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林野庁

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令和2年度 森林及び林業施策

概説

1 施策の背景(基本的認識)

我が国の森林は、戦後に植栽されたスギやヒノキ等の人工林が十分に成長したことで、その約半数が50年生を超え、木材としての本格的な利用期を迎えている。この森林を「伐って、使って、植える」という形で循環利用していくことにより、地球温暖化防止等の森林の有する多面的機能を確保するとともに、林業の成長産業化と森林の適切な管理を両立していくことが、これからの森林・林業施策の主要課題である。

しかし、多くの森林所有者が小規模零細で分散した森林を抱えていることや森林所有者の世代交代等により、所有森林に対する森林所有者の関心が薄れ、森林の適切な管理が行われないという事態が発生している。

この事態に対応するため、「森林経営管理法」(平成30年法律第35号)に基づき、森林環境譲与税も活用しながら、適切な経営管理が行われていない森林について、市町村が仲介役となり、森林の経営管理を林業経営者へ集積・集約化するとともに、林業経営に適さない森林については、市町村が直接管理するという仕組み(森林経営管理制度)を構築したことから、その円滑な運用を図る。

また、森林経営管理制度の要となる林業経営者を育成するため、国有林の一定の区域において、一定期間・安定的に樹木を採取(伐採)できる権利を設定する制度を創設するほか、川上側の林業と木材の需要拡大を行う川中・川下側の木材関連産業の連携により、木材の安定供給を行う取組に対する金融措置を開始する。

さらに、適切な森林整備と保全、多様で健全な森林への誘導等による森林の多面的機能の発揮を図りつつ、施業の集約化や路網整備、人材の育成及び確保等を通じた原木の安定供給体制や事業者間での需給情報等の共有による効率的なサプライチェーンの構築、CLTの利用や公共建築物等への木材利用、木質バイオマス利用の促進等新たな木材需要の創出に取り組む。

また、国有林においては、「国有林野の管理経営に関する基本計画」に基づき、公益重視の管理経営を推進する。

このほか、令和元年房総半島台風、令和元年東日本台風等により発生した森林被害や山地災害の復旧整備を推進するとともに、「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(平成30(2018)年12月14日閣議決定)等による森林整備や治山対策を推進する。

また、新型コロナウイルス感染症により影響を受ける林業者等が資金調達を行う際の実質無利子化・実質無担保化等の資金繰り支援等を実施する。


2 財政措置

(1)財政措置

令和2(2020)年度林野庁関係当初予算においては、一般会計に非公共事業費約1,075億円、公共事業費約2,299億円(*1)を計上する。特に、「森林経営管理法」に基づき、適切な経営管理が行われていない森林について、市町村が仲介役となり行う林業経営者への森林の経営管理の集積・集約化や市町村による公的管理を進める。また、ICTを活用したスマート林業の推進、早生樹等の利用拡大、自動化機械や木質系新素材の開発等の「林業イノベーション」の取組を推進し、生産性等の向上を図る。さらに、木材の流通及び