知床半島発!ウトロ・羅臼GSS通信(2021)
令和3年8月29日(日曜日)ミズナラ堅果結実調査地の下見
今年度のミズナラ堅果結実調査を行う調査地の点検、巡視をしました。
調査地に入ると、林道からは灌木に遮られて確認しにくい大きなミズナラや他の広葉樹、トドマツなどの針葉樹が目立ちます。
足元に目を向けると至る所にキノコが生えており、夏の暑さも徐々に和らいできたせいか秋が近づくのを肌で感じます。
調査木の近くにまだ青い小さなドングリが落ちていました。
各調査木につき三箇所ずつ堅果を収穫するためのシードトラップを設置するのですが、その際に用いる鉄杭にダメージがないか、また調査木自体に損傷や異常がないか一本一本辿りながら点検していきました。
途中、調査木の近くにトドマツの倒木があり、シードトラップ設置場所に覆い被さるように倒れていたので鋸を使って処理しました。
他にも林内にはかかり木や、風などで折れた梢や大枝が他の枝などに引っ掛かってぶら下がっているなど、見落としやすい危険が多く潜んでいます。
林内を歩く際は足元・前後左右だけでなく、頭上にも十分注意しなければなりません。
令和3年8月21日(土曜日) 羅臼岳(羅臼側)草刈
今月は草刈に追われる日々が続きました。
一日でも早く草を刈り終えたい気持ちでいっぱいですが、電動バリカンを用いても3人がかりで一日に刈れる範囲には限りがあり、距離の長いエリアは何度も通い作業を行います。
今日は羅臼岳ラウス側のハイマツ原周辺の草刈をしました。
草刈中
ハイマツ原周辺は背の低い笹ですが、歩道の内側へ伸びてきたため短く刈りました。
また、このハイマツ原はハイマツのトンネルを抜けていくところでもあるので、通行の支障となるハイマツやイヌツゲの剪定も行いました。
草刈前
そして本日をもちまして、羅臼岳(羅臼側)の草刈は終了となりました。
刈り終えるまでなんと! 4回も通うことになりました。
また、草刈にご協力していただいた羅臼森林官と羅臼山岳会には大変お世話になりました。
ありがとうございました。
草刈後
令和3年8月19日(木曜日) 相泊・観音岩の巡視
羅臼町の相泊から観音岩までの巡視を行いました。
海岸に沿って並ぶ番屋の前を通過していると、丁度コンブ漁を終えた船が戻ってきました。
ここは漁期になると沢山のコンブ漁船が行き交う光景が見られます。
採れたコンブを海岸沿いに干す方もいらっしゃるので、邪魔にならないよう干場を迂回して進んでいきます。
途中何度か川を渡る箇所がありますが、なかには橋を渡していない川もあるので、岩の上などを歩いて慎重に通過します。
水面をよく観察しましたが、カラフトマスなどの魚の遡上はまだ確認できませんでした。
歩き進んでいると、キタキツネがこちらに近づいてきました。まだ体も小さく好奇心旺盛な様子です。
黄色の花を咲かせたハンゴンソウが群生する場所に外来種のアメリカオニアザミが点在していました。
こちらも薄紫の花を咲かせ綿毛を飛ばしていました。
外来種にはアメリカオニアザミの様に一度根付くとなかなか駆除が大変なものもあり、あまり人が立ち入らない様な場所でも群生しているのを見かける事があります。
普段はオオセグロカモメが多数飛び交っている岩場に今日はその姿はなく、代わりにオジロワシが一羽留まっていました。
相泊まで戻るとカヌーツアーの団体の方がいました。
話を聞くと天候が悪くなりそうだったので早めに切り上げたそうです。
その後一時間もしないうちに、青空だった天気が一変し本降りの雨となりました。
海岸沿いでも山と同様、天気が急変することがありますので、行かれる方は必要な装備を身に着け十分気をつけてください。
令和3年8月16日(月曜日) カムイワッカ湯の滝巡視
お盆最終日の今日はカムイワッカ湯の滝の巡視を行いました。
夏休み中ということもあって多くの子供たちが楽しそうに全身びしょびしょになって楽しんでいました。
ところが、カムイワッカ湯の滝ではたまに悲痛な声が聞こえてくることがあります。
うっかり普通のプールの様な感覚で泳いだり、顔を水面につけてしまうと強酸性の温泉が目にしみてしまうのです。
また、肌の弱い人が長時間に散策を楽しんでいるとピリピリと刺激を感じます。
カムイワッカ湯の滝ではペットボトルなどに水道水を入れて持参し、沢遊びを楽しんだ後は真水をかけてさっぱりするのがおすすめです。
現在、カムイワッカ湯の滝では一の滝上部までの散策が可能となっています。
