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北海道森林管理局

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    積丹地域における民有林との共同施業とストックヤードを活用した合同販売の取組

     
                                                                                                                                                                                                                                  石狩森林管理署                 
    地域林政調整官  久慈  正志
    森林技術指導官  中鍵  貴之


    取組の背景と目的

    積丹(しゃこたん)地域の森林は、民有林は所有者毎の森林面積の規模が小さいこと、また、国有林は奥地にあり木材の搬出距離が長いことなどから、森林整備の作業効率を上げにくく、高コストとなるため、伐採した木材を販売する「活用型の森林整備」が進めにくいという問題がありました。
    このため、これらに関わる諸課題を解決し、この地域における森林整備を推進するために、平成20年度に積丹町、国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林整備センター 北海道水源林整備事務所、石狩森林管理署の3者において「積丹地域森林整備推進協定」(5年更新)を締結し、民有林・国有林が連携した取組を行っています。

    日本海から積丹岳山麓の共同施業団地を臨む
               日本海から積丹岳山麓の共同施業団地を臨む

    積丹地域における森林の概要

    この取組の舞台である積丹町は札幌市から南西へ約80km、日本海に突き出した積丹半島にある人口約2,200人の町です。同町の森林面積は約2万ha、その森林率は83%に上ります。これらの森林は積丹岳を頂上とし、保護水面である余別川をはじめとする町内を流れる河川の上流部にあり、豊かな海と地域の生活を守る大切な水源となっています。

    積丹地域森林整備推進協定の概要

    1.協定の目的

    この協定は、安全で豊かな水の供給を図り、適切な森林整備を推進するため、森林資源の循環利用の促進等について、森林共同施業団地を設定し、森林整備の方法、事業に必要な作業路網の設置及び維持運営に関する事項などを定め、民有林と国有林が一体となって森林整備を推進することを目的として平成20年度に締結したもので、5年毎の更新を経て、現在3期目となっています。

    間伐が進む共同施業団地
                               間伐が進む共同施業団地

    2.協定3者の概要

    ・積丹町
    森林面積は約2万haで森林率は83%を占めています。そのうち民有林面積は約4,700haあり、その36%、約1,700haが町有林となっています。

    ・北海道水源林整備事務所
    土地所有者との「分収造林契約」による水源林造成を行っており、積丹町では3団地約700haで事業を実施しています。

    ・石狩森林管理署
    札幌市とその周辺を囲む14市町村に広がる約21haの国有林野を管理経営する国の機関であり、積丹町における国有林の面積は約15,000ha、これは同町の森林面積の76%を占めています。

    3.森林整備推進協定のこれまでの歩み(協定1~2期)

    本協定では国有林と町有林が隣接する町内の婦美六、婦美丸山、余別の3地区に、(ア)協力して森林整備を進めるための「団地」を設定し、協定3者の事業地に一定のまとまりを持たせること、(イ)森林整備に活用する林道などの作業路網を共同で整備し、その相互利用等を行うことなどにより、作業の効率化とコストダウンを図ってきました。

    森林整備推進協定 第3期の取組

    平成30年4月1日~令和5年3月31日までの第3期、5年間の協定期間には、3団地の中で木材市場より最も遠方にある等、条件が不利な「余別団地」で重点的な取組を進めています。
    この団地内には積丹町有林及びその中にある北海道水源林整備事務所による分収造林地での間伐、国有林では主伐及び間伐の適期林分があることから、ここで伐採木を丸太として販売する「製品生産事業」を共同で行い、効率化とコストダウンを図ること、生産された丸太については合同で公売を行うことで有利な販売となるよう、次のような取組を実施しました。

    1.積丹町役場の林務担当職員への技術支援

    事業を始めるにあたり、同町では林務担当職員の経験が浅く、製品生産事業はもとより、間伐の施業方法や森林作業道の配置の検討に必要となる森林調査についても行ったことがない状況でした。
    そこで、民有林行政を司る後志総合振興局林務課、林業普及指導事業を行っている同森林室、同町有林で分収造林事業を行っている北海道水源林整備事務所、当署の4者で協力し、技術支援として各種調査やその結果をもっての施業方法等の決定、そして事業発注までのサポートを行いました。

    共同施業を進めるにあたっての現地打ち合わせ
      
                 共同施業を進めるにあたっての現地打ち合わせ

    2.町有林と国有林の森林整備を「一体的事業」として民国共同での一般競争入札

    本事業は木を立木のまま販売する「立木販売」よりも付加価値をつけた販売が可能となる「製品生産事業」として行うこととしました。しかし、積丹地域には林業事業体がなく、また主要な事業体がある地域からも遠距離であることから、競争入札による請負事業を行おうとしても、そもそも応札者がいない、あったとしても、複数事業体による競争は難しく、高コストになりがちであるという問題がありました。特に国有林と比べて、小規模な事業面積となる町有林及びその分収造林地においてはその影響は顕著であり、町単独での事業はその実施すら困難であると考えられる状況がありました。

    そこで事業体の入札参加意欲が高まるように、町有林及び分収造林地と国有林の事業地を一体的な事業団地として集約し、伐採面積を大きくすることで、林業事業体が一定期間、他の事業地へ移動することなく効率的に作業が行える「1つの物件」(以下=共同事業)とし、民国共同の一般競争入札を行うことにしました。

