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北海道森林管理局

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    上川南部地域における森林・林業の再生に向けた取組

     今野森林指導官顔写真  


     
     
    上川南部森林管理署   
    森林技術指導官 今野 智之   


    管内の概要

    上川南部森林管理署は、北海道のほぼ中央に位置し、石狩山地、夕張山地および日高山脈に接する広大な山岳地域を管轄しています。水系は空知川と鵡川に分かれており、それぞれの源流部となっています。
    管内の国有林は、富良野市、上富良野町、南富良野町、占冠村の121村に広がっており、面積は115千ヘクタールで、管内市町村の53%を国有林が占めています。
    十勝岳、芦別岳、夕張岳などの雄大な山々が多く、十勝岳周辺は大雪山国立公園に指定されています。また、エゾマツ・トドマツをはじめとする多様な森林群落が分布していることから、「保護林」1や「緑の回廊」2を設定して自然環境や生態系保全に努めています。
    一方、観光資源としては、北海道の絶景の一つとされている広大なラベンダー畑などの景観や、国有林の「レクリエーションの森」にも設定されている富良野スキー場、石勝高原トマムスキー場などもあり、四季を通じ多くの観光客が訪れます。

    ホロカメットク山       
             十勝岳連峰に属する上ホロカメットク山、下ホロカメットク山
                                                            
    tomita
                                  富田ファーム(中富良野町)

    1原生的な天然林などを保護・管理することにより、森林生態系からなる自然環境の維持、野生生物の保護、遺伝資源の保護、森林施業・管理技術の発展、学術の研究等に資することを目的としている国有林野。
    2保護林と保護林をつなぐことにより、いろいろな野生動植物が自由に行き来できる生活の場を広げるなど、貴重な森林生態系を守るために作られた空間(通り道)。


    木質バイオマスの安定供給に関する取組

    平成25年に上川総合振興局と上川管内に所在する6森林管理署等により「上川地域林政連絡会議」を設置し、当地域における森林・林業・木材産業に関する情報・意見交換や課題解決に向けた取組を進めています。
    上川地域の重点課題の一つとして木質バイオマスの安定供給があります。
    上川総合振興局による「木質バイオマス利用に係る基本方針」の策定や「上川管内木質バイオマス安定供給協議会」の設置を背景に、上川南部森林室富良野事務所とも連携し、「木質バイオマスの原料収集の効率化と安定供給」を当署の取り組む地域課題の一つと位置付け、これまでシンポジウムや現地説明会の開催などの取組を進めているところです。
    木質バイオマスの安定供給を図る上で課題となっている、林地未利用材の効率的な集荷方法を検証するため、平成29年度から南富良野町森林組合が所有する「木質バイオマス対応型フォワーダ※3」の有効活用について調査を行いました。
    その結果、積込・運搬・荷下ろしをバイオマス対応フォワーダで行うパターンAが、最も効率が良いとの調査結果(表1)となり、事業ベースで成り立つ可能性が示されました。


    バイオマス対応型フォワーダ     
                                                                             (表1)

    バイオマス対応型フォワーダ写真
                        バイオマス対応型フォワーダ

    また、今年度は、国有林施業地(列状間伐実施個所)からチップ工場までの運搬効率化に向け、南富良野町森林組合の協力を得て同組合が所有する「自走式木材破砕機」を使用し、現地で未木枝条※4をチップ化しました。その結果、末木枝条の容積はほぼ半減し、運搬コストの縮減が図られました。

    チップ化の様子
                    末木枝条をチップ化すると容積が半減

    ※3:森林作業において、大量に排出される枝葉・端材・伐捨て材などの林地残材を有効活用するために開発された積載式集材作業車。
    ※4:木の先端部や枝等。

     

    天然更新の活用に向けた取組

    国道38号線の三の山峠を下った近くの幾寅国有林に、北海道森林管理局森林技術・支援センター(以下、「センター」という。)と国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 北海道支所が共同で設定した試験地があります。
    ここでは、平成27年度から30年度まで、天然更新を活用した作業方法とその効果の検証が行われており、人為的にカラマツの天然更新が成功した珍しい事例として、他の研究機関などからも注目されています。
    現在はセンターが定期的に経過観察等をしていることから、センターと連携し、昨年度に続いて試験地説明会を開催し、野ねずみや暗色雪腐病5の被害防止、下刈作業の省略、天然更新補助作業についての説明や主伐後の天然更新に係る情報提供を行いました。

    現地検討会
    トドマツ人工林主伐後の天然更新補助作業試験地説明会(R3.9.17

    5:苗木の病弱な部分,地際の衰弱した老葉,損傷部分などから発病する。灰白色のフェルト状あるいはクモの巣状の菌糸がまとわりつき,その部分が腐敗・枯死する。

    森林整備推進協定による取組

    令和元年7月、占冠地域の森林・林業の再生及び地域振興のため、占冠村と「占冠地域森林整備推進協定」を締結しました。

    占冠村長と当署署長
                                 占冠村長と当署署長(当時)

    これに基づいて、村有地に当署が整備した共同土場を核として「持続可能な森林整備」や「村内事業体の育成」を図るための勉強会等を開催しています。
    また、村内の小学生に地元産業の一つである林業の魅力を知ってもらうため、森林内や共同土場で森林教室を開催し、子供達の中から将来の担い手が現れることを期待しているところです。
    森林整備推進協定は南富良野町とも締結しており、今後も地域の森林・林業再生のための取組を進めていくこととしています。   

    国有林フォレスターとして

    国有林野事業は、平成254月に一般会計に移行し、「森林・林業再生への貢献」に取り組むこととされ、これまで道内各地において試験地の設定や施業に係る現地説明会等が開催されてきました。
    設定当初は取組の紹介が主なものでしたが、木質バイオマスの安定供給や、天然更新の活用といった、取組の成果が出てきています。
    近年は、造林作業の省力化・低コスト化への関心も高まっており、国有林に設定した試験地で現地説明会を開催し、主に市町村森林整備計画実行管理推進チーム会議※6の構成員に情報提供しています。

    南富良野長森林整備計画実行管理推進チーム 
           南富良野町の森林整備計画実行管理推進チーム会議

    今年度、当署においては新型コロナウイルス感染防止対策を徹底しながら、これまでに設定してきた試験地において、造林作業の省力化・低コスト化をテーマに2回、林地未利用材収集の効率化・安定化をテーマに1回、計3回の現地説明会を開催し、延べ48名の民有林関係者に参加していただきました。
    今後、これらの取組結果を整理してチーム会議などで報告するとともに、チーム構成員のご意見などを踏まえながら、引き続き、地域の課題解決に向けた取組を進めていきたいと考えています。

     ※6:市町村、北海道、森林管理局、フォレスター、森林施業プランナー、森林組合等を持って構成され、実効性のある計画を作成するとともに、計画の検証、評価を行なう。

    お問合せ先

    上川南部森林管理署

    ダイヤルイン:050-3160-5750