第4回研修が始まりました~研修1日目(平成24年10月1日)
本日から、平成24年度 東北ブロック林業専用道技術者研修の第4回目が、岩手県盛岡市の「ホテルエース盛岡」において始まりました。
今回は、福島県を除く東北5県から森林土木工事を担当している県職員11名、森林組合職員1名、森林管理署等職員9名、合計21名が参加しています。受講者は、3日間の日程で講義現地実習等の研修を受講します。
開講に当たり、東北森林管理局 伊藤盛岡森林管理署長から、以下のとおりご挨拶がありました。
「森林林業再生プランでは、路網の整備が重要な柱として位置付けられています。日本の森林は、今後10年間で、人工林資源の6割が50年生以上となり、本格的な木材利用が可能と見込まれ、路網密度を高めていくことが重要な課題となっています。」
「例えば、オーストリアの林内路網密度は89m/haと、日本の17m/haの5倍以上あります。また、高性能林業機械との組み合わせにより、高い生産性を実現しており、生産コストは、間伐材で比べると、日本の9,300円/m3の1/4~6割と低くなっています。日本においても、これをモデルに路網整備を進めようということですが、日本の場合は、活発な地殻変動により断層や割れ目の多い複雑な岩盤であり、なおかつ、降水量が多くて浸食作用が著しいなど、不安定な地形地質によって形成されていることに、大きなハンディキャップがあります。」
「従来の大規模林道など、一般道に近い林道とは違って、林業専用道の場合は、尾根と谷の連続する森林内の路網整備であるため、局所的な 地形地質をよく把握することが重要です。10トン積みのトラックが走行できる線形と縦断勾配を保ちつつ、低コストで丈夫な道を造るため、構造物を少なくし、地形に応じた波形線形、こまめな排水処理等々の工夫が必要であり、これまでとは違った知識、技術、経験が求められます。」
「日本の森林林業の再生の実現に向け、先頭を切って取り組むべき路網整備の推進に、皆さんの力を奮って頂ければと期待しています。」
オリエンテーション
講師スタッフの紹介、日程説明、資料確認のあと、今回から実施することになりました「ふり返りシート」活用の目的手順留意点について説明が行われました。
林業専用道作設指針等の概要(講義)
なぜ、今、路網整備が必要なのか?どんな路網が必要とされているのか?林業専用道とは何か?林道とは何が違うのか?を理解するために、森林林業再生プラン、路網整備の現状、路網整備の考え方、林業専用道の作設指針、林業専用道の設計上管理上の留意点等について講義が行われました。
航空写真の白い部分が路網、見てのとおり、ドイツ、オーストリアの路網密度の高さがわかります。
ドイツオーストリアでは、恒久的な路網(大型のトラックが通行できる基幹道)が高密度で整備されており、ウィンチ付きトラクタやタワーヤーダを基幹道上に据え付けて、道端まで荷揚げ集材し、トラックで運材する作業システムが一般的です。
日本は地形が急峻だったり谷密度が高いなどの制約が多いことから、路網の全てをトラック道とすることは困難であるため、地域に合った作業システムに応じて、林業専用道と森林作業道を組み合わせて整備していく必要があります。
長期的に停滞している林業を再生するためには、林業の採算性の回復を図ることが重要です。
→木材は国際価格であり今後大幅な上昇は望めないことから、採算性を回復するには生産費を縮減する必要があります。
→生産費の縮減のためには、作業システムに応じた路網整備が不可欠です。
プランの実現に向けて具体的な施策を検討するため、検討員会を設置し、約1年間にわたり論議検討が行われました。
検討委員会において、路網を構成する道を整理し、それぞれの役割を明確化しました。
路網を「車道」と、主として林業用の機械が走行する「森林作業道」に区分し、さらに「車道」を一般の車両の走行を予定して開設する「林道」と森林施業専用の車両の走行を予定して開設する「林業専用道」に区分し、長期間にわたり使用していくことを前提に整備していく必要があるとされました。
路網整備を推進してきたことで、プロセッサとフォワーダの組み合わせが延びてきています。
作業システムとは、素材生産における作業の仕組みであり、「人」、「機械」、「作業の流れ」の有機的な組み合わせであり、路網と密接に関連するものです。 地域で今後導入されるであろう、導入すべき作業システムに合致した路網配置と密度を念頭に計画する必要があります。
普通車両の最小回転半径である12mのカーブを時速15km/hで走行した場合は片勾配を設置しなくても走行できるため、全てのカーブで片勾配が不要となります。
これによりカーブで路面水が内側に集まることはないので側溝を設置しないことができ、また、横断勾配を付けないことにより、全線にわたり側溝を設置しないことが可能です。
側溝を設置しないことにより、幅員が減少するため土工量の減につながります。また、 側溝を設置しない場合の路面排水は、波形勾配と横断排水による分散排水とし、きめ細かな横断溝を設置します。
やむを得ず側溝を設ける場合は、原則素堀としていますが、マサ土等のため洗堀の恐れがある場合は、張芝等により洗堀防止対策を検討します。
原則開きょとしているのは、開きょの方が維持管理しやすいこと、閉塞による被害が少ないからです。
洗越工は、常水と出水時の流水の差が大きい箇所や、土石等の流下が予想される箇所等で、常水以上の流水を越流処理することが適当な箇所へ設置します。地形条件、経済性等からボックスカルバート等が合理的な場合は、適切な工法を選択します。
切土高を低くしたうえで、保護工は行いません。 簡易な資材による横断排水工(止水エース)を設置します。
林業専用道の管理については、これまでの林道と全く同じです。
林業専用道の調査設計(演習)
明日の藪川林道における現地実習の準備として、班ごとに藪川林道周辺の5千分の1の図面上で林業専用道の路線検討と、平面図や縦横断面図等から見直すべき線形、工法等について検討を行いました。
テーブルを班ごとの配置に変えたところで自己紹介を実施。
演習内容、手順、検討に当たっての留意点等について説明。
この演習や明日実習により、林業専用道の適正な線形の選択や適切な施工管理の知識を習得します。
ふり返り
今回から以下の目的のため、「ふり返りシート」を活用することとしました。
毎日の研修内容について、受講者自身がその内容や理解度等を確認する
受講者間で理解度等を共有することで、新たな気づきを促す
受講者の理解度、モチベーション等を運営側でも共有し、翌日以降の研修運営に反映させる
研修最終日に毎日記載した「ふりかえりシート」を確認し、狙いの達成度や課題等を自身で検証する
《個人でシートへ記入します》
《班内で記入したふり返り内容を順番に読み上げて共有します》
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