    3.共同土場「ストックヤード」の整備

    積丹地域は木材市場から遠く、輸送費がかかり増しとなることなどから、木を伐採してもその販売が難しいという問題がありました。 これまでに行ってきた林業事業体を交えた現地検討会の中でも、この地域自体が遠隔地であるのに加え、丸太が積まれているのが険しい林道を何キロも山奥へ入った「山土場」であっては、その購入は難しいという意見が聞かれており、有利販売を進めるためにはこの解決が必要でした。

    そこで、このアクセスの改善のため国道229号から分岐する、同町大字野塚町の集落にほど近い舗装道路沿いにある原野に「里土場」として共同土場「ストックヤード」(4.8ha)を新設しました。
    構内は狭い森林内にある山土場ではなく、広大な土地にある里土場ならではの余裕をもった作業ができる区画割とし、また大型トラックよりも輸送効率が良い「大型トレーラー」が進入し、丸太の積み込みができる規格の周回路も作設しました。

    上空から見たストックヤード
                             上空から見たストックヤード

    4.民有林材と国有林材の合同販売

    比較的少量な町有林と分収林からの木材だけでは買い手がつきにくいことから、国有林材と合同で販売することとして大ロット化を図り、取扱量、集容量の大きい「国有林素材公売」での競争入札による販売を実施しました。

    ストックヤードに搬入された間伐材
                          ストックヤードに搬入された間伐材

    ストックヤードから丸太を搬出する大型トレーラー
                 ストックヤードから丸太を搬出する大型トレーラー

    取組結果

    1.製品生産事業の共同入札の実施

    3者の森林整備事業を「1つの物件」とする初の試みとして、令和2年度に3回の一般競争入札を公告しましたが、残念ながら落札者がありませんでした。
    このため、3者で今後の対応を検討し、町と北海道水源林整備事務所については入札参加者と随意契約を締結、当署は単独の物件として令和3年5月に一般競争入札を実施し、落札者と契約を締結しました。
    この落札者は町及び北海道水源林整備事務所と契約した事業体と同じ者であったことから、共同入札としてはうまくいかなかったものの、結果的にひとつの事業体によって実施することとなりました。

    間伐材の搬出作業
                                間伐材の搬出作業

    2.素材の合同販売の実施

    素材販売は積丹町、北海道水源林整備事務所が単独で行うのではなく、北海道木材産業共同組合の協力により、当署が出品する国有林素材公売で同日に行いました。この公売には多くの買受業者の参加があり、町有林材、分収林材及び国有林材(令和3年度販売予定分)の全量を販売することができました。
    また、その中には積丹町から約500km離れた道東地方の買受業者もおり、立地条件が良く、輸送効率の良い大型トレーラーが進入できるストックヤードの整備による効果であると考えています。

    ストックヤードに搬入され販売を待つ丸太
                       ストックヤードに搬入され販売を待つ丸太

    取組結果から得られたもの

    今回の取組では民有林、国有林に次のようなメリットがありました。

    (1)民国の事業を同一の林業事業体が請負うことになり、効率的な作業ができた。

    (2)販売の見込みがなく当初「切り捨て」として計画されていた町有林、分収林の間伐材が有価で販売できた。

    (3)民有林所有者が木材収入を得たという成功体験から、積丹地域における利用間伐が推進しやすくなった。

    (4)ストックヤードの活用によって国有林材の販路が広がるなど有利な販売ができた。

    協定3者ではこれまでに路網の共同整備・利用、ストックヤード整備を進め、令和3年度はついに合同販売による協調出荷を実現することができました。
    需要地から遠く、比較的小規模な町有林の木材も、国有林材と合同で公売にかけ、大ロット化することで有利販売につなげられたことから、令和5年度から始まる協定第4期はこれらの取組をさらに発展させるとともに、周辺地域にも普及を図って行くことができればと考えています。

    このほかの取組

    当署では今回紹介した積丹地区の取組のほか次のような民有林支援を行っています。

    1.「石狩市森林整備推進協定」に基づく取組

    石狩市・石狩市森林組合・石狩森林管理署の3者で、積丹地域と同様な取組を進めています。

    共同施業により民有林と国有林の木材が集積された「浜益ストックヤード」
    共同施業により民有林と国有林の木材が集積された「浜益ストックヤード」

    2.赤井川村の森林整備計画の策定支援

    赤井川村では令和4年度が森林整備計画の樹立作業時期となっていることから、当署の支援チームによる技術的な支援を行っています。

    赤井川村林務担当者と施業方法の打ち合わせ
            赤井川村林務担当者と施業方法の打ち合わせ

    3. 札幌市の森林経営管理制度に基づく、私有林の経営管理権集積計画の策定支援

    札幌市では、森林経営管理制度に基づき、経営管理が行われていない私有林の所有者から委託を受け、林業経営に適した森林は地域の林業経営者に再委託するとともに、林業経営に適さない森林は市が公的に管理するための「経営管理権集積計画」の策定を行っており、当署では支援チームによる技術的な支援を行っています。

    ドローンを活用した調査への協力
                 ドローンを活用した森林調査への協力

    おわりに

    当署では、民有林への技術的な支援を、地域林政調整官、森林技術指導官、様々な技術をもった各種森林整備事業等の担当者、国有林の現場最前線での管理を行っている森林官等によるチームで取り組んでいます。今後も職員一丸となって、民有林の皆様と連携し、より良い森林づくりに取り組んでいきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いします。

    久慈地域林政調整官(左)・中鍵森林技術指導官(右)
               久慈地域林政調整官(左)・ 中鍵森林技術指導官(右)

    お問合せ先

    石狩森林管理署

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