知床半島発!ウトロ・羅臼GSS通信(2022)

令和4年10月31日(月曜日) ドングリトラップ回収
今期のミズナラ結実調査が無事に終了となったため、シードトラップの回収を行いました。シードトラップはイダシュベツの調査地に30個、岩尾別の調査地には45個設置してあります。
今日は背負子(しょいこ)が大活躍の1日になりそうです。

シードトラップを外した状態の調査木の周りの様子です。
シードトラップを支えていた鉄杭が残っていますが、これは毎年同じ場所で調査できるようこのままにしておきます。
大きなトラブルが起きた場合は設置箇所の移動もありますが、何もなければ平成元年から同じ場所で調査され続けているそうです。
歴代の方が毎年同じ場所から30年以上ドングリを拾い続けたと思うと、感慨深くなります。

外したシードトラップは背負い子に積み込んで、転ばぬ様に川を渡り・・・

林道を歩き、車に積み込みます。
一つだけだと軽く感じるシードトラップですが、背負い子にたくさん積むとかなりの重量となりました。
積み込まれた車の方も重かったのか、いつもよりは動きが鈍く感じました…

回収したシードトラップは日干ししてから、穴あき等のチェックをした上で後日、補修作業を行います。
今年の調査結果はイダシュベツ地区で2,014個(昨年は487個)、岩尾別地区では4,191個(昨年は3,773個)、総数6,205個となりました。
重量で見るとイダシュベツ地区は4,383グラム(昨年は974グラム)、岩尾別地区は11,077グラム(昨年は11,061グラム)、総重量15,460グラムで豊作という結果になりました。
ちなみに一番多かった木の堅果個数は630個で、一番少なかった木は42個でした。
調査地の森に通いながら季節の変化を感じ、動物によるシードトラップの被害にも悩まされてきましたが、今年も無事に調査が終わって一安心です。

令和4年10月28日(金曜日)羅臼湖三の沼展望台撤去・フレペの滝巡視
6月に羅臼湖三の沼の展望台を設置してから早5ヶ月、紅葉も終わりを迎え、雪に備えて展望台を撤去する時期となりました。この日は最寄りの知床峠では約7℃程度となっており防寒対策をしっかりと行って作業を行いました。
三の沼までの道脇には雪が残っていたり、水たまりに薄氷が張っていたりと気温の低下が一層感じられました。

程なく三の沼に到着し、展望台の解体係と入り込み防止ロープ回収係の二手に分かれて撤去を行いました。

今回は滞り無く作業が進み、展望台やロープはすべて撤収されました。

展望台の設置期間は5ヶ月程度ですが、羅臼湖に来られた方へ知床の魅力を伝える一端を担う事が出来たなら嬉しい限りです。
来年も三の沼展望台は再設置しますので、逆さ羅臼岳の姿を楽しみにお待ちください。
その後はフレペの滝の巡視を行いました。

寒い時期となり人の姿もまばらとなってきましたが、見かけた外来種の駆除を行って現地を後にしました。

令和4年10月16日(日曜日)羅臼岳登山道整備イベント2日目
今日は現場到着後、早速昨日の作業の続きに取り掛かります。前日の反省点を踏まえ同じ失敗を繰り返さないよう、みんなで知恵を出し合い、手分けしながら木柵作りを進めていきます。
正解が一つではないこの作業、今日中に完成させられるのか不安でいっぱいです。

今回の整備では降雨時の水の流れを意識して、木柵の周りが洗掘されないように水の勢いを和らげるような石組みの作成も行いました。

近自然工法では倒木などの現地で使える資材を活用する事もあります。
使えそうな木材を探していると、青緑色に輝くロクショウグサレキンが生えている木を見つけて楽しくなってしまいましたが、木材としては不適でしたのでそっと元に戻しました。

講師の方の指導の元、2日間で3段の木柵を完成することができました。
補修前に枝が重なり合っていた段差をそのまま活用し、2段の木柵を作成しました。

補修前

補修後
完成した見た目はとてもシンプルな仕上がりとなっていますが、自然と馴染み長持ちするよう見えない部分にたくさんの工夫が施されています。
ステップ部分の木の下には流水を受け止める石を組み、ステップの端には力石という安定させるための大きめの石が埋め込まれています。
今回の整備イベントでは2チームに分かれ2カ所の補修を行いました。
この2日間の中で修繕された区間は僅かではありますが、その箇所の更なる荒廃を防ぎ、これから登る方たちの負担が軽減されることを願い、今後も続けていきたいと改めて思いました。
令和4年10月15日(土曜日)羅臼岳登山道整備イベント1日目
昨年度より開催されている環境省主催の羅臼岳登山道整備イベントに参加しました。初日の午前は知床世界遺産センターで羅臼岳が形成された地質の歴史や、登山道整備の考え方等の講習を受けました。
登山道が荒廃する要因の話や流水コントロールの方法など、これからの巡視にためになる内容でした。

座学終了後は岩尾別登山口に移動し、手鍬やバール、掛矢など今回の整備で使用する道具の説明を受けました。

この登山道整備イベントでは近自然工法といわれる手法を取り入れています。
自然になじむ素材を使った修復を行うため、木や石など資材の運び方についての説明もありました。
講師の方は木を軽々と扱っていましたが、実際に自分で運ぼうとすると1人では持ち上げる事もできずに2人がかりでロープにくくりつけて登山口から運びあげました。

登山口での講習の後は資材と道具を手分けして持ち、過去に作業が行われた箇所を参考に浸食の過程、荒廃要因を考え、それに対してどのような修復を行ったかなどの説明を受けました。

