このページの本文へ移動

北海道森林管理局

    文字サイズ
    標準
    大きく
    メニュー

    根室地域におけるエゾシカ被害軽減に向けた取組






                                                                                                       根釧東部森林管理署
                                                                                                       森林技術指導官 杉原 優人


    当署管内の概要

    根釧東部森林管理署は日本最東部に位置し、根室振興局管内の根室市、別海町、中標津町、標津町、羅臼町の1市4町の国有林を管轄しており、面積は10万6千haと根室管内の森林面積の6割を占めています。

    管轄区域は、原生的で希少な森林生態系保護地域として保全管理し2005年に世界自然遺産に登録された知床半島の東側部、知床連山、標津山地から摩周湖まで連なる山岳林、希少野生動植物種の生息の場である野付半島や根室地域の海岸林、北海道開拓の歴史的背景などから2001年に北海道遺産に選ばれた「格子状防風林」からなる特色ある森林が所在しています。

    格子状防風林
                                               格子状防風林

    管内のエゾシカ被害の課題

    根室振興局管内のエゾシカによる農林業被害額は減少傾向にありますが、根室市においては牧草等を中心とした被害(近年被害額1億6千万円で推移)が地域農業に深刻な影響を与えてます。

    海岸沿いの国有林ではエゾシカの越冬地となっていることもあり、十頭以上のエゾシカの群れを目撃することが多く、採食ラインと言われるエゾシカが届く範囲の樹皮や新芽等の食害、太さ15cm程度の樹木への角擦りが見受けられ、森林被害が顕著な状況です。

    エゾシカによる農林業被害額(北海道提供)
                                                   エゾシカによる農林業被害額(北海道提供)


    エゾシカによる角擦り
                                          エゾシカによる角擦り

    エゾシカの誘引捕獲の取組み

    エゾシカ被害防止対策の取組として、野生鳥獣による被害の予防及び野生鳥獣捕獲等の対策を実施し、地域住民の生活環境の保全と安全確保を図る目的で、根室市、農業協同組合、猟友会等の関係機関によって構成される根室市鳥獣被害防止対策協議会に構成員として参画しています。

    当地域では冬期積雪の少なさもあり、エゾシカの越冬地になっていることから、協議会と連携を図るなかで平成26年度から根室市内の国有林において大型囲いわなによる誘引捕獲事業を実施しています。現在は、長節地区と特定猟具(銃器)使用禁止区域内の落石地区との2箇所で実施しています。

    大型囲いわなの構造は、当初はベニヤ板、ブルーシート、ネット、鋼管を組み合わせた構造でしたがブルーシートが破れ、その隙間からエゾシカが逃げだすため、現在は鋼管とコンクリート用型枠材を主構造としたわなを設置しています。

    大型囲いわなの設置状況
                                        大型囲いわなの設置状況

    捕獲作業では、エゾシカの警戒心を失くすため、わな周辺に牧草サイレージを置いてエゾシカを誘引し、積雪が少なくエゾシカがわなに近寄らない場合は撒き餌を行うなど寄り付きがよくなるよう工夫しています。
    また、日没前後でも捕獲ができるように赤外線投射仕様の監視カメラを設置しわなに入ったエゾシカを確認して、電磁石で吊り上げた扉を落とし捕獲する「遠隔操作システム」で行っています。

    捕獲期間中は、スノーモービル走行等により、わな周辺のエゾシカが逃げてしまわないよう、近隣の町内会の方にチラシを配布し、エゾシカ捕獲にご協力をいただいています。

    捕獲されたエゾシカ
                                          捕獲されたエゾシカ

    これまで大型囲いわなで捕獲したエゾシカの頭数は、積雪が少なく越冬地に移動せず捕獲頭数が少なかった年度もありますが毎年概ね100頭を超えており、平成26年度から令和3年度までの累計で1,099頭捕獲されました。また、くくりわなでの捕獲を平成29年度に花咲地区、平成30年度に別当賀地区で行っており、計14頭が捕獲されました。



    大型囲いわなで捕獲したエゾシカの性別割合では、メスが92%、オスが8%となっており、メスが大部分を占め、オスは1割程度でオスの方が警戒心が高いと思われます。



    平成29年度(2017年度)から令和3年度(2021年度)までの捕獲したエゾシカの性別年令別割合では、1歳メスが77%(578頭)、3歳メスが13%(100頭)、2歳メスが4%(30頭)と続き、群れの中で警戒心の低いメスがわな内に入り易い傾向が見られました。

    大型囲いわな性別年令別捕獲頭数

    今後の課題

    別海町内の国有林では、カラマツ植栽木の新芽がエゾシカに食害され先端部の成長が阻害されたカラマツが一部に見受けられることから、昨年度から自動撮影カメラを当該地に設置してエゾシカの生息調査を行っており、今後その結果を踏まえ、大型囲いわな設置について検討することにしています。

    食害を受けたカラマツ林分
                                       食害を受けたカラマツ林分

    右端が自動撮影カメラ
                                          右端が自動撮影カメラ

    自動撮影カメラ撮影写真
                                         自動撮影カメラ撮影写真

    根室地域を含む北海道東部地域のエゾシカ生息数は、ピーク時に比べ減少していますが、ここ数年は生息数は変わらず農林業被害額は依然高水準で推移しており、エゾシカの目撃頭数や被害状況を考えるとエゾシカ被害対策の継続は重要な課題です。
    根室地域でのエゾシカによる農林業被害の減少に向けた取組みを地域の意見を聞きながら進めていきたいと思っています。


    終わりに

    根釧東部森林管理署では、エゾシカ被害対策のほか令和4年度の民有林支援のひとつとして、人力で行う下刈作業の省力化にも取り組んでいます。
    下刈作業は夏季の炎天下や急斜面といった厳しい環境で行われていることが多く、機械化を図ることで労働負荷の低減につながると期待されています。

    下刈作業の機械化に支障となっている伐根の処理を大型機械地拵えの際に反転処理する方法や下草を大型機械で効率的に処理ができる植栽本数、植栽間隔について、署内の若手職員を中心としたサポートチームを結成し検討を進めてきたところです。

    今後、これらの取組成果を踏まえ、造林コスト低減に向けた対策を進めていきたいと考えています。

    お問合せ先

    根釧東部森林管理署

    ダイヤルイン:050 - 3160 - 6675