伐」という選択肢だけではなく、「森林づくり」の原点として、「収穫調査における選木の仕方が重要である」という話や、「民有林の多くは国有林のように大面積の人工林ではなく、山主の意向を踏まえた細やかな作業が必要となることから、目先の利益としての列状間伐に捉われるのではなく、最終的に仕立てる本数を予測し、それに向けた間伐を実施することも必要になる」という話があったところです。
    国有林では1・2回目の間伐を地形や地質条件を考慮しつつ原則列状間伐で実施していますが、山づくりのために、今後も適切な森林施業を検討していく必要があります。
    また、製材工場見学では、「現在森林組合の製材はカラマツのみ、また、製材機械は古いものの、5年後くらいにはカラマツの原木供給量は減少すると見通していることもあって設備投資は控えている」という話や、「機械のオペレーターは一人前になるのに3年はかかる」という人材育成の話もありました。

       
    森林組合との意見交換
                              森林組合との意見交換
        
    伐採現場を見学させてもらいました   
                       伐採現場を見学させてもらいました
     

    森林組合の製材工場の見学
                            森林組合の製材工場の見学

    優しく丁寧な説明をしていただきました

                         優しく丁寧な説明をしていただきました


    また、令和
    3年度は「列状間伐の推進に向けた現地検討会」を開催しました。
    森林組合の「現場・製材工場見学」で繋がりの持てた森林組合の部長に出席してもらい、国有林の生産現場での作業状況などについて意見交換を行い、国有林の施業等に対する意見をいただいたところです。


    現地検討会での意見交換
                             現地検討会での意見交換


    伐採現場の見学  
                                     伐採現場の見学  


    内容は、「若干風倒木も発生している当箇所での列状間伐は間違い」、また、「収穫調査は施業の基本であり、職員の山を見る目を養うためにも国有林として職員実行による調査を増やすべき」等の意見があったところです。
    列状間伐の長所は「選木作業の軽減」、「かかり木が発生しにくく、作業の安全性が高まる」、「生産性の向上と利益の増加」であり、理解を深めてもらうことから、東大雪支署における令和4年度の地域の課題解決に向けた重点取組目標は、列状間伐の推進と合わせて、山作りも踏まえた間伐を検討するという方針を立てました。

    課題解決に向けた取組の成果・今後の課題

    森林は、私たちに木材を供給してくれるだけでなく、二酸化炭素を吸収する、水を貯留し洪水を緩和する、土砂の流出を防ぐ、川や海へ養分を供給する、多様な生物を育む、風景や安らぎを与えるなど、さまざまな公益的機能を持っています。
    こうした森林の持つ公益的機能は、適切な森林づくりにより、木材生産と一体的に発達させる必要があります。
    森林からの木材の効率的な生産は重要であり、そのためにも「低コストで効率的な施業の推進に向けて」というこれまでの課題に対して今後も取り組んでいきます。

    国有林フォレスターとしての思い

    これまで約2年間「民国連携」の仕事をしてきましたが、その中で一番重要と感じたのは、各町村の「民有林担当者」、また、「森林組合」との情報交換地域林業の振興に向けて重要だということです。
    特に、森林組合は民有林のことをよく承知しており、国有林として学ぶべき点も多いことから、今後は国有林の技術力の発信と合わせ、民有林の実態把握を通じて地域林業の課題解決のために努力していきます。

    お問合せ先

    十勝西部森林管理署東大雪支署

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