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埋設・管理している2,4,5-T系除草剤

国有林では昭和40年代に使用した2,4,5-T系除草剤を埋設し、定期点検等によって適切に管理を続けています。
令和3年度より、モデル地区で、埋設物の撤去を念頭に置いた取組を進めています。

更新情報

  • 「令和5年度事業予定箇所の一覧」の情報を更新しました。(令和6年4月1日更新) NEWアイコン

目次

1.2,4,5-T系除草剤について
2.埋設管理の経緯
(1)使用と中止
(2)埋設方法
(3)2,4,5-T剤検討委員会
3.埋設地の管理状況
4.埋設地周辺の環境調査 NEWアイコン
5.現在の取組と今後の対応についてNEWアイコン
6.よくある質問(Q&A)
(Q1)ベトナム戦争時に米軍が使用した「枯葉剤」との関係は?
(Q2)埋設物や周辺にはどの程度のダイオキシン類が含まれているのですか?
(Q3)埋設物のコンクリートが劣化してダイオキシン類が漏れ出すのでは?
(Q4)これまでに埋設箇所で異常はないのですか?
(Q5)埋設地で災害が発生した場合の近隣の住民への影響は?
(Q6)ダイオキシン類が流れ出ることはないのですか?
(Q7)掘削後の埋設物はどのように処理するのですか?  
(Q8)それぞれの箇所で、撤去までどれくらい時間が掛かりますか?

1.2,4,5-T系除草剤について

  2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸(以下「2,4,5-T」という。)を有効成分とした農薬で、昭和39年9月に農薬登録され、昭和50年4月に登録失効されるまで、国内製造業者により製造、販売されていました。
  2,4,5-T系除草剤には、種類として粒剤と乳剤があります。2,4,5-T系除草剤の中に有効成分として含まれる2,4,5-T成分の割合は、粒剤では1.3%程度、乳剤では19%~58%程度とされています。
(除草剤の使用方法:(ア)粒剤はそのまま散布、(イ)乳剤は15~30倍程度に希釈して散布)
(出典:「林業用除草剤のあらまし」(社団法人林業薬剤協会・昭和46年3月20日発行)) 



(例)除草剤(粒剤)1kgに含まれる有効成分(2,4,5-T)は約0.013kg(13g)

2.埋設管理の経緯

(1)使用と中止
  国有林野事業では、地拵えや下刈りといった森林整備の作業の労力軽減のために、昭和43~45年頃に国内製造業者から2,4,5-T系除草剤を購入し、使用していました。
  2,4,5-Tは、その製造過程でダイオキシン類が極微量に含まれることがわかり、ダイオキシン類による催奇形性の恐れがあると指摘されたことから、昭和46年4月に林野庁長官から各営林局長(現在では森林管理局長)及び都道府県知事に対して、2,4,5-T系除草剤の使用を中止する通知を発出しました。
  同年11月に林野庁長官から各営林局長(現在では森林管理局長)に対して、国有林野事業のために所有していたもののうち、未使用となっていた2,4,5-T系除草剤の具体的な処分方法を通知しました。

(2)処分方法
  ダイオキシン類についての有効な無害化処理技術が無かった当時、まだ農薬登録されている薬剤が人手に渡らないようにするための処分方法として、当時の「毒物及び劇物取締法」に定める処分方法に基づいて、国有林野内の地下に埋設する方法がとられました。具体的には以下のとおりです。

○埋設方法
 ・埋設した後の覆土部分の深さが1m以上
 ・1箇所に埋設する量は原則として300kg以内
 ・薬剤を10倍量程度の土壌・セメント・水と混和して埋設
○埋設場所
 ・飲料水の水源、民家、歩道、沢筋などから可能な限り離れた峰筋近くを選定
 ・地下水の湧出する場所や風水害による崩壊等の恐れのある場所は避ける

(3)2,4,5-T剤検討委員会
  昭和59年に上記(2)の埋設方法と異なる処理を行っている箇所(1箇所当たりの埋設量が300kgを超える、など)があることが判明したことから、埋設箇所に係る土壌対策等について、学識経験者からなる検討会を昭和59年、平成元年、平成7年、平成11年に開催しました。上記(2)の埋設方法と異なる処理を行った箇所で水質及び土壌の2,4,5-T及びダイオキシン濃度等を調査した結果、(ア)2,4,5-T及びダイオキシンは土壌に吸着され、ほぼその位置に固定されており周囲への移動が認められないことなどから、(イ)地域住民生活へ及ぼす影響はない、との検討結果となりました。
  また、埋設箇所について、その立入りを禁止するとともに土石の採取等により土壌をかく乱する、もしくはそのおそれがある行為を禁止することなども検討結果として示され、この検討結果に基づいた措置について今後とも実施し適切に保全していくこととされました。

