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四国森林管理局

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    ツキノワグマ調査

    はじめに

    四国のツキノワグマは、戦後の拡大造林により生息に適した森林が減少したことや、狩猟により個体数を減らし、絶滅のおそれが高まっています。現在は捕獲禁止の措置がとられていますが、その生息数は、多くても数十頭から十数頭と推定されています。

    森林総合研究所の大西尚樹氏らの調査によって、日本のツキノワグマは下図のように青色で示した東日本グループと、緑色で示した西日本グループ、赤色で示した紀伊半島と四国のグループの3つの大きな遺伝グループがあることが分かっています。さらに四国のツキノワグマは紀伊半島のグループとも少し異なり、四国固有の遺伝子を持った種であると言えます。

    この貴重な地域個体群を絶やさないためにも、関係機関と連携して調査を行い、ツキノワグマの生態を踏まえた保護対策(新たな保護林の設定や緑の回廊の拡充等)を検討していく必要があると考えています。

              

    遺伝グループごとのツキノワグマの分布図 (九州で最後に捕獲されたツキノワグマは本州由来であったより引用)と遺伝タイプの系統図(Ohnishi et al.2009)

    ツキノワグマの調査は、罠で直接捕獲する方法やセンサーカメラで撮影したり、体毛を回収して調べる方法などがあり、これらを複合的に行う事が一般的です。四国森林管理局ではヘアートラップ調査とセンサーカメラによる調査を行い、NPO法人四国自然史科学研究センター等と連携しながら調査を行っています。

    また、WWFジャパンがNPO法人四国自然史科学研究センターと共同で行っている調査についても併せてご紹介します。

    ヘアートラップ調査

    ヘアートラップ調査とは、ツキノワグマの体毛を採取しDNA分析をする調査です。

    まず誘引物質(主にハチミツとワイン)を高い位置に取り付け、その周囲に有刺鉄線を張りめぐらせます。 誘引物質の良い匂いに誘われクマが中に入ると、有刺鉄線に体毛が引っ掛かります。それを回収しDNAを抽出すると、過去に捕獲された個体か新規の個体かが分かり、個体数や行動範囲の推定等が出来ます。

    ヘアートラップ

    ハチミツをぶら下げたペットボトルと周辺に有刺鉄線が見えます。これがヘアートラップです。

    ヘアートラップに入る様子

    この時に体毛が採取できます。その他のツキノワグマの写真はここをクリックしてください。

    有刺鉄線に付いたツキノワグマの毛

    これを回収して分析しますが、日数が経つとDNA分析が出来ないため、時間との勝負です。どの調査地も道から遠い山奥ですが、1週間から10日に1回の頻度で見回りに行きます。

     

    センサーカメラ調査

    ヘアートラップ調査では、同定しやすいようにセンサーカメラも併用し調査しています。

    センサーカメラに写ったツキノワグマ

    よく見ると首輪とイヤータグ(ピアス)が付いています。NPO法人四国自然史科学研究センターが、捕獲した際に取り付けたもので、このようなクマは、イヤータグの色だけで個体識別ができます。

    また首輪にはGPSが付いており、詳細な行動範囲等が分かるようになっています。GPS調査(NPO法人四国自然史科学研究センターとWWFジャパンの共同調査)の詳細はこちら

    センサーカメラに写ったツキノワグマ(NPO法人四国自然史科学研究センター提供)

    ツキノワグマは胸の模様が個体ごとに異なるため、撮影することで同定が可能です。

    近年はカメラの性能も上がり、平成24年度からはビデオ撮影による調査も行っています。写真と比べると、様々な角度からツキノワグマが観察できるため、より同定しやすくなります。

    センサーカメラで撮影したツキノワグマの写真を多数掲載しています。ご覧になりたい方は、ここをクリックしてください。

    フィールドサイン調査

    ツキノワグマの糞や爪痕、クマ棚などの確認を行います。

    ミズナラに出来たクマ棚

    ツキノワグマが木に登り、ミズナラのドングリなどを枝を折り食べます。それをお尻に敷いた結果、このような棚が出来ます。

    四国でクマ棚が確認されることは非常に珍しく、貴重な資料です。

    ミズナラに出来たツキノワグマの爪痕

    ツキノワグマが木に登った事が分かります。意外なことにツキノワグマは木登りが得意です。

     GPSによる調査(外部による調査です)

     NPO法人四国自然史科学研究センターとWWFジャパンが共同で行っている調査です。ツキノワグマを捕獲し、首輪型のGPS発信器を装着させるため、正確な行動範囲などの詳細なデータを取ることが出来ます。

    ツキノワグマを捕獲しGPS発信器を取り付ける四国自然史科学研究センターの山田孝樹氏(四国自然史科学研究センター提供)

    四国自然史科学研究センターの山田氏によると、平成24年9月に捕獲し、発信器を取り付けた個体を分析した結果、9月下旬ごろまでは広い範囲を移動し、10月に入ると狭い範囲を集中的に利用する行動パターンに変化することが分かりました。10月にはツキノワグマが好むミズナラ等のドングリが豊富なため、あまり移動せず、夏場はミズキやヤマブドウ、サルナシ等を食べるため、散在している餌を探すため広い範囲を移動すると考えられます。当局で実施しているヘアートラップ調査でも、夏場は頻繁にツキノワグマを確認できますが、秋になるとその回数はめっきり減ります。上記の要因が関係していると考えられます。

    調査結果の詳細はWWFジャパンのホームページをご覧下さい。

    お問合せ先

    計画保全部計画課
    ダイヤルイン:088-821-2100