この立入禁止看板を越えて行かないようお願いします。
これより上では落石の恐れがあり危険なため立入を規制しています。
本日のカムイワッカ湯の滝の水温は29.3度でした。
長かった猛暑が終わり、ひんやりとした今日は水温も30度を超えることはありませんでした。
川の脇では葉が茶色に変色し枯れているのが目に付きました。
葉をよく観察してみると虫による被害ではなさそうでした。
おそらく、7月に1度もまとまった雨が降らなかったことによる影響も考えられます。
このような葉っぱが枯れた状態は知床のあちこちで見かけます。
令和3年8月13日(金曜日) 羅臼岳(羅臼側)草刈
暑さのピークを過ぎ、少し涼しくなった今日は羅臼町側にある羅臼岳登山道の草刈りを行いました。
少し涼しくなったとはいえ、山の中は蝉の鳴き声がとても賑やかで、足下にはコエゾゼミがひっそりとしていました。
コエゾゼミは背面にある、アルファベットのWの様に見える模様が特徴です。
ここでの草刈りは背の高い笹が高密度に生えている箇所が複数あり、そのような所は電動バリカンで一気に刈りあげていきます。
また、歩道上にある木の根や石の周りに生える草や笹はバリカンが当たると刃が欠けてしまう恐れがあるため、剪定鋏で処理していきます。
ヤマハハコ
サクランボとなったチシマザクラの実がたくさん付いた木が何本もありました。
通常、結実した状態ともなれば鳥やヒグマなど動物たちの貴重な食料ともなるのですが、食べ頃前なのか色とりどりのサクランボを見ることができました。
令和3年8月8日(日曜日)・9日(月曜日)羅臼岳登山道整備イベント
7月に引き続き、環境省主催の羅臼岳登山道整備イベントに参加しました。
今回のイベントでは前回学んだ事を念頭に、より実践的な登山道整備を行いました。
前回同様、使う資材は現地調達が基本ですが、現地で調達できない可能性のある長尺の木や大きな石などは分担して各自背負って現場へと向かいました。
道中、過去に作業が行われた箇所で修復に使った資材をどのように据えたかなどの具体的な説明を受けました。例えば段差を解消するためにステップとして使用する木材は地面に置いただけではとても不安定なため、法面にはめ込むか、歩道上に既存の木の根などが露出していれば、そこに挿し込むようにして据えることにより安定を図っています。
途中、歩道が複線化してしまったことによって法面が少し崩れている箇所があり、歩行者による踏圧や何度も寄り掛られたことが原因と思われる立木の根の損傷も見られました。
当該個所には、これ以上の法面の崩壊や複線の拡大化を防ぐためにロープを張ってルート規制してあります。
高すぎる段差など歩道上の歩き辛さが入山者の歩道外への侵入を招き、歩道の複線化を誘発するので、それらを未然に防ぐためにも予防的に登山道整備を行うことが必要との意見がありました。
今回作業を行ったのは高低差のある段差で、ステップ上段の外側の少し低くなっている所から下段の法面上部に着地する人が多く(実際、作業中に通りかかった登山者の多くが無意識にそうしていました)、それが原因となって歩道が拡がり、踏圧により法面が低くなってしまった箇所です。
また、歩道上の低くなった場所には水も集まりやすいので流水による法面の浸食も見られます。
作業前
そこで歩道がこれ以上崩れないように、下から運んだ資材や現地調達した木や石などを、パズルを組むように試行錯誤を重ねながら、水の流れや登山者が足を置く場所などを想像しつつ当てはめていきました。
作業中
踏圧によって殆どなくなってしまった法面には歩道と平行に太めの材を設置し、法面や歩道外に足を置かれないように誘導します。
また、段差を解消するために数本の木をステップとして用い、各ステップの段差が20センチメートル以下となるようにし、それらの木を反対側の法面にはめ込み安定させます。
最上段のステップの低くなっていた箇所には大小の石を敷き詰めて高さを出し流路を分散させたほか、既に流水によってえぐられている法面には大きめの石をはめ込んで、下段に流れる水の流れを変えるとともに法面の養生をしました。
作業後
今回の作業では人が足を置く場所や水の流れを想像しながら修復を行いましたが、作業後に通りかかった登山者は歩道上の誘導したかった場所に足を置いており、歩行者の歩き易さも考慮しつつ登山道整備を行っていくのが重要だとあらためて思いました。
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