ホーム > 森林管理局の案内 > 森林管理局の概要 > 管内各センターのご紹介 > 釧路湿原森林ふれあい推進センター > 業務内容 > 釧路湿原自然再生協議会 森林再生小委員会 > 第9回森林再生小委員会 議事要旨
「第9回森林再生小委員会」が平成21年 10月29日(木曜日)に釧路地方合同庁舎において開催されました。
達古武地域の事業地において、事務局の説明を受けながら現地を視察し、その後意見交換が行われた。
(事務局)
本事業地では、森林生態系の回復を目標として、カラマツの人工林から自然林への再生を行っている。これまでの試験結果を基に、現在残っている広葉樹の稚樹の定着を促すため、昨年度から地表面の処理方法としてササ刈りやかき起こしを行っている。種子が届かない場所には周辺地域内で採れた種子を育苗して植栽を行っている。
その他、達古武沼への土砂流出を抑制する対策をとっている。管理道の法面が崩れた箇所で土留め柵の設置を行ったが、斜面の安定が見られないことから、来年度にフトン篭による基礎工と法面保護のためにササの移植を行い土砂の流出を防ぐことを予定している。
(委員長)
基礎工やササの移植でも良いが、粗朶柵の方が柔軟性があると考える。例えばヤナギの粗朶を組むことで基礎工と萌芽による緑化を同時に行う方法もある。
(事務局)
植栽区では主に育苗したアオダモの苗木や昨年の秋に山採りした苗木を今年の5月に植えているが、夏頃にエゾシカによる食皮の被害が見られた。林内のカラマツの上層木は処理せず苗を植栽した。
(委員長)
将来10年後や20年後にカラマツの上層木をどう扱うのか。
(事務局)
現在、間伐の試験を行っており、上層木であるカラマツが残ることに対してどれだけ苗木の生育に対する阻害要因になるかということを、今後とりまとめていく予定である。
伐採したカラマツの用途は決まっていないが、地区内で利用するなど処理を行いたい。
(委員長)
苗木生育の阻害要因として過度の間伐により草本が繁茂し、苗木を被圧することもあるが、伐採時に下に植栽した苗木を傷めてしまうことが問題。今植えても良いが、将来的なビジョンが必要ではないか。
立派に育ってきたカラマツなので、今後の用途も決める必要がある。今が切り時ならば、列状に切りながら植えていって、最終的に集材する時に植栽した苗を傷めないように考えた方が良い。
上層木のカラマツの処理を冬に試行してみるとよいのではないか。
(事務局)
今後上層木の取扱についても方針をまとめていきたい。
今年までの試験結果としてシカの影響をとりまとめており、植栽する苗木程度の大きさになるとシカの影響を受け易いことから、今後植栽区では柵によるシカ対策が必要と考える。
(委員)
今年度実施されたササの刈り方が甘いので、来年広葉樹の種が入ってきてもすぐにササに覆われてしまうので、地表が見える位まで刈らないと意味が無いと思う。
カラマツを完全に無くするまでに2回ないし3回は切る必要があると思うが、その搬出を今から考えていかないと、切る前に植えた木などが全部傷んでしまう。
高性能林業機械のハーベスターなどを使って列状間伐などして、1列は次の間伐に機械を入る時のために残してそこは最後に再生していくなどしないと材を出すたびに再生すべき広葉樹が傷んでしまうと思う。
(委員)
かき起こしを行っている箇所は周りに母樹が足りなく感じた。うまく自然再生ができるのか疑問だ。
苗を植栽した箇所は上層木が多く、苗がうまく成長するのかなと感じた。
(委員長)
アダプティブマネージメントは良いが、身近なアダプティブにこだわり過ぎてしまうと全体像が見えなくなる。カラマツの上層木のことなど、あの森の50年先の姿を想像し、その目標に向けて10年後にはこんな姿にするといったことをそろそろ考えておいた方が良い。
(事務局)
ササ刈りの方法が弱いという指摘については、2カ年ササ刈りを続けた上で、その後の効果を見るので来年の効果も確認して検討したい。
周りに母樹が少ないのではないかとの指摘については、直接種子が届かないところについて植栽を行う計画であるが、現在育苗が計画通りに進まず、植栽面積が計画の三分の一程度となっている。植栽箇所が新たな母樹林となるような効果も期待し、パッチ状に植えている。
カラマツについては、間伐の調査を今年度からスタートしており、この先の森の姿を見据えた対応方針を検討していきたい。
(委員)
本日の配布資料に入っている環境学習プログラム集には、2004年から達古武地域で毎年市民と一緒に調査をしたり、苗を育てたり、種を採ったりといった取り組みもプログラム化して掲載している。多くの団体や市民の方々が観察会等を実施する際にこのプログラム集を使ってもらいたいと考えている。
(事務局)
達古武地域で育苗に携わっている。育苗は順調ではなく、春はアオダモなどがネズミの被害にあった。去年からは、3分の1から半分ほどを札幌で育成している。ダケカンバとアオダモは、おそらく釧路よりも1年早く山だしできる状況にある。
雷別地区の事業地において、事務局の説明を受けながら現地を視察し、その後意見交換が行われた。
(事務局)
本事業地では、平成12年当時、70年生のトドマツが春先の土壌凍結期に暖気の影響で蒸散作用が活発化し、立ち枯れ被害を受けた。被害を受けた箇所は、ササ地として点在している。ササ地化した当事業地において、天然更新と人工植栽を組み合わせて郷土樹種による森林再生を行っている。
(委員長)
どのくらい稚樹の本数があり、地がきをやるとかどのような条件の場所であれば天然下種更新を狙うか、植栽するかなど、基準が見えず場当たり的に感じる。
