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北海道森林管理局

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    西紋地区の林業課題解決に向けた取組

    西紋地区の概要

      網走西部森林管理署西紋別支署は北海道オホーツク総合振興局管内西部の網走西部流域北西部、紋別市・滝上町・興部町・雄武町・西興部村の1市3町1村を有する西紋地区にあります。西紋地区の森林率は約81%と高く、森林面積は約8.4万ha、民有林は約15.1万haとなっています。

    芝ざくら滝上公園(滝上町)

    低密度植栽試験の取組

      地域林業の課題として挙げられることの1つに労働力不足があります。人工林が主伐期を迎え、今後伐採・再造林の事業量が増加することが想定されていますが、特に植付や下刈作業は機械化が難しいため人手に頼る部分が多く、また夏場の炎天下での作業が多いことから身体に大きな負担がかかります。このことは若い労働力が集まらない一因となり、林業労働者の高齢化や人員不足につながります。ほかにも、造林量の急な増加に苗木の生産が追いつかないことによる苗木の供給不足も課題となります。
      当支署では、このような中で造林を実施していくための手法として、低密度植栽を考えました。低密度植栽は苗木の植栽密度を通常よりも減らすことにより、作業の労力を減らし、かつコスト削減につながると期待されます。そこで低密度植栽の有効性を検証し普及につなげるため、低密度植栽試験を実施し、作業工程やその後の生育などの調査を行うこととしました。

    調査地の空撮

      平成28年春、伐採跡地約11haにトドマツを造林する際に低密度植栽試験を行うための試験地を設定しました。この地域で通常実施されている苗木の植栽密度である2000本/haを基準にして、苗木の植付間隔、残幅を変え、1000本/ha、1500本/ha、1650本/haに減らした調査プロットを設定しました。これに加えて、2000本/haのプロットには苗木の種類による違いを調査するため、通常の裸苗のほか、初期生長がよく、活着率が高いと言われているコンテナ苗の1号・2号と3種類の苗木を使用した調査プロットも設定しました。コンテナ苗1号は苗高約25cm、2号は同約20cmでサイズによる違いを調査します。(下図  試験地の概要図)


    調査プロット※画像をクリックすると別ウィンドウで開きます。

    試験地の概要図※クリックすると別ウィンドウで開きます。

      各プロットでは以下の4つの調査を実施しています。
    1. 植付功程調査:植付にかかる作業時間を計測
    2. 下刈功程調査:下刈にかかる作業時間を計測
    3. 生長量比較調査:苗木の根元の直径、苗木の高さを各100本計測
    4. 広葉樹発生状況調査:残幅の違いによる広葉樹の発生状況を調査
    1.植付功程調査
      植付時に作業時間を計測したところ、2000本/haの箇所と比較して1000本/haの箇所は作業時間が約4割に短縮できましたが、植付本数が少ない1500本/ha、1650本/haの箇所は逆に時間がかかり、功程が下がりました。この原因としては苗木の植付間隔が通常と異なるため不規則な間隔に作業員が慣れていなかったということが考えられます。作業に慣れることにより功程が上がるのか、今後検証していく必要があります。

    植付作業時間を比較※画像をクリックすると別ウィンドウで開きます。

    2.下刈功程調査
      下刈の作業時間を計測し功程を比較します。
      平成29年6月と7月に下刈を行った時の作業時間を計測しました。2000本/haの箇所と比較して1500本/ha、1650本/haの箇所は作業時間が短縮になりましたが、1000本/haの箇所は逆に時間がかかるという結果になりました。この原因として1650本/haは残幅が4mと広く、下刈する面積が狭いため、時間短縮につながったと考えられます。1000本/haは苗木の間隔が2.8mと広いため、苗木を見つけるのに手間取ったことが考えられます。

    下刈作業時間を比較※画像をクリックすると別ウィンドウで開きます。

     3.生長量比較調査
      植付後、毎年秋に苗木の根元径と苗高を調査しています。植栽密度による生長の差は見られませんが、前年からの生長率は特に1号コンテナ苗が高くなっています。ただ、残念ながら植付時の天候に恵まれなかったためか、裸苗の活着率が低く、枯死した苗木も多いため平成30年に補植を行いました。将来的には枝張りによる材質低下や風雪による倒伏など植栽密度の違いによる生育への影響を調査していくことを考えています。

    生長量比較調査※画像をクリックすると別ウィンドウで開きます。


      地拵の残幅に広葉樹が生育することにより、生物多様性保全が期待できる針広混交林への移行、広葉樹資源の育成という利点が考えられます。そのため、残幅の違うプロットを設定して広葉樹の発生状況を調査しています。設定後3年経ちますが、植付時から生えていた広葉樹の伸びが見られます。今後経過を観察し、将来的に広葉樹の資源量や広葉樹との競合による植栽木の生育への影響、除伐などの施業コストへの影響を調査し、広葉樹資源の確保について検証していくことを考えています。

    広葉樹発生状況調査

    林業成長産業化地域創出モデル事業への協力

      網走西部流域は、平成18年から、環境に配慮した森林の持続可能な循環利用による地域材のブランド化を目指し、網走西部流域森林・林業活性化協議会(以下、協議会)を中心に地域が一体となって、「緑の循環認証会議(SGEC)」による森林認証の取得を進め、流域の森林のうち約85%が認証森林となった日本有数の森林認証地帯です。森林認証は環境に配慮して生産された木材であることの証明であるため、環境意識の高い企業やエシカルコンシューマーなどにより、認証材が優先的に活用されることが期待されます。

      平成29年には、森林認証を活かしたオホーツク産材のブランド化、安定供給体制の構築による林業・林産業の成長産業化を目指す「ウッドバリューチェーンの構築」という地域構想が林野庁の「林業成長産業化地域創出モデル事業」に選定されました。地域の林業関係者が連携して、森林資源の付加価値化や人材の育成など様々な取り組みを実施しています。

