知床半島発!ウトロ・羅臼GSS通信(2022)

令和4年7月30日(土曜日) カムイワッカ湯の滝・クマアンケート回収
今日はカムイワッカ湯の滝の巡視とヒグマ目撃情報アンケートの回収を行いました。
クマアンケートの回収は週に一回のペースで行っておりますが、本日のクマアンケートはなんと10件以上ありました。
クマの出没状況を知らせるための大切な業務になりますのでしっかりと地図を確認し貼り付けていきます。
また、7月23日(土曜日)には羅臼岳のオホーツク展望付近で、ヒグマが入林者へつきまとう事案がありました。
入林される方はクマ対策などを確認し、気をつけて入林していただければ幸いです。
クマアンケートの回収後はカムイワッカ湯の滝の巡視を行いました。
今日のカムイワッカ湯の滝は夏の日差しに照らされた様子がとても綺麗でした。
遠くからカムイワッカの滝を見ていると涼しそうに見えますが、長靴越しに感じる水の温度はじんわりと暖かかったです。
さすが湯の滝ですね。
実際に滝の水も強酸性ですので、滝の水が目に入ってしまい泣いてしまう子供もいらっしゃいます。
目を洗う用の水をもって行くと、役に立つかも知れません。
水温を実際に測ってみると30度近くありました。
令和4年7月29日(金曜日) 羅臼湖線歩道の補修
今日は羅臼湖歩道で破損した箇所の補修作業を行いました。
補修前、木道が折れて接地している状態でした。
補修後、折れた木道は撤去し、新しい板と交換しました。
別の場所では洗掘状況が酷く、路肩の踏み荒らしが進んでいる箇所の補修も行いました。
この様な大きな段差はどのように補修すべきか?
理想は近自然工法の要領で現地に転がる岩や倒木などを利用しステップを作りたいのですが、あいにくこの周辺に利用できる素材は皆無だったため、先ほどの補修で余った木材を利用することにしました。
階段状に置かれた木材の下には小さな石を組み、細い倒木等を敷き詰めて高さを出し、一番上には端材の板を敷き階段を作成してみました。
これで、脇道を利用せずに通行が可能となりました。
また、羅臼湖にお越しの際は長靴の利用をお願いしています。
羅臼湖周辺は湿地帯でもあり、道中はドロドロのぬかるみが多く存在しますが、歩道周辺の植生保護の為にぬかるみの中を歩く必要があります。
このぬかるみを避けた踏み跡が多い状態ではありますが、現地の環境保護を理解し羅臼湖を目指していただければ幸いです。
令和4年7月22日(金曜日) 知床岬の防鹿柵点検
今日は今年度初の知床岬への巡視です。
知床岬の先端部の樹林帯には1ヘクタールの防鹿柵が設置されており、この柵の点検と補修を年に2回実施しています。
防鹿柵の外側に生えていた木が柵に向かって2本倒れておりギョッとしましたが、幸いにもこの倒木は柵の上へ載ってはいなかったため、柵に干渉する枝を剪定するだけですみました。
柵のネットと地面との接点には動物が穴を掘って侵入を試みた痕跡が9カ所確認できました。
今日は時間の関係で完全な作業までは出来ませんので、次回の修繕で使用するネットのサイズを計測し、掘られた穴は倒木等で塞ぐ緊急処置を施しました。
そんな動物による穴掘りの跡にはヒグマと思われる動物の毛が付着していました。
今回は3カ所で毛の付着がありましたので、知床半島で行われているヒグマ調査用のDNAサンプルとして採取しました。
そして、恐れていた事が現実となってしまいました。
動物の侵入が可能な位の柵の破損が1カ所ありました。
過去に補修した所が経年劣化により再び破損してしまったようです。
とりあえず、この破れてしまった網から動物が侵入できないように新たなネットを張り、結束バンドで固定します。
なんとか、本来の防鹿柵の姿となりました。
知床半島内に設置されている防鹿柵では植生調査が行われており、動物の影響を受けずに育った植物の状況などを柵の中と外とで比べて記録しています。
柵に破損があり動物に侵入されてしまうと、柵内の植生に影響がでてしまうため、このような巡視や補修は欠かせません。
過去の補修で使用した結束バンドには動物による噛み跡がたくさん見られました。
巡視時には姿を見せない動物たちではありますが、近くには確実に生息しているのだと実感しました。
巡視と補修でどっぷりと疲れ果てたところですが、帰り道は岬の大地に根を張るトウゲブキの姿にとても癒されました。
令和4年7月8日(金曜日) 熊越の滝 外来種駆除
