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北海道森林管理局

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    離島における木材利用の拡大に向けて


                                                                                                                                                                                                                      宗谷森林管理署                               森林技術指導官  山端  孝


    宗谷森林管理署では、利用期を迎えた利尻島の民有林及び国有林の人工林を適切に整備し、再生可能な木材資源の循環利用を促進するため、生産された木材の有効活用を図ることができる仕組みづくりを目指し取組みを進めておりますので、ご紹介します。      

    秋の姫沼の風景(利尻富士町)
                           秋の姫沼の風景(利尻富士町)
                  

    当署管内の概要

    宗谷森林管理署の管轄区域は、北海道の最北に位置した南北に細長い区域であり、宗谷総合振興局管内の稚内市・豊富町・幌延町・浜頓別町・中頓別町・枝幸町・礼文町・利尻町・利尻富士町・猿払村の1市8町1村に所在する約17万haの国有林を管理経営しており、北部は宗谷海峡、東部はオホーツク海に面していて、西部には日本海に浮かぶ利尻島、礼文島があります。
    当署が管理する森林の約7割がトドマツ・エゾマツ・ミズナラ・センノキ・ダケカンバ等が混交する天然林で占められ、約3割が昭和30年代以降に造成されたトドマツ・カラマツ・アカエゾマツ等の人工林となっています。
    また、高緯度地方の特色ある自然環境を形成しており、利尻礼文サロベツ国立公園、北オホーツク道立自然公園等に指定されるとともに、絶滅のおそれが高い野生生物の生息・生育地やラムサール条約湿地(クッチャロ湖、サロベツ原野)もあることから、レクリエーションの場としての利用や野生生物の保護に対する要望が高い地域です。

    クッチャロ湖・ポン沼(浜頓別町)      稚咲内砂丘林(豊富町)
                        クッチャロ湖・ポン沼(浜頓別町)                                                                   稚咲内砂丘林(豊富町)

    なお、海岸沿いの森林を中心として、過去の度重なる森林火災等により失われ、未だササが優占する箇所が多く見られることも特徴となっています。
    さらに、利尻・礼文両島については、海岸線近くまで急傾斜地が迫る山地災害の危険地域となっていることから、生活環境の保全、山地災害の防止等の機能発揮が強く求められています。
    宗谷管内の主要な産業は、農業(酪農)と漁業となっており、適切な森林の整備が農地や沿岸環境の保全につながるとともに、多くの市町村が国有林に水源を依存していることから、良質な水資源の安定供給のため、水源函養機能の発揮が重要となっています。

    管内の森林・林業・林産業の現状

    管内の森林面積は、民有林約15万6千ha、国有林約17万haの計約32万6千haで管内土地面積の7割を森林が占めています。気候は、強風、多雪、低温など気象条件が厳しいことから、全般的に樹木の成長が芳しくありません。特に沿岸部や宗谷丘陵の一部では強風等のため、植栽木が育たず、無立木地となっている場所も見られます。
    しかしながら、昭和30年以降に造成された人工林の多くは間伐・主伐期を迎え、今後、伐採や造林が増加することが見込まれています。
    伐採や造林などの事業量の増加が見込まれるなか、林業労働者の減少や高齢化が課題となっており、増大する事業量への対応が難しい現状となってきています。
    管内の木材加工工場は3工場があり、製材、プレカット、チップ製造を行っています。
    製材工場では針葉樹を用いた建築材、プレカット工場ではプレカット材や杭、製材端材を用いた割箸の生産している割箸工場、チップ工場では主に木質バイオマス発電用となるチップを製造しています。これらの工場では製造過程でおが粉が生産され、畜産用敷料やきのこ菌床などとして利用されている他、加工されたブリケット(注1)を生産し、ボイラーやストーブの燃料として利用されています。

    製材について説明を聞いているところ      帯のこで製材しているところ
                          製材について説明を聞いているところ                                                       帯のこで製材しているところ

    (注1) 
    木くずを圧縮して棒状に固めたもの。
             ちなみにペレットは、より細かく砕いたものを木材の持つリグニンで小さな塊に加熱して固めたものです

    管内の森林・林業・林産業の課題

    森林資源の状況として人工林を中心に資源が充実していくなか、林業従事者の状況は高齢化、少子化により減少・高齢化率が高い水準にあるとともに林業従事者の定着促進に向けて、段階的かつ体系的な研修等による林業従事者のキャリア形成や処遇改善を進めることが必要と考えています。
    また、森林資源の循環利用を図ることやゼロカーボン北海道の実現に向け、長期間炭素を固定することが可能な建築物をはじめ、様々な分野において地域材の利用を促進するとともに、地域の木材加工流通体制の整備を進めるなど、地産地消を図るためにも、地域材の利用促進がますます重要と考えています。

    管内の森林・林業・林産業の課題解決に向けて

    今後は、管内の森林資源を持続可能な地域資源とし、森林施業に伴う木材の流通のあり方や地域材として木材利用の拡大を進めていくことが、地域経済の活性化につながると考えます。
    また、間伐・主伐、造林が必要な森林が増えており、林業の生産性・収益性の向上はもとより、労働安全管理の観点からも伐採・更新等作業の省力化や低コスト化等が急務となっています。
    さらに、管内における林業・木材産業の担い手の育成と確保を図っていくため、学生のインターンシップや高校生に対し、森林・林業に対する理解を深めてもらうことを目的として、講義やセミナーなどを行っており、将来の職業の
    選択肢として林業・林産業等が卒業後の進路候補としてもらえる様に関心を高めるための取組を積極的に実施しています。

