平成24年7月18日
林野庁
森林内等の作業における放射線障害防止対策に関する留意事項等について(Q&A)
東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故に関し避難区域の見直し等が行われたことを受け、厚生労働省において、作業者の安全に関する施行規則やガイドライン等が改正・策定等されました。
このことを踏まえ、林野庁では、「森林内等の作業における放射線障害防止対策に関する留意事項等について(Q&A)」を作成しました。
Q1. あらたな避難区域の見直しにともない、森林作業等が行える範囲との関係はどのようになるのか。
1 警戒区域及び計画的避難区域や、新たに指定された帰還困難区域及び居住制限区域は、被ばく線量を低減する観点で長時間の立入り等が制限されていることから、除染等業務や公益を目的とした一時的な立入りなど、特別の場合を除き、森林内の作業についても行わないようしてください。
2 一方、「避難指示解除準備区域」は、居住しても被ばく線量が年間の積算で20mSv以下となることが確実であることが確認された地域です。生活に必要な公共施設が整備されるまで等の間は、引き続き居住が制限されていますが、原子力被災者生活支援チームから出された「避難指示解除準備区域内での活動について」の中では、区域内でできる活動として、復旧・復興に不可欠な事業の再開とともに、営林の再開が示されたところです。
3 この避難指示区域の見直しに合わせ、「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則」(以下「除染電離則」という。)が改正されたことから、除染等業務における放射線障害防止のより一層的確な推進を図るため、「除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン」(以下「除染等業務ガイドライン」という。)及び「特定線量下業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン」(以下「特定線量下業務ガイドライン」という。)が厚生労働省により策定されました。これらのガイドラインでは、災害復旧作業等の緊急性が高いもの以外の作業については、あらかじめ、作業場所の除染等の措置を実施し、可能な限り線量低減を図った上で、被ばく線量管理を行う必要のない空間線量率(2.5μSv/h以下)のもとで作業に就かせることを原則としており、森林施業等についても2.5μSv/hを超える地域においてはできる限り作業は行わないことが求められます。
4 なお、真にやむを得ず2.5μSv/hを超える森林等で作業を行う場合は、これらのガイドラインに定められた事項を遵守の上、作業を行うようにしてください。
(参考資料)
・ 平成24年5月9日「避難指示解除準備区域内での活動について」(PDF:74KB)
Q2. 厚生労働省が作成したガイドライン等とはどういったものか。
1 今般の避難区域の見直しに伴い、避難指示解除準備区域等において、生活基盤の復旧、製造業等の事業、営農・営林等が順次再開される見込みとなっています。このためには、これらの業務に従事する労働者の放射線障害を防止することが必要であり、厚生労働省において、有識者等が参集され労働者の放射線障害防止のあり方について検討が行われ、除染電離則が改正されたところです。この改正除染電離則と相まって、除染等業務における放射線障害防止のより一層的確な推進を図るため、改正除染電離則に規定された事項のほか、関係法令など重要なものを一体的に示すことを目的として、ガイドライン等も取りまとめられました。
2 今回取りまとめられたガイドライン等は、科学的な調査結果や新たな知見等をもとに、労働者の放射線による健康障害を防止するため、事業者が実施しなければならない事項等が定められています。
3 作業の種類により2つのガイドラインが作られており、土壌等に含まれる放射性セシウムの濃度の値が1万Bq/kgを超える汚染土壌等を取り扱う「特定汚染土壌等取扱業務」を対象とした「除染等業務ガイドライン」と、特定汚染土壌等取扱業務以外であって、平均空間線量率が2.5μSv/hを超える場所で行う業務である「特定線量下業務」を対象とした「特定線量下業務ガイドライン」となっています。いずれのガイドラインとも、放射性物質汚染対処特措法に基づき除染特別地域または汚染状況重点調査地域(以下「除染特別地域等」という。)に指定された市町村を対象としており、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉及び千葉の各県に存する92市町村が適用対象になります。
4 特定汚染土壌等取扱業務に適用される「除染等業務ガイドライン」では、作業開始前に作業場所の平均空間線量率や土壌等に含まれる放射性セシウムの濃度の値等を調査し、放射性セシウムの濃度が1万Bq/kgを超える場合には、
(1) 労働者の被ばく線量の測定・記録・保存(空間線量が2.5μSv/hを超える場所において作業を行うことが見込まれる場合に限る)