2,4,5-T剤検討委員会について(PDF : 378KB)

3.埋設地の管理状況

  現在、32の森林管理署等で46箇所の埋設地の管理を行っています。
  埋設地では、埋設箇所の周囲を柵等で囲み、立入禁止の措置をとっています。これは、埋設箇所の表層土がかく乱されることがないようにするためです。
  森林管理署等の職員により、年2回以上の定期点検や、豪雨や地震等(埋設箇所の保全に何らかの問題が生じる恐れがある事態)が発生した場合には臨時点検を実施しています。これまでに埋設物が流出するなどといった異常が確認されたことはありません。
  ※不特定多数の人が立ち入るなどにより埋設箇所の表層土がかく乱されて、適切な埋設管理に支障が生じることがないように各埋設箇所の詳細は公表していません。報道機関等の方が現地確認を必要とされる場合には、埋設箇所を管理している森林管理署等で案内するなど個別に対応しています。

4.埋設地周辺の環境調査 NEWアイコン  

  埋設箇所の周辺では、平成15年以降、環境調査を合116回実施しています(水質調査76回、底質調査29回、土壌調査11回。令和6年3月末現在)。これまでに実施したこれらの環境調査において、環境基準値を超えるダイオキシン類は検出されていませんので、埋設物は土中で安定した状態にあると考えられます。
  ※近年は、毎年数カ所でこれらの環境調査を実施しており、その都度、調査結果を埋設地の自治体等にお知らせしています。

5.現在の取組と今後の対応についてNEWアイコン

  これまでの環境調査の結果から、埋設物は現在でも地中に安定した状態にあると考えられますが、近年の災害リスクの高まり等により、埋設地を巻き込んだ災害が発生して埋設物そのものが崩壊し、下流に流出するのではないかといった不安などから、撤去を求める自治体等があります。このため、令和3年度、全国4箇所のモデル地区を対象に技術的な調査事業を実施し、埋設物から安全に試料を採取して成分・濃度を分析する方法や、周囲に飛散させずに掘削処理する手法等を確認しました。

(令和3年度埋設農薬の管理に関する調査委託事業の報告書分割1(PDF : 2,403KB)分割2(PDF : 2,521KB)

  令和4年度は、同モデル地区のうち掘削処理が必要な箇所において、埋設物の探査と試料採取・分析等を実施しました。
(令和4年度埋設農薬の掘削処理に関する事業の報告書概要(PDF : 393KB)) 
(令和4年度埋設農薬の掘削処理に関する事業の報告書
分割1(PDF : 1,991KB)分割2(PDF : 1,649KB)分割3(PDF : 2,592KB)分割4(PDF : 2,223KB)) 

  この事業により、おおよその掘削処理の範囲や処理量が把握できた箇所では、令和5年度から、関係自治体や処理施設等と調整の上、本格的に埋設物の掘削処理に着手しております。
  これらのモデル的な取組によって、探査・試料採取から掘削処理の範囲の特定、掘削、処理方法の決定、自治体や処理施設等との調整、搬出・運搬、最終処理までの一連の技術的知見を得るとともに、それを他の埋設箇所の作業の円滑化・効率化につなげていく考えです。

(参考:令和5年度以降のモデル地区での取組)NEWアイコン
事業箇所 事業名 作業内容 入札状況 事業期間 事業報告 所管局
岐阜県下呂市 令和5年度埋設農薬の探査に関する事業 レーダー探査等 令和5年7月19日
落札
令和5年7月26日~
令和6年3月15日
概要(PDF : 375KB)
報告書(PDF : 6,094KB)
中部森林管理局
令和6年度埋設農薬の探査に関する事業 レーダー探査、土壌調査等 公告日
令和6年3月27日
入札日
令和6年5月9日
(令和7年3月7日)
高知県四万十町 産業廃棄物処理業務一式 コンクリート槽破砕・処理 令和6年2月7日
落札
令和6年2月15日~
令和7年2月28日
  四国森林管理局
佐賀県吉野ヶ里町 産業廃棄物処理業務一式 埋設物の掘削・処理 令和6年2月15日
落札
令和6年2月26日~
令和6年9月27日
  九州森林管理局
熊本県宇土市 産業廃棄物処理業務一式 埋設物の掘削・処理 令和5年12月27日
落札
令和6年1月13日~
令和6年7月16日
  九州森林管理局
鹿児島県湧水町 令和5年度埋設農薬の掘削処理に関する事業 試料採取・成分分析 令和5年9月1日
落札
令和5年9月7日~
令和6年7月12日
  九州森林管理局