    インターンシップにおいて伐倒の際の安全確認をしているところ      インターンシップにおいて林業機械の説明を受けているところ
     インターンシップにおいて伐倒の際の安全確認をしているところ              インターンシップにおいて林業機械の説明を受けているところ

    課題解決に向けた取組の内容

    地域特有の課題として、離島における森林整備をどの様に進めていくか検討を進めています。
    離島における森林の活用についての検討は平成30年度公益財団法人日本環境協会から交付された環境省間接補助事業である二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業)を活用して利尻町木質バイオマスエネルギー導入協議会を設置し、協議会を開催するなか、木質バイオマス利用に伴う地域課題と併せて町のCO2削減対策の取組等を検討しましたがビジネスモデルを構築するまでには到達することは出来ませんでした。
    令和元年10月に、利尻富士町、利尻町、林業事業体、素材生産事業者・木材加工事業者、宗谷森林管理署、宗谷総合振興局林務課・森林室職員の合計19名による現地検討会を開催しました。島内には、森林整備を行う林業事業体がないことに加え、製材及び木材加工を行う工場も無いことから、ほとんど森林整備が進んでいない状況となっており、より具体的な木材利用の事業化に向けた検討を進めるため、現地検討会では宗谷管内で造材事業を行っている林業事業体に参加いただき、間伐対象林分や港湾の貯木場所の候補地などの視察を行いながら、島内における森林整備や木材利用について意見交換を行いました。
    意見交換では、海上輸送に要する経費などが課題であったことから、今後は経費負担を軽減するための方策について検討することとし、国・道・町・林業事業体が連携を図りながら、利尻島における森林整備の推進と人工林資源の有効活用に向けた取組を進めていきます。
    令和2年度は間伐対象林分の現地調査(ドローン撮影)を実施するとともに国有林側から立木販売と素材生産(請負)のコスト試算等をお示ししながら検討を重ねました。
    なお、令和3年度は新型コロナウィルス感染拡大防止のため、会議等を行うことができず、議論を進めることが出来なかったことから、関係機関との間では次年度以降においても継続事案として引き続き取り組んでいくことを確認するだけに留まったところです。

    間伐対象林を上空から撮影(利尻島)      署長と林務課長で打合せをしている様子
                            間伐対象林を上空から撮影(利尻島)                                                     署長と林務課長で打合せをしている様子

    課題解決に向けた取組の成果・今後の課題

    これまで課題解決に向け関係機関等と取組を行い、さまざまな視点から検討を行いましたが課題解決の活路が見いだせない状況となっています。
    今後、適切な施業方法の普及定着は当然のこととして、大きな課題となる海上輸送の経費またはその支援方法、港湾施設等及び木材の販路確保に関する検討を行うとともに、さらに島内の地産地消を図るためにも島民に木材利用拡大等の普及啓発を進めて、地元の材を活用していただくことを視野に入れた取組を行う必要もあると考えております。

    国有林フォレスターとしての思い

    国有林野における森林総合監理士等による市町村行政への支援については、これまで北海道との連携・協力の下、市町村森林整備計画実行管理推進チーム会議をはじめ市町村林政連絡会議、宗谷地域林政連絡会議、国有林野等所在市町村長有志協議会などを通じて市町村のニーズ等を把握するともに出された課題を受け止めて、積極的かつ効率的・効果的に取組を進めています。

    宗谷地域林政連絡会議の様子      利尻町林政連絡会議の様子
                                 宗谷地域林政連絡会議の様子                                                                  利尻町林政連絡会議の様子

    併せて宗谷管内1市8町1村において平成30年12月に策定された国有林野の管理経営に関する基本計画を踏まえ、森林経営管理法や森林環境譲与税が円滑かつ有効に活用されるよう市町村行政の支援に積極的に取り組んでいるところであり、国有林フォレスターの役割が以前に増して重要になってきております。
    当署では、署長をはじめ、森林技術指導官が中心となって実施する民有林支援等を確実なものとするため、署内関係職員による民有林支援サポートチームを設置するなど署一丸となり、地域課題の解決を目指し取り組みを進めています。
    最後に宗谷管内各地域では森林・林業を巡る様々な課題に直面しております。そのため、各自治体や関係機関などの会議の場を通じ、情報交換を行いながら地域の課題などを拾い上げ、その課題解決に向けて、宗谷総合振興局林務課・森林室、各市町村、森林組合、林業事業体等とのネットワークを形成し連携して積極的かつ効率的・効果的に取組みを進めていくことが重要だと考えています。
    今後もこれらの山積する地域課題の解決に向けて、その課題に国有林としてどのようにすれば民有林への協力・支援ができるかを考え、各地域の森林・林業・林産業の発展のために活動して行きたいと考えています。

    お問合せ先

    宗谷森林管理署

    ダイヤルイン:050 - 3160 - 5740