(2) 作業計画の策定、作業指揮者による作業指揮等の被ばく低減のための措置
(3) 汚染検査場所の設置及び汚染検査の実施、容器の使用等の汚染拡大防止や飲食・喫煙が可能な休憩場所の設置等による内部被ばく防止のための措置
(4) 労働者に対する教育や健康管理のための措置
等の対策を講じた上で、作業を行うことが求められています。(様々な対策等が定められており、詳細についてはガイドライン等の本体を参照してください。)
5 特定線量下業務に適用される「特定線量下業務ガイドライン」では、作業開始前に作業場所の平均空間線量率を調査し、その結果が2.5μSv/hを超える場合には、労働者の被ばく線量の測定・管理や労働者に対する教育、健康管理のための措置等の対策を講じた上で、作業を行うことが求められています。
6 森林内の作業のうち、土壌等を直接的に取り扱う(1)苗木生産作業、(2)植栽作業、(3)保育作業(補植作業)、(4)林道の開設等、(5)災害復旧作業は、特定汚染土壌等取扱業務に該当する可能性があり、これら以外の作業は、特定線量下業務に該当する可能性があります。
7 なお、いずれのガイドラインにおいても、災害復旧作業等の緊急性が高いもの以外の作業については、あらかじめ、作業場所周辺の除染等の措置を実施し、可能な限り線量低減を図った上で、被ばく線量管理を行う必要のない空間線量率(2.5μSv/h以下)のもとで作業に就かせることを原則としており、森林施業等についても2.5μSv/hを超える地域においてはできる限り作業は行わないことが求められます。
8 平均空間線量率2.5μSv/h以下で、土壌等に含まれる放射性セシウムの濃度の値が1万Bq/kg以下の場所で作業を行う場合は、特段の措置を講ずる必要はありません。
Q3. 特定汚染土壌等取扱業務や特定線量下業務に該当しない場合、特段の対策を取る必要はないのか。
1 今回取りまとめられたガイドライン等においては、作業場所の平均空間線量率が2.5μSv/h以下、取り扱う土壌等の放射性セシウムの濃度の値が1万Bq/kg以下であるなど、特定汚染土壌等取扱業務や特定線量下業務に該当しない場合は、線量管理等の対策は義務づけられていません。
2 これらのガイドライン等は、労働者の放射線障害防止の観点から、事業者が最低限実施しなければならない事項等を定めたものであり、事業者の判断で、より安全側に立った追加的な対策を講じることを妨げるものではありません。
3 例えば、平均空間線量率が2.5μSv/h以下、取り扱う土壌等の放射性セシウムの濃度の値が1万Bq/kg以下の作業場所においても、被ばくや汚染拡大をさらに軽減する観点から、以下のような対応を取ることが考えられます。
(1) 長袖、手袋、不織布製マスク等を着用する。ただし、熱中症予防のため、水分・塩分のこまめな摂取及び夏期の炎天下での作業時間の短縮等を行う。
(2) 休憩、飲食については、作業場所の風上に移動し、手袋等を脱いだ上で行う。
(3) 作業後に手洗い、うがいを行う。履物についた泥を洗い流す。
(4) 空間線量からの評価等による簡易な線量管理(※)
4 なお、不織布製マスクの装着等は、作業中の体力の消耗等にも影響を及ぼすものであり、上記のように水分の摂取等に配慮するほか、過剰な装備等によって放射線障害防止対策以外の安全性が大きく損なわれることのないよう、バランスの良い対策を講じることが重要です。
(※)作業者が、2.5μSv/hを超える別の作業場所で、除染作業や特定汚染土壌取扱業務にも携わることが見込まれる事業者には、2.5μSv/h以下の場所での作業であっても、特定汚染土壌等取扱業務に該当する場合には線量管理が義務付けられています。これは、2.5μSv/hを超える場所で作業を行う際に被ばくする線量に、2.5μSv/h以下の場所での被ばく線量を合算して管理する必要があるためです。特定汚染土壌等取扱業務に該当しない場合においても、同様に2.5μSv/hを超える別の作業場所での除染作業等において合算することを想定し、自主的に作業者の線量管理(空間線量率からの推計等)を行っておくことが考えられます。
Q4. 除染特別地域等(除染特別地域や汚染状況重点調査地域)で森林作業等を行う際には、具体的にどのような作業手順となるのか。
1 除染特別地域等において森林内の作業をする場合には、まず、その作業が特定汚染土壌等取扱業務となる可能性があるかを判断します。具体的には、(1)苗木生産作業、(2)植栽作業、(3)保育作業(補植作業)、(4)林道の開設等、(5)災害復旧作業が特定汚染土壌等取扱業務に該当する可能性があります。
2 上記1の(1)から(5)の作業を行う場合には、作業を開始する前に、「除染等業務ガイドライン」等に示された手順に従い、作業場所の平均空間線量率と土壌等に含まれる放射性セシウムの濃度を測定します。なお、2.5μSv/h以下の場所における森林土壌等に含まれる放射性セシウムの濃度については、平均空間線量率からの推計によることができることとなっております(問5参照)
