天然力を活用した多様な森林づくり現地検討会の取り組み
北海道の国有林は304万haあり、そのうち65万haは人工林となっています。 この人工林の多くが伐採する時期を迎えていますが、すべてを伐りまた最初から植付を行うと、あるとき伐る木がなくなってしまいます。そうなると、その後は林業自体も衰退し、木材産業にも影響が出てきます。 また、森林のもつさまざまな公益的機能も一時的に低下することとなってしまいます。 その人工林の中には、針葉樹が順調に生育しているところがある一方で、広葉樹がまとまって天然更新している箇所や、植栽した針葉樹と天然更新した広葉樹が混じり合っている箇所などが見られます。 こうした様々な姿の森林をしっかり観察し、次の施業をどうするのかを考えていく検討会を平成30年度から各森林管理(支)署で取り組んでいます。 |

現地検討会は、現在の森林の姿がなぜそうなったのかをよく観察することを基本に、まずは「現況林分の評価」を行い、その原因などを踏まえて、次の山づくりをどうするのかを職員同士で話し合います。 |

班ごとに検討した結果を発表し議論します。請負事業体や局からのアドバイスや見解などを踏まえて、今後の施業を方向付けます。 |

1 広葉樹が生育している箇所の取り扱い
針葉樹を植えた人工林には、長い時間の移り変わりで、広葉樹が自然に生育した箇所があります。かつては区域内のすべてを伐って(皆伐)、また新たに植付をしていましたが、広葉樹が良好に生育している箇所は伐採する区域から外すこととしました。
人工林の中にダケカンバなどを主とした広葉樹林がまとまって生育しています。 |

期待できる効果 植付面積が少なくなるので苗木の本数が減りコストの低減に! 残した広葉樹もしっかり間伐することで付加価値アップ! 将来の広葉樹の成長が楽しみです! |
2 伐採の方法を考える(主伐→間伐)
主伐の時期がきている森林でも、その状況をよく観察し、無理に主伐をしないで間伐を行い、森林の混み具合の管理や健全な成長を促すための伐採を行います。

植栽したカラマツの本数は少ないものの、さまざまな種類の広葉樹が生育しています。この広葉樹を「宝」にするための間伐を行います。 |

針葉樹の人工林の中で育った広葉樹は、根元から梢までの幹の太さが小さく(完満)、まっすぐな幹をもつ(通直)ものが多いのが特徴です。 |
期待できる効果 適正に間伐を行うことで植栽木や広葉樹の成長が! |
3 伐採の方法を考える(複層伐の方法を検討)
一つの区域の森林を、枝葉の茂る層が複数できる森林を造成するための伐採を複層伐と言い、通常は30mや40mの幅で伐る帯状伐採を用いますが、植栽した木や広葉樹の入り具合も考えながら、さまざまな伐採方法(群状や単木、列状など)を検討します。


植栽した木の成長具合と地形や環境などを確かめながら、さまざまな伐採方法を検討します。 |
森林の状況のほか、土質や林地傾斜、作業の効率性なども考慮します! |
4 稚幼樹を活用した更新(植栽→天然更新)
伐採を終えたあとの造林は、植栽により更新させることとしていますが、自然に稚幼樹が生育しているところについては、植栽する区域から除き、広葉樹の生育と発生を促します。伐採したあともしっかり公益的機能を発揮できるように整備をしていきます。



5 長伐期を視野に検討
主伐期を迎えた人工林を全て伐った場合、たとえ植付して新しい人工林を作っても一時的には若い森林がたくさん増えてしまい、森林がもつ水源の涵養や山崩れの防止な
ど、さまざまな役割が低くなるため、現地の状況をよく観察して、伐るべき森林、まだ伐らなくても良い森林などの区分けをしていきます。
現地検討会では、林分のもつ力はもとより、気象被害、病害虫による被害の状況を踏まえて検討します。 |


カラマツの根元がネズミにより被害を受けました。全周に被害が及ぶと立ち枯れします。 |
期待できる効果 水をきれいにしたり山崩れを防止する機能が高まる! 全て伐採せず長伐期化にすることで高齢級大径材への期待が! 事業量の安定的な確保! |
6 作業の効率化
伐採作業とその後の地拵や植付などの造林作業を一緒に実施する「一貫作業システム」を導入し、これまでかかっていた労働力を大きく減らします。
現地で働く労働者に一番負担なのは、人の手で行う地拵・植付・下刈などの造林作業です。「一貫作業システム」を推進するために、作業機械が入ることのできない急傾斜地などの場所は、あらかじめ伐採する区域から除くことで、作業者の負担を和らげます。

『一貫作業システム』 |

『コンテナ苗』 |

期待できる効果 傾斜のきついところは伐採箇所から除くことで森林整備の効率化に! 一貫作業で森林整備の省力化に! 人力での地拵は大変なので大型機械地拵で能率アップと労力軽減に! |
7 成長の良い人工林はこれまでどおり
立木や周囲の環境などをよく観察し、生育の状況が良い場合は、引き続き循環させるための林を作りあげます。その際にも効率性のある作業の方法や、自然の力を活用した山づくりを行っていきます。

人工林も傷や腐れがないか健康診断を!! |


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