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合法伐採木材等に関する情報:英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)

英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)

(2023年4月1日:新設)

注 国別情報については、次の調査の成果等を、参考情報として掲載しています。

注 リスク低減に関する事例等についてはこちら(PDF : 23,379KB)

1.合法伐採木材に関連する法令等及びその運用

1)合法伐採木材に関連する法令

英国は、EUとの離脱協定に基づき2020年1月31日にEUを離脱しました。EU離脱に伴って、EU木材規則(EU Timber Regulation: EUTR)は、英国では適用されなくなり、離脱に伴って新たに改正されたUK木材規則(UK Timber Regulation: UKTR)が2021年1月1日から適用されています。ただし、EU(離脱)法及び北アイルランド議定書に従い、北アイルランドに限っては、移行期間終了以降もEUTRが適用されています。

(1) 国産材の合法性確保
イギリスは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの行政区域(以下、カントリー)で構成されます。イングランド以外の3つのカントリーには地域議会が創設され、異なる地方制度が部分的に採用されていますが、森林管理と林業に関する法制度は非常に似通っています。 全てのカントリーで共通して適用される林業の制度には、1998年に策定された(2021年6月に第5版となる改訂版を策定)「UK林業基準(UK Forestry Standard: UKFS)」があります。同基準は、森林管理や環境に関する国際的合意事項を反映させ、イギリス国内のすべての森林に適用される持続的森林管理のための法的要件とガイダンスを提供し、モニタリングと報告について規定します。

イギリス国内で生産された木材を市場に流通させるには、UKTRに従い、デュー・デリジェンスの実施が必要となります。イングランドの森林を所管する林業コミッションは、国内の木材生産者のために、UKTR管轄官庁である製品安全・基準局(Office for Product Safety and Standards:OPSS)と、各カントリーの森林行政機関と協力して、要件を満たすためのガイダンスとフォームを策定しました。フォームには、承認された伐採ライセンス、森林管理計画の情報の他、森林認証の有無を記します。なお、国内の木材生産者は、記入したフォームを5年間保管する必要があります。

(2) 輸入材の合法性確保
英国では、輸入木材の合法性確認は、EU離脱に伴って新たに改正されたUKTRに従って実施されています。ただし、EU(離脱)法及び北アイルランド議定書に従い、北アイルランドに限っては、EUTRが適用されます。

UKTRは、違法伐採木材・木材製品を英国市場に入れることを禁止しており、輸入事業者は、違法伐採木材が英国市場に入るリスクを最小限にするためにデュー・デリジェンスを実施しなければなりません。事業者等の区分やデュー・デリジェンスの要件、対象とする木材製品等の内容はEUTRと基本的に同じとなっています。ただし、UKTRでは、デュー・デリジェンスの実施は、EU市場ではなく英国市場に最初に出荷する木材輸入事業者を対象にしています。つまり、EU諸国からイギリスに輸入される木材・木材製品についてもデュー・デリジェンス実施の対象となります。

デュー・デリジェンスシステムは、「情報収集」、「リスク評価」、そして該当する場合は「リスク低減」の 3 段階で構成されます。デュー・デリジェンスは予防的措置であり、木材・木材製品が英国市場に出荷される前に実施されなければなりません。該当する事業者は、収集した情報に基づきリスク評価を行い、違法伐採木材がサプライチェーンに流入するリスクは無視できるレベルだと判断した場合、製品を英国市場に出荷することができます。リスクが無視できない場合、事業者はそのリスクを低減する手段を取り、リスクが無視できるレベルまで軽減されない限り製品を英国市場に出荷することはできません。

2)主要関連法令

EU離脱に伴って改正されたUKTRは、法律として一つの文書に統合されていません。全文を見るには、「EUTR」と「その国内法として2013年に制定された旧UK Timber Regulation(木材および木材製品(市場への導入)規則2013)」をベースに、以下の修正箇所を示した法令で、EUTRのどの部分が離脱によって改正されたかを参照する形になっています。

  • 「木材・木材製品およびFLEGT(EU離脱)規則2018年版(The Timber and Timber Products and FLEGT (EU Exit) Regulations 2018 (legislation.gov.uk) 」
  • 「木材・木材製品およびFLEGT(改正)(EU離脱)規則2020年版(The Timber and Timber Products and FLEGT (Amendment) (EU Exit) Regulations 2020 (legislation.gov.uk) 」

3)関係行政機関一覧

行政機関 役割
製品安全・基準局(Office for Product Safety and Standards:OPSS) UKTRの管轄官庁
林業コミッション(Forestry Commission) イングランドの森林を所管
スコットランド林業・土地局(Forestry and Land Scotland) スコットランドの森林を所管
ウェールズ自然資源局(Natural Resources Wales) ウェールズの森林を所管
森林局(Forest Service) 北アイルランドの森林を所管