今日は環境省・羅臼自然保護官事務所のみなさんと熊越の滝周辺に生える外来種の駆除を行いました。
熊越の滝周辺に流れる小さな沢の中には、クレソンが生い茂っています。
クレソンはアブラナ科の植物で正式名称はオランダガラシといい、繁殖力が強く在来の植物を駆逐する恐れがあります。
また、環境省の生態系被害防止外来種リストの中では「重点対策外来種」に指定されている植物でもあります。
駆除対象となってしまったクレソンではありますが、白く小さな花が咲き始めていました。
いざ、長靴とゴム手袋を履き作業開始です。
水面が見えないほどに生い茂ってはいますが、根は弱く浅く生えているようでスルスルと気持ちよく抜けていきます。
あまりにも大量に茂っていたクレソンは一旦積み重ねられていました。
これでもほんの一部です。
予定していた時間内で熊越の滝周辺全てのクレソンを駆除するのは無理そうです。
沢の脇の浅瀬にはネコノメソウが生えていました。
ちょっとだけクレソンに似ていますが、こちらは在来種です。
間違えて一緒に抜いてしまわぬよう、注意が必要です。
作業前・水面がほとんど見えません。
作業後・本来の沢の姿がよみがえりました。
最後に歩道入口に生える外来種のハルサキヤマガラシやフランスギクを摘み取り本日の駆除活動は終了です。
広範囲に自生し駆除しきれなかったクレソンは来月に再度、駆除することとなりました。
令和4年7月2日(土曜日) 硫黄山巡視
今年度初の硫黄山巡視では、硫黄沢の出合(複数の地形が合流する場所)に迷い込み防止の目印を書く作業をしました。
硫黄山は三角の形をした部分が山頂となり、標高1562メートルの現在も活動を続けている活火山です。
その気象条件は本州の3000メートル級の山々に匹敵するとも言われていて、夏山シーズンも7月~9月ととても短い山です。
登山道ではヒグマがお尻をこすりつけた痕跡があり、体毛が付着していたため採取しました。
新噴火口上部は岩石、ハイマツ、ススキに高山植物等が混ざり合った斜面となっていて、硫黄山の山頂や知床五湖、ウトロから網走方面へのオホーツク海を一望できるとても眺めの良い場所でした。
その中で結実したハイマツの実が7つ実っている、大変珍しい光景等も見られました。
新火口を抜け、本日の作業地点でもある硫黄沢の出合に到着しました。
ここでは目印として自然に優しいベンガラを用いて迷い込み防止の矢印を作成しました。
矢印作成前
迷い込み防止矢印作成後
登山者が迷い込む事のないよう願いを込めて作業を行いました。
帰りは登山道へ覆い被さる笹藪を確認し、今後の草刈予定を考えながら下山しました。
硫黄山は変化に富んだルートがとても魅力的な山ですが、入山の際はクマ撃退スプレー等万全の対策を取った上で知床の山を楽しんでください。
令和4年7月1日(金曜日) クマアンケート設置・カムイワッカ湯の滝巡視
臼岳も登山シーズンに入りましたので、ヒグマ目撃情報アンケートの設置を行いました。
登山中にヒグマを見かけた場合はアンケートにご協力ください。ご記入頂いた情報は登山口に掲示され、後に入山する方の参考になります。
ご協力の程よろしくお願い致します。
また、これから登山をされる方はヒグマ対策を万全にして、ポスターの情報を確認して入山してください。
羅臼岳・羅臼温泉登山口
硫黄山登山口
移動中に、道路にポイ捨てされている生ゴミを発見しました。
野菜くずや魚の骨、賞味期限切れのレトルト食品などが捨ててありました。
もしこのゴミをヒグマが食べてしまったら・・・
ヒグマが一度でもこれらを口にしてしまうと、人間の食物を求めて繰り返し出没するようになり、人身事故を防ぐためにその個体を駆除せざるを得ない状況になります。
不法投棄は斜里町・羅臼町それぞれで条例により禁止されています。
また、餌付け行為も自然公園法や道の条例によって禁止されています。
ヒグマと共存するためには、人間側が食物の管理に注意し、行動を変えることが必要です。
幸いにも、今回は野生動物たちよりも早く私たちが発見したようですのでゴミを回収し捨てることが出来ました。
アンケート設置後はカムイワッカ湯の滝の巡視を行いました。
この日の一の滝の手前の水温は30℃となっていました。
これからの時期は気温も高くなりますので、熱中症に十分注意してください。
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