最初の委員会でも、試験結果を元にどの工法がもっとも適当なのかを選択するために試験をして、その結果を見て工法を当てはめている。基準を説明できるようにしてほしい。
(委員)
苗を植え込みする箇所について、母樹がたくさんあるようだったが、そのまま放置しても十分に自然再生するのではないかと感じた。
(委員)
母樹がたくさんあるので下層のササをどう処理するかによって天然更新が促されるのではないかと思う。
(委員)
次回は葉が出ている夏の間に観察できると違った観点から見れると思う。
(委員)
達古武のカラマツ林では母樹が少なくサイズも小さい木が多いが、雷別では大径木が残っているということもあり、種子の散布量は多いのではないかと思う。地がきした箇所の種子量・実生量のモニタリングをしてみると良いと思う。
(委員長)
かき起こしや植栽といった工法を選択する場合の基準を示してほしい。
今日残念だったのは、以前いろいろ試験を行ったのにその試験地との組み合わせが全く無かった。試験をしてその結果かき起こしや植栽の仕方を検討してきたはずで、今回それが何も説明されなかったことが問題である。
以上の2点を次回の委員会で説明してほしい。
2地区の視察を終えて、今後の森林再生の進め方や様々な方々からの参加の可能性について、意見交換が行われた。
(委員)
広葉樹の山に戻すということは、100年200年経たないと結果が出てこない事だと思う。今一部を見て判断するのではなく、長い目で見る必要がある。将来的にどんな山になるか考えながらやらないといけない。
(委員)
国有林と環境省と横の連携を密にして、技術面や役割分担をすると良いのではないかと思う。
(委員)
達古武や雷別は、釧路湿原の流域の中では小さな範囲でしかない。森林の保全は、全域で考えていかなくてはいけない問題であり、100年後どうなるかを考えるなら、達古武と雷別だけで森林が再生できれば良いということではない。流域全体の森林の状況を把握するということを行政機関でなくとも、誰かがやらなくてはいけないと思う。湿原再生において広里と幌呂だけ再生したら良いのか、河川蛇行化において芽沼だけで良いのかということと同じで、全体の話とどうつなげるのかを皆で意識していく必要があると考える。
(委員長)
釧路湿原自然再生事業を今後どうやって盛り上げるかについては、よくわからない。地域の人たちが自ら考えて実際に事業をやっていくというのが本来の自然再生推進の趣旨であった。しかし、財源の問題、実施計画書を誰が作るかなどと様々な問題があり、結局行政がある程度進めて終わるとしぼんでいくというのが現状である。
ニッセイやANAといった実際に企業が補助金を出しているところもあり、企業だけではなく社会的責任を持つ大学や個人などとも連携をとりながら、お金を出してくれるような仕組みが作れるといいと思う。
達古武や雷別はまず20年後の画を皆で描いてみたらどうか。現状からどのような行為をするとどのような風になるかという画を見せる。そのような画に近づける為に現在このようなことをやるという説明をより詳しく、基準も含めながら描いていくという、このことが社会に対する説明責任として良いのではないか。
今のように手詰まりになってきた時だからこそ、時間を取って、流域全体をどうゆう風にしていくかという話をしても良いのではないか。
(事務局)
事業実施主体として将来的なビジョンを持ってやらないと矛先がぶれるということを改めて認識させていただいた。現在、釧路湿原自然再生自体が行政主体で進んでいる中で、このような取り組みに民間の企業なども参入していただけたらと考えている。
(委員)
私どもの会社でも鶴居の方で自然に近い形の森作りを行っているが、森林というのは、お金をかけなければ森林として維持できないということ、釧路湿原の再生に向けてもただ山があれば良いということではないということを一般市民の方に理解してもらう必要があると思う。
釧路湿原の周りには森林組合もあり経済林もあるので、業界に対して土砂を流出させない方法の啓蒙や技術的な手法を勉強するなども大事ではないか。
会議室において、達古武地域の平成21年度の試験結果及び平成22年度の事業について事務局より説明があり、その後意見交換が行われた。
(委員長)
今後、上層木の間伐率を上げて、生育のために下層に光が入るようにするという議論よりは、伐採による下層の稚樹への攪乱を最小限にとどめる為に将来的にどの様な計画を持つのか作ってほしい。
(委員)
間伐の方法として、経済林のカラマツ林を考えるなら定性間伐か、もっと成長させて皆伐も考えられる。しかし、自然再生を目的として、下層に広葉樹を植える、もしくは天然更新させるという考えならば、列で抜いてそのうちの何列かは次回の間伐とし、カラマツを全て無くすのであれば、次回またその列の何本かを利用しながら搬出する。その後、その部分を新たに自然再生していくのが良いのではないか。
会議室において、雷別地区の平成21年度の試験結果及び平成22年度の事業について事務局より説明があり、その後意見交換が行われた。
(委員)
苗に対する野ネズミの対策などもモニタリングをしながら進めてほしい。
(委員)
試験結果の中で、コントロール(対照区)のササの高さが年によって変わってしまっており、処理の効果が判りづらい。
ササの処理効果は、実生がどれだけ発生するかで最終的に評価が決まる。実際にどれくらいの量の実生が出ているのか調査することで、抑制効果が何年続くかが判ることが重要だと思う。
(委員長)
どこを地がきして、天然下種更新にするのか、どこは植え付けをするのかという基準がはっきりせず、どうゆう形でそれを決めているのか、次回は必ず説明してもらいたい。