      当支署では上記のモデル事業の取組の中のワ-キンググル-プ 1 「付加価値を高めた製材・製品の販売促進」、2 「林業の新たな価値創造を担う人材の育成」、3 「森林資源の付加価値化に向けた原木集荷・供給システム」にそれぞれ参画し、フィールドの提供など国有林としてできることを協力しています。
     
      平成30年12月、協議会主催により、当支署が滝上町と連携して整備・使用している共同土場で、森林組合の施業プランナー等を対象にした広葉樹丸太の品等格付勉強会が実施されました。民有林では広葉樹丸太を目にする機会が少ないため、広葉樹丸太の価値が判断できず、低く見られることがあります。そのため、国有林の事業で生産した広葉樹丸太を共同土場に並べ、一般社団法人  北海道林産物検査会の方を講師として、素材の日本農林規格による節や曲がり、腐れなどの欠点の見方と品等の付け方を学びました。品等を学ぶことで広葉樹丸太をしっかり評価し、より高く販売することができるようになれば、収益の増加につなげることができます。


    広葉樹品等格付勉強会

      また、平成30年3月と平成31年3月に協議会主催で、林業のICT(情報通信技術)活用を進めるため、ICT技術者と地域の林業関係者を繋ぎ、林業ICT化に向けたアイデア出しを行うワークショップが開催されました。当支署から若手職員が参加し、グループワークの中で若い発想力を発揮し、アイデアを出し合いました。平成30年のワークショップの中で出されたアイデアの1つは現在実用化に向けて進められています。


    モデル事業ワークショップ

     地域への情報発信

      当支署での取組を地域の皆様にお伝えするため、平成30年4月から「にしもん森林(もり)だより」という情報紙を発行し、管内市町村や森林組合などに配布しています。国有林で様々な取組を実施しても地域にその情報がうまく伝わらなければ普及に繋がりません。そこで、より積極的な情報発信への取組として情報紙を作成することとしました。これまでに9回発行し、地域課題解決に向けた取組を中心に、上記の低密度植栽試験地調査や森林認証モニタリング調査の結果などについてお知らせしています。

    「にしもん森林(もり)だより」はこちらからご覧になれます。

      また、地域の意見を取り入れてよりよい記事にしていくため、配布先に対してどんなことが知りたいのか、役に立っているか、紙面に対する要望などアンケート調査を行いました。その結果、森林調査手法や伐採・造林一貫作業システムなどに関心が高いことが分かり、また「絵や写真を多くして分かりやすくしてほしい」、「森林資源の把握方法を教えてほしい」など多くの貴重なご意見が寄せられ、紙面に活用しています。
    今後も地域の意見を取り入れながら、更なる紙面の充実を目指し、積極的な情報発信に努めていきます。

    役立ち度に関するアンケート調査結果※画像をクリックすると別ウィンドウで開きます。
     
    知りたい情報に関するアンケート調査※画像をクリックすると別ウィンドウで開きます。 

      今後も地域の意見を取り入れながら、更なる紙面の充実を目指し、積極的な情報発信に努めていきます。

    滝上みどりの森林推進協議会での取組

      平成23年に滝上町・滝上町森林組合・滝上林業協同組合と当支署は、森林の持続的利用を通じて人と森林との関わりを育み、元気な森林を次世代に繋ぐことを目的に、「滝上みどりの森林(もり)推進協議会」を設立しました。この協議会の主な活動の一つとして滝上小学校6年生・濁川小学校3~6年生の児童に体験活動を通じて森林のことを学んでもらう森林環境教育があります。各組織が連携・協力しながらプログラムを作成し、子どもたちが楽しく学びながら自然のことや林業に関心を持ってもらえるように、森林内でのネイチャーゲームや滝上町郷土館での林業の歴史学習、間伐など林業現場の見学などを実施しています。

     
    森林環境教育の実施内容についてはこちらからご覧になれます。

    オホーツクフォレスターズコミュニケーション

      オホーツク総合振興局管内の森林総合監理士(フォレスター)有資格者が国・道・市町村などの組織の垣根を越えて連携・協力を進め、地域林業の課題解決に取り組むため、平成28年にオホーツクフォレスターズコミュニケーション(OFC)を設立しました。(令和元年6月現在 市町村職員1名、道職員5名、国有林職員6名の計12名)

      平成30年1月にはOFC初の主催で、北見芸術文化ホールにおいて未来の森林づくりや林業振興による地域活性化策等を地域住民の皆さまと共に考えることを目的に「地域活性化研修会~オホーツク地域における未来の森林づくりに向けて~」を開催しました。この研修会では地域林業の抱える様々な課題を再認識し、他の地域で実践されている活動を伺うことにより、課題解決に向けた一考とすることができました。

      今後も林業技術向上のための勉強会等を実施し、フォレスターとしての資質を高めるため相互連携を進め、研鑽に努めていきます。

     
    OFC総会

    国有林フォレスターとして

      フォレスターとしてはまだまだ未熟で分からないことも多々ありますが、今後も各市町村や森林室など地域との連携や協力を大切にし、地域の皆様の意見を聞きながら、地域の課題解決に向けて取組を進めていきます。地域からの要望を一つ一つ拾い上げ、国有林としてできることは何でもやるという気持ちで、少しでもお役に立てるように、また、地域の生活基盤である森林の整備が進み、多面的機能の発揮に繋がるようにこれからも活動していきます。

    ドローンを操作する筆者(写真中央)

    網走西部森林管理署西紋別支署
    主任森林整備官 小林 和史

    お問合せ先

    網走西部森林管理署西紋別支署

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