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北海道森林管理局

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    厚真町における民有林支援の取組


    胆振東部森林管理署
    森林技術指導官  中山  雅裕

    厚真町における民有林支援の取組

      胆振東部森林管理署(以下、当署という。)の管轄する区域には5つの市町があります。民有林支援にあたっては、市町村森林整備計画実行管理推進チーム会議などの機会を通じて、各市町の要望を把握しながら進めています。厚真町では、北海道胆振東部地震で、約3200ヘクタールの森林被害を受け、その復興が急務になっている状況と同時に、森林経営管理制度の運用等による森林整備も重要な課題となっています。今回は、厚真町における民有林支援の取組として、1.「森林経営管理制度」を踏まえた森林現況把握と、2.カラマツ人工林内の広葉樹の育成について紹介します。

    1.「森林経営管理制度」を踏まえた森林現況把握

      平成31年4月から「森林経営管理制度(森林経営管理法)」が施行されました。
    法案の概要として

    1.森林所有者の明確化
    2.森林の経営管理の仕組み
    3.所有者不明森林に係る措置

    が示されました。

      このことから、市町村は人工的に作業(伐採・植栽)を行った森林の所有者に対し意向調査を行い、経営管理権の設定の申し出があった森林について、林業経営に適した森林と自然的条件に照らして林業経営に適さない森林に分けて管理していくこととなりました。



    出典:農林水産省Webサイト(https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/keieikanri/attach/pdf/sinrinkeieikanriseido-24.pdf

    出典:農林水産省Webサイト(https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/keieikanri/attach/pdf/sinrinkeieikanriseido-24.pdf

    (1)現状と課題

      厚真町における「森林経営管理制度」の運用についての取組は、森林所有者への意向調査対象森林の設定を進めている段階です。

      (ア)不在村の森林所有者などもいて自身の森林の現状を知らない人がいる。(イ)一部の森林所有者には森林施業(間伐等)の必要性が認識されていない。(ウ)厚真町が森林施業の必要性が認識されていない一部の森林所有者へ知るための手伝いをする必要がある。(エ)そのためには、厚真町は森林の現況把握が必須であり、広大な町内民有林の調査に大きな労力が必要となっています。

    (2)課題に対する取組

      厚真町からは、森林の現況把握について、効率的な調査方法がないかとの相談があり、署としてプロジェクトチームを発足して体制を固め、厚真町への支援を進めることとしました。

      (ア)森林所有者が多数存在する厚真町の私有林においては、個々の所有者への森林現況の説明が必要です。(イ)また、間伐等の実施を推進するイメージ(集約化・共同施業等)を掴んでもらうための説明も必要です。

      (ウ)そこで、調査対象とした森林の座標情報を取り込みドローンで撮影しました。(エ)撮影した写真により大まかな森林の現況把握ができることを町担当者に理解してもらいました。厚真町が行う経営管理が行なわれていない森林の所有者に対する森林の状況説明に利用できることがわかり、森林所有者への意向調査対象森林の設定の足がかりとなりました。


      
                  ドローンの操作の様子                            ドローンによる撮影写真   

                                           

    2.カラマツ人工林内の広葉樹の育成

    (1)現状と課題

      厚真町有林には、カラマツの成育不良な人工林内に、天然更新(※1)により発生したミズナラ・コナラ等の中小経木が混交している森林が、多数点在しています。厚真町の意向は、この人工林をシイタケ原木(ミズナラ・コナラ)の供給地にできないかというもので、そのための技術支援について相談がありました。


    (※1)天然更新・・・木の種が自然に落ち、芽生え育つものや、木の根株から芽が出て育つもの等、人の手をかけずに次の世代の樹木が育つことをいう。


         ミズナラ・コナラを主とする林          


    (2)課題に対する取組

      ミズナラ・コナラの林分は、萌芽更新(※2)によって、低コストかつ効率的な森林整備が可能となり得ます。道内の国有林では、近年シイタケ原木の生産を実施していないことから、過去の文献調査や、研究機関への照会等を基に、当署としては萌芽更新による手法として、試験的に林道の隣接地に小面積の皆伐を行い、伐採後に伐採径級(木材の太さ)、伐根高(伐採した後に残る切り株の高さ)、光環境及び本数調整(3~5本程度残す)の調査を行っていくことを提案しました。また、伐採後の調査についても支援していく予定です。

    (※2)萌芽更新・・・材木を伐採した後の根株から発生した萌芽を成長させる方法。

    3.国有林フォレスターとして

      今回、厚真町の要望に寄り添って、署のプロジェクトメンバーとともに支援させていただきました。当署管内の各市町の森林・林業がかかえる課題は、震災復興、林業労働力の確保、森林整備に係る作業の効率化・軽労化など多岐にわたるとともに、一朝一夕に解決できるものではありません。しかし、国有林フォレスターとして、振興局・森林室とともに地域の林業関係者に明るい未来が見えてくるよう、取り組んでいきたいと考えています。


    お問合せ先

    胆振東部森林管理署

    ダイヤルイン:0144-82-2161