3 上記1の(1)から(5)以外の作業を行う場合には、作業を開始する前に、「特定線量下業務ガイドライン」等に示された手順に従い、作業場所の平均空間線量率を測定します。文部科学省が行っている航空機モニタリング等の結果から、明らかに2.5μSv/hを下回っていると判断できる場合には、この測定作業を省略することができます。
4 どのような作業を行うか、作業場所の空間線量率が2.5μSv/hを超えるか、土壌等に含まれる放射性セシウムの濃度が1万Bq/kgを超えるか否か等によって、取るべき対策が異なります。概要を別紙のとおりまとめましたので、参照の上、作業を行ってください。
5 なお、これまでのモニタリング調査の結果等から、作業場所の平均空間線量率が2.5μSv/hを超えたり、土壌等の放射性セシウムの濃度が1万Bq/kgを超える地域は一部に限られ、大半の地域においては、上記3までの作業をもって特定汚染土壌等取扱業務や特定線量下業務に該当しないことが確認され、ガイドライン等で求められている対策は義務とはならないものと見込まれています。
(参照)
・除染特別地域等で作業を行う場合のフロー図(PDF : 107KB)
Q5. 作業場所の平均空間線量率や土壌等に含まれる放射性セシウムの濃度を「簡易に測定」等する方法とはどのようなものか。
1 除染特別地域等で森林内の作業を行う場合には、作業前等に作業場所の調査を行うことが求められていますが、その調査手法については、「除染等業務ガイドライン」及び「特定線量下業務ガイドライン」いずれにおいても、多数のポイントを測定したり高度な分析機器を使用する手法に加え、一定の精度等を確保しつつできる限り簡易な手法としたものが定められ、これらを活用できることとされています。
2 作業場所の平均空間線量率の測定について、作業場所の中で空間線量率のばらつきが予想されない場合には、作業場の区域の中で、最も線量が高いと見込まれる点の空間線量率を少なくとも3点測定し、測定結果の平均を平均空間線量率とすることができます(通常は、1000m2に1点以上測定)。
また、特定汚染土壌等取扱業務に該当する可能性がない作業を行う場合であって、文部科学省が行っている航空機モニタリング等の結果から、明らかに2.5μSv/hを下回っていると判断できるときには、この測定作業そのものを省略することができます。
3 特定汚染土壌等取扱業務に該当する可能性がある場合に行う、作業場所の土壌中の放射性セシウムの濃度の測定については、平均空間線量率が2.5μSv/h以下となる場合には、実測ではなく、平均空間線量率からの推計式(除染等業務ガイドライン別紙6-3(PDF : 65KB))から求めることができます。
他方、平均空間線量率が2.5μSv/hを超える場合には、土壌等を採取し、定められた方法により土壌等に含まれる放射性セシウムの濃度を実測する必要があります。この場合、空間線量計等を活用した簡易な計測方法(除染等業務ガイドライン別紙6-1(PDF : 64KB))が認められています。
Q6. 作業場所の平均空間線量率の測定等は、事前調査のほか、作業が行われている間は定期的に実施することが求められているが、具体的にはどのような手順となるのか。
1 平均空間線量率の測定については、「除染等業務ガイドライン」及び「特定線量下業務ガイドライン」何れにおいても、同一の作業場所で作業が継続している間は、空間線量率が2.5μSv/hを安定的に下回ったことが確認されるまで、2週間ごとに測定することが求められています。
測定結果が2.2μSv/h以下となった場合には、「2.5μSv/hを安定的に下回った」と見なし、以降、定期的な測定は不要となります。
除染等業務ガイドライン別紙6(PDF : 212KB)
2 事前調査における測定結果が、2.5μSv/hは下回っているものの2.2μSv/hを超えている場合には、「安定的に下回った」ことが確認できていないことから、「特定線量下業務」等において求められている線量管理等の対策をとる必要はありませんが、定期的な空間線量率の測定は、結果が2.2μSv/h以下となるまで継続することとなります。
3 土壌中の放射性セシウムの濃度の測定についても、同様に、同一の作業場所で作業が継続している間は、安定的に1万Bq/kgを下回ったことが確認されるまで、2週間ごとに測定することが求められます。
測定結果が10週間連続(2週間ごとの測定で5回連続)で1万Bq/kgを下回った場合には、「1万Bq/kgを安定的に下回った」と見なし、以降、定期的な測定は不要となります。
4 作業場所の平均空間線量率が2.5μSv/h以下である場合には、土壌中の放射性セシウムの濃度は、平均空間線量率からの推計式(除染等業務ガイドライン別紙6-3(PDF : 65KB))から求めることができますので、実際には2週間毎に実測する必要はないこととなります。
5 なお、豪雨や地すべり等により、作業場所の環境に大きな変化が起きたときは、改めて、事前調査からの手順を繰り返すこととなります。
(参照)
・平均空間線量率、土壌汚染濃度の測定・評価方法(PDF : 102KB)
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