今回の現場では2チームに分かれ、荒廃した所を時間のある限りどんどん直していきます。
我々のチームは高低差のあるカーブに合わせて、ステップを何段か作成する事にしました。
講義を聞いた上で作業に取り組んでいましたが、つい間違った方向に逸れてしまいがちで、ステップとなる木材を1本固定させるのもなかなか決まらずに苦労しました。
1日目の今日は1段を設置できただけで終了となりました。
明日の2日目でどこまで出来るかわかりませんが、手を使うよりも頭を使う登山道整備でした。

令和4年10月13日(木曜日)第6回どんぐり調査
この日は今年6回目のどんぐり調査を行いました。当日は晴れ間が見られ、気温も16度前後と秋としては大変過ごしやすい気温でした。

前回からどんぐりの収量に減少傾向が現れていましたが、今回はどうなのかドキドキしながらイタシュベツへ向かいました。
現地に到着すると、どのトラップにもどんぐりは少なく、中にはどんぐりの全く落ちていないトラップもあるなど明らかにどんぐりが減ってきていました。

続いて岩尾別の調査地でも先週より少ない結果となりました。いくつかのトラップが動物に乗られてしまったのか曲がっていたので、現地で修復作業をしました。
修復前

修復後

どんぐりの季節も残りわずかとなってきましたが、最後まで引き続き調査を行っていきます。
令和4年10月9日(日曜日) 羅臼湖巡視
本日は雪化粧をした羅臼岳を望みながら羅臼湖の巡視を行いました。知床では最高気温が一桁台の日もちらほらと出てきており冬の訪れを感じます。

クリックすると大きくなるます。
羅臼湖の三の沼展望台からは運が良ければ逆さ羅臼が見られるのですが、今回は山頂付近に雲がかかっていました。

クリックすると大きくなるます。
羅臼湖周辺の植物も茶色が目立つ様になってきました。

雪化粧をした羅臼岳と良い天気のおかげか本日は多くの利用者がいらっしゃいました。
羅臼湖の歩道に合わせて長靴を利用している方々が多く、巡視をしている私たちにとってはうれしく思います。
羅臼湖には「羅臼湖ルール」があり、ぬかるんだ歩道が羅臼湖にとっては普通の状態ですので、羅臼湖に訪れる方は長靴での利用をお願いしています。
登山靴では羅臼湖のぬかるみを歩くことは出来ません。
ぬかるみを避けて歩道の縁を歩いてしまうと、植生を荒廃させたり歩道が広がる原因を作ってしまいます。
知床では長靴の貸出等も行われています。
羅臼湖歩道を末永く利用するためにも事前に羅臼湖ルールを確認し、長靴の着用や携帯トイレの持参をお願いします。
私たちも自分たちが出来ることをしようとの思いで、羅臼湖からの帰りはゴミ拾いを行いながら帰りました。

また、長い間知床GSSでお世話になっていた車が引退することとなりましたので知床峠で羅臼岳との写真を撮りました。

勤務のほとんどが現場巡視である私たちにとって、この車は大活躍してくれたのでやや寂しくもあります。お疲れ様でした。
令和4年10月8日(土曜日) 知床ディスタンスキャンペーン
秋も深まり、各地でフードフェスなどイベントが増える時期となりました。知床でも「知床サスティナブルウィーク」が開催され、私たちGSSも知床自然センター内に設営した「知床ディスタンスキャンペーン」のブースにてお手伝いをしました。

知床ディスタンスキャンペーンとは、ヒグマやエゾジカ等の野生動物と遭遇する機会の多い知床で動物との不幸な事故を未然に防ぐため人と野生動物との距離感を改めて見直して頂くことを目的にしたキャンペーンとなっています。
キャンペーンブースでは、ヒグマをはじめとする知床ならではの動物の骨格標本やヒグマを題材にした絵本、ぬいぐるみなどがあり、私たちGSSも展示物の説明などを行いました。

普段は自然が相手の仕事をしているGSSですが、本日は多くのお客さんとお話をさせて頂き新鮮な気持ちになりました。
今回の知床ディスタンスキャンペーンを通して、人とヒグマとの良好な関係が続いてくれるよう改めて願っております。

令和4年10月7日(金曜日) 第5回どんぐり調査
ミズナラ結実調査がスタートしてから早1ヶ月、5回目のどんぐり回収を行いました。この日は環境省さんが調査に同行しました。
まずはイタシュベツの森へ出発です。
森の中のトラップには霰が貯まっており、先日の羅臼岳初冠雪に続き冬の訪れが感じられました。

同行した方々にも実際に作業を体験していただきました。

岩尾別でも同様に調査を終え、午後からは回収したどんぐりの計測を行いました。
どんぐりは計測前にゴミや水気を取り除いておきます。


調査木ごとのどんぐり総重量を計測し、無作為に抽出して直径・高さ・重量を測定します。

今回の回収数はピーク時の半分程度となり、徐々に減少傾向を見せ始めました。
どんぐりが落ちなくなる最後まで気を抜かず調査を引き続き行っていきます。
令和4年10月6日(木曜日) 羅臼岳初冠雪!
寒くて悪天候続きだった知床にやっと晴れ間が戻ってきました。羅臼での作業を終えウトロに戻る途中、久しぶりに姿を見せた羅臼岳は眩しいほどの雪化粧となっていました。
羅臼岳の初冠雪です。

10月5日に羅臼岳登山をされた方の話によると…実は5日の段階で積雪はあったそうです。
とりあえず、今日は麓からの初確認となりました。
なお、この時期に降った雪は数日でとけてしまうため、紅葉と積雪の風景をたくさんの方に見てもらえれば幸いです。

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