利尻島発!GSS活動日誌(2020)
令和2年9月26日(土曜日)利尻島の将来に向けたGSS活動(島民への普及)
GSSの自然保護や登山道整備等に興味があり、お手伝いを申し出ていただいた島民の方々との学習会を開催しました。
森や自然を守るということをGSSの具体的な日常業務を通してレクチャーしました。
絶滅危惧種の花々の存在や分類について。
崩落が続く利尻山の現状と経過観察。
快適な登山環境を維持するための登山道整備のノウハウ。
登山中に出会う登山者との交流を通した、タイムリーな山の情報の獲得。
実際の業務に沿って登山道巡視・整備に同行してもらいながら、質疑応答を交えて有意義な時間を過ごすことができました。
まずは、保護林、希少種、利尻山高山部の崩落箇所のチェックを巡視前に行いました。
草刈りとひとことで言っても、「利尻山登山利用の実態に合わせた」工夫を行っています。
言われないと到底気づかないような登山道維持管理に必要な笹刈ポイントや、笹薮が登山道を覆うほどひどくなる箇所、季節ごとに咲く草花がある箇所を事前にピックアップし、登山シーズン前にはしっかり刈払い・保全を行っています。
利尻富士町や利尻町、環境省等との合同登山道整備(夏と秋)でも刈払い作業を行いますが、それだけではとてもカバーできないので、GSSや地元の登山道整備会社が巡視時に刈払いを行っています。
しかし、GSS1名だけだと3日かかってしまう区間もあります。そのため、将来は地域住民参加により巡視・整備し、貴重な地域資源である利尻山を地域の皆様で維持管理する形にできるよう普及業務に努めています。
雨が降れば登山道に水が流れます。何もしなければ水の流れで土の浸食が進んでしまいます。
それを食い止めるために、登山道から水を排出したり、石や木でステップを作って水が溜まるようにして勢いを弱めたりします。階段状にしているのは歩きやすさのためだけではないのです。
写真は、水の出口となる排水口。いったん雨が降ると枝や葉などが出口をふさいでしまうので、取り払っています。
登山をされるみなさんも山行中に気にして歩いていただけたら嬉しいです。
リシリヒナゲシ(6月下旬~8月上旬開花)
世界でこの島のみで見られる代表的な花ですが、遺伝子が違う栽培種が高山部に根付いてしまっているため、関係機関で遺伝子調査を行い、抜き取りを行っています。絶滅危急種(Vu) ※ランクは北海道レッドデータブックによる。(以下同様)
リシリゲンゲ(6月下旬~7月開花)
山頂域付近では比較的多く、その咲く姿が見られます。絶滅危惧種(En)
*よく似たリシリオウギ(7月~8月開花)と間違えられます。希少種(R)
リシリリンドウ(7月~8月開花)
秋を思わせるリンドウですが7月中旬の夏真っ盛りに高山域で咲きます。絶滅危惧種(En)
レブンコザクラ(5月~6月開花)
となりの礼文島だけでなく、利尻島の岩場にひっそりと咲いています。希少種(R)
令和2年9月7日(月曜日)
利尻町と利尻富士町合同の登山道整備が行われました。
両町役場職員に、(株)トレイルワークスが加わり、総勢15名で作業を行いました。
シーズン前(6月下旬~7月上旬)の第1回登山道整備は各町それぞれで、シーズン終了に向けての第2回は合同で行うのが恒例です。
作業内容
- 頂上手前の通称3メートルスリット壁部分の植生回復のためのネット張り。
- 避難小屋の清掃
- 各地点に設置の案内板(親不知子不知ほか)外し
- 避難小屋の周辺のササ刈り
- 鴛泊コース9合目上部ロープの支点のボルト設置
- 合流点直下に「滑落箇所注意」の看板設置
登山道において、動植物保護や登山道整備、そして安全管理のためまだまだ手をつけたい場所はあります。
自然に興味・関心のある地域の方を少しずつ増やし、地域一体となり「利尻山を守らなければいけない」という意識を町民の方々に持っていただくため努力していきたいです。
山頂手前の通称3メートルスリット。
火山礫スコリアは軽石のようで結合力がまったくないので崩れやすい。
雪解けや登山者のステップでいとも簡単に崩れてしまう。植生を復元させ結合力を高めるために植生ネットを張りました。
各所に配置した地名板も冬を前に取り外します。(写真は沓形コース礼文岩)
滑落危険箇所には注意喚起のために看板も必要です。
今回は新しい看板を設置しました。
こうした階段も登山者の歩きやすさが優先ではなく、あくまでも崩れにくくするための方策。
歩く時もできるだけ地形や植生に影響のないように気遣っていただけるとありがたい。
利尻富士町鴛泊 北麓野営場出発時の集合写真です。
スタート時は曇天でしたが、8合目長官山で休憩していると雲がみるみる晴れ、山頂部が顔を出してくれました。
令和2年9月5日(土曜日)
突然の雨、強風など山の天気は変わりやすいもの。
そんな時、頼りになるのが避難小屋です。
一時避難し、このまま山行を続けるか、無理せず撤退するか、冷静な判断のために落ち着いて考えたり、話し合ったりできるのも過酷な自然が遮断された小屋の中だからできること。
急に体調が悪くなったときも、小屋の中なら一安心ですね。
利尻山の避難小屋はあくまでも「緊急利用」に限られます。
宿泊目的の小屋ではないことが十分に周知されていないため、そのことについて登山道で会う皆様にお話しすることも多いです。
無人の小屋であり、使用は各人の良識に任されています。
ゴミの持ち帰りは当然のこと、混み合ったときも譲り合って少しでも多くの登山者が利用できるように配慮してください。
鴛泊コースの避難小屋は明かり取りの窓もあって、屋内で食事をする登山者も多い。
避難小屋の入口は腰をかがめて入るぐらい小さい。過酷な自然から内部を守るための必然。
奥のハシゴがかかった上(2階)の入口は積雪時に使用します。
室内は、みなさんにマナーよく使ってもらっていることに加え、利尻富士町や地域の山岳会等により清掃等の管理をしていただいているため、快適な空間が保たれています。
小屋の隣には携帯トイレを使用するトイレブースも二つあります。
天気が良いときは野外で休む方が気持ちいいですね。休憩場所のベンチが草で覆われないように刈り込むのもGSSの仕事です。
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