6.よくある質問 

(Q1)ベトナム戦争時に米軍が使用した「枯葉剤」との関係は?
  ベトナム戦争時に米軍が使用した「枯葉剤」が国内に埋められているとの報道等がありますが、国有林野内に埋設されている2,4,5-T系除草剤のことですか。

(A1)米軍が使用した「枯葉剤」を埋めたものではありません。
  昭和40年代中頃に国有林野事業において使用した2,4,5-T系除草剤は、国内の製造業者が農薬登録して販売していたものを購入したものです。そうして購入した除草剤を使用中止して未使用となったものを埋設しています。
  ベトナム戦争時に米軍が使用した、いわゆる「枯葉剤」には2,4,5-Tが含まれていることから、国有林野事業で購入して使用していた除草剤と関連づける報道等は見られますが、ベトナム戦争で使用されたいわゆる「枯葉剤」を埋めたものではありません。

(Q2)埋設物や周辺にはどの程度のダイオキシン類が含まれているのですか?

(A2)令和4年度の調査の結果、モデル地区におけるダイオキシン類の濃度が分かりました。
  2,4,5-T系除草剤は有効成分として2,4,5-Tを含んでいました(粒剤で1.3%程度、乳剤では19%~58%程度とされています)。その2,4,5-Tの製造過程の副産物として、ごく微量にダイオキシン類が含まれていたとされていますが、埋設当時の除草剤について、ダイオキシン類の含有量に関する詳細なデータはありません。
  令和4年度にはモデル的な取組に着手し、埋設物中に含まれているとされるダイオキシン類の濃度を調査しました。その調査結果では、埋設物から環境基準値以上の濃度のダイオキシン類が検出されましたが、周辺土壌からは環境基準値以上の濃度のダイオキシン類は検出されておりませんでした。

埋設物及び周辺土壌のダイオキシン類濃度分析結果   (出典:令和4年度埋設農薬の掘削処理に関する事業報告書)
埋設箇所   試料採取場所 試料数 ダイオキシン類(pg-TEQ/g)
佐賀県吉野ヶ里町 埋設物 2 16,000/29,000
周辺土壌 10 0~18
熊本県宇土市 埋設物 3 13,000/13,000/16,000
周辺土壌 19 0~15
環境基準値 1,000

佐賀県吉野ヶ里町の除草剤埋設量:粒剤945kg
熊本県宇土市の除草剤埋設量:粒剤2,055kg

(Q3)埋設物のコンクリートが劣化してダイオキシン類が漏れ出すのでは?
  コンクリートの耐用年数がおよそ50年程度となっているので、コンクリートの劣化により、埋設した除草剤が漏れ出すのではないかとの意見がありますが、本当ですか。

(A3)コンクリートの耐用年数とは関係なく、土中で安定した状態にあります。
  ダイオキシン類は水に溶けにくく、土壌粒子に吸着しやすい特性があります。
  除草剤を埋設するに当たっては、土壌とセメントと混ぜ合わせましたが、これは(ア)ダイオキシン類を土壌粒子に吸着させる、(イ)ダイオキシン類を吸着した土壌粒子が埋設箇所から動かないように固体化する、ことを意図したものです。これまで埋設箇所から周囲への移動は認められておらず、土中で安定した状態にあります。
  セメントを混入したのは、その物理的な強度を期待したものではなく、ダイオキシン類を吸着した土壌粒子の間隙を埋めることで固体化するためです。更に、こうして固体化した埋設物自体も上下左右周りの土壌に囲まれた状態になっていますので、コンクリートの劣化により漏れ出すおそれはないものと考えます。


(Q4)これまでに埋設箇所で異常はないのですか?
  これまでに埋設地で自然災害等は発生していないのですか?埋設箇所において、柵などで立入禁止にしている範囲内の植生に異常はないですか?

(A4)これまでに埋設地が土砂災害などを受けたことはなく、定期的に行っている点検でも異常は確認されていません。
  埋設に当たっては、風水害の影響を受けない尾根筋近くなどを選んだ上で、埋設後の覆土部分が1m以上となるように埋設しているため、これまでに埋設地が被災したことはありません。また、森林管理署等の職員が定期的(年2回以上)に現地を点検していますが、これまでに異常が確認されたことはありません。
  なお埋設箇所によっては、埋設物の上部をコンクリート等による被覆をしたところがありますので、柵などで囲っている内側と外側では植物の生育状態が異なっている場合があります。

(Q5)埋設地で災害が発生した場合の近隣の住民への影響は?
  豪雨や大きな地震が多発しているので、埋設箇所が被災して埋設物ともども流れ出ると近隣の住民に影響することはありませんか?

(A5)除草剤成分と土壌粒子が吸着した状態の埋設物が流れ出たとしても、人の口から土壌粒子が直接摂取される可能性は低いと考えます。
  豪雨や地震などの災害が発生して、埋設箇所が巻き込まれることで埋設物が流出しても、除草剤が土壌粒子等に吸着した粒子状のものが移動することとなり、ダイオキシン類のみが移動することは想定されません。仮に除草剤と土壌粒子が吸着した粒子状のものが流れ出たとしても、その粒子状のものを人がそのまま経口摂取する可能性は低いと考えます。

(Q6)ダイオキシン類が流れ出ることはないのですか?

(A6)ダイオキシン類は水に溶けにくく、土壌に吸着しやすい特性があります。
  ダイオキシン類は水に溶けにくく、土壌粒子に吸着しやすい特性がありますので、雨水等が土壌にしみこんでも、ダイオキシン類が土壌粒子に吸着していれば、雨水等によりダイオキシン類だけが流れ出て移動する可能性は低いと考えます。
  令和4年度の調査結果では、周辺土壌からは環境基準値以上の濃度のダイオキシン類は検出されておりません。

埋設物及び周辺土壌のダイオキシン類濃度分析結果    (出典:令和4年度埋設農薬の掘削処理に関する事業報告書)
埋設箇所   試料採取場所 試料数 ダイオキシン類(pg-TEQ/g)
佐賀県吉野ヶ里町 埋設物 2 16,000/29,000
周辺土壌 10 0~18
熊本県宇土市 埋設物 3 13,000/13,000/16,000
周辺土壌 19 0~15
環境基準値 1,000

佐賀県吉野ヶ里町の除草剤埋設量:粒剤945kg
熊本県宇土市の除草剤埋設量:粒剤2,055kg

(Q7)掘削後の埋設物はどのように処理するのですか? 

(A7)高温焼却法又はジオメルト法による無害化処理を考えています。
  令和3年度の調査の結果から、無害化処理には高温焼却法とジオメルト法が挙げられますが、令和5年度から処理を実施している佐賀県吉野ヶ里町、熊本県宇土市、高知県四万十町については、令和4年度の調査結果等を踏まえ、処理可能な事業所数や概算処理費用、1日当たりの処理能力、ダイオキシン類の処理実績等を総合的に判断し、高温焼却法又はジオメルト法による無害化処理を採用しております。
  なお、報告書に記載のある
(ア)埋設物等の掘削に当たっては、ダイオキシン類を周囲に飛散させないための措置や、作業員の安全を確保するための対策を講じる必要があること。
(イ)埋設物等の処理に当たっては、処理施設や自治体等との十分な事前協議に加え、段階的に作業を進めていくことが必要であること。
等についても留意しております。

高温焼却法:高温焼却での分解・無害化による処理方法。
ジオメルト法:通電発熱での分解・無害化によりガラス固化体中に封じ込める処理方法。


(Q8)それぞれの箇所で、撤去までどれくらい時間が掛かりますか?

(A8)数年を要するものと考えております。 
  埋設箇所の作業条件等によりますが、令和5年度から処理を実施している佐賀県吉野ヶ里町、熊本県宇土市、高知県四万十町については、環境基準値を上回るダイオキシン類が現地に残留することが無いよう確実に作業を進める必要があるため、相当な処理量が見込まれること、その処理に当たっては処理施設や自治体等との調整が必要であることなどから、数年を要するものと考えております。

参考情報

  ダイオキシン類挙動モデルハンドブック(平成16年3月環境省環境管理局総務課ダイオキシン対策室)より抜粋
    4.1.1. 土壌吸着、土壌水中、間隙空気間での分配(P45)
【土壌水中量と土壌粒子の吸着量(固相―液相)の分配】
  ダイオキシン類の場合、非極性物質であることから、有機炭素に吸着しやすく、水に溶けにくい。よって水中に溶出する量は少なく、土壌粒子に吸着しているものが多い。
    4.1.2. 移動(P46)
  ダイオキシン類は土壌への吸着力が強く、上下の移動がほとんどないと報告されている。
    4.2.4. 土壌からの水域への土壌水流出(P47)
  ダイオキシン類は難溶解性のため土壌水として流出する量は少ない。

お問合せ先

国有林野部業務課

 代表:03-3502-8111(内線6301)
 ダイヤルイン:03-3503-2038

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