4)合法伐採木材に関連する法令の運用

UKTRの施行において、オペレーターの検査は、リスクベースで実施され、OPSSは、違法伐採のリスクが高いと考えられる製品タイプ、樹種、国に焦点を当て、該当する事業者を選定して検査を行います。検査の影響を最大化するために、検査対象事業者の選定基準として、事業者の取扱量や取引先の数も考慮されます。

OPSSは、検査対象となるオペレーターを選定後、一定期間の全輸入品の概要情報を提出するよう要請し、その中から特にリスクが高いと考えられる製品輸入を選んで立ち入り検査を行います。また、事前通知なしに立ち入り検査を実施する場合もあります。

OPSSは違反の程度を考慮して、以下の3段階の罰則を適用しています。

  • 警告書:軽度の違反行為に対して適用する。
  • 是正措置の通告:違反行為(デュー・デリジェンスシステムを構築・維持していない)に対して適用する。是正措置を特定し、一定期間内に措置を行うことを要求する。
  • 起訴:デュー・デリジェンスシステム使用の継続的拒否や是正措置の通告に対する違反に適用する。上限のない罰則金、または最大2年間の懲役刑が適用される。

OPSSによると、起訴された場合、罰金は1回につき約5,000ポンドで、さらに検査コストもオペレーターの負担になります。警告書発行の場合には公開されないが、是正措置の通告と起訴の場合は、企業名とその内容が公表されます。2021年には、3件の是正措置の通告、1件の起訴が行われました。

5)業界団体や事業者によるリスク低減措置に関する事例

イギリス木材貿易連合(UK Timber Trade Federation: UK TTF)は、イギリスに拠点を置く木材業界団体で、木材と木材製品を取り扱う輸入業者、商社、代理店、メーカーなどが加盟します。UK TTFは、会員事業者に対してデュー・デリジェンスシステムとツールを提供し、さらに各会員が適切にデュー・デリジェンスを実施したかどうか独立第三者機関(Soil Associations)と契約して毎年監査を行っています。UKTTFのデュー・デリジェンスシステムはUKTRの要件を満たすように設計され、「情報へのアクセス」、「リスク評価」、「リスク低減」、「発表・報告」、「監査」の5段階で構成されます。また、情報収集のためのサプライヤーへの質問票や、リスク評価のためチェックリスト、サプライチェーンマッピング用のフォーム、報告書のフォーマットなど各段階の実施を支援するツールが提供されています。会員事業者は、UK TTFに輸入木材製品についての報告(製品、金額、量、使用される樹種、伐採国と加工国)とデュー・デリジェンスの実施が義務とされています。Soil Associationsによる監査は会員である輸入事業者が対象であり、各会員が輸入した2~3の荷口についてデュー・デリジェンスシステムを適切に使用したかどうかデスクレビューで監査が行われます。

UK TTF会員企業2社のデュー・デリジェンスの事例を表にまとめました。A社は、コンゴ共和国、ガボン、カメルーン、コートジボアール等のアフリカ諸国、北米、アジア諸国など15か国以上から主に製材を輸入する企業で、デュー・デリジェンスのために専属スタッフ2名を配置しています。B社は、50か国以上、34のサプライヤーから内外装用ドア、家具、木材部品、合板を輸入する代理店です。B社は、1人のデュー・デリジェンス専属スタッフを配置しています。

A社(アフリカ諸国からの輸入事例) B社
情報収集 (原産国によって書類は異なるが)基本的にコンセッション契約書類、年間伐採許可書を収集。

証拠書類をもとに、伐採源である森林までのサプライチェーンの各段階を特定。
サプライチェーンマッピングの根拠となる文書(インボイス、伐採許可、認証文書等)、関連情報とデータ(写真、地理的情報)を収集。

Track Record Global などの民間企業のサービスを利用してサプライチェーンやESG(環境・社会・ガバナンス)に関連するデータを入手。
リスク評価 NGOの報告書、Open Timber Portal、 BV Rioの国別デュー・デリジェンスガイドラインを活用。

コンゴ共和国ではグローバルフォレストウオッチ(Global Forest Watch:GFW)を活用し、対象地域の森林減少について確認。
証拠書類をもとに、伐採源である森林までのサプライチェーンの各段階を特定し、リスクを評価。

Preferred by NatureやForest Trends等の報告書を活用。

木材サプライチェーン、環境や人権問題に詳しいNGOと対話を実施。
リスク低減措置 FSC認証材を活用。

認証材が使えない場合、以下の合法性検証制度を活用:Bureau Veritas Timber Legality Origin (OLB)、Preferred by Nature のLegalSource Standard、SGS Timber Legality & Traceability Verification (TLTV)
サプライヤーを訪問し、UKTRと自社のデュー・デリジェンスシステムについて説明。

サプライヤーとよい関係を構築し、提供される情報の信頼性を高める。

認証を活用。

2. 委託・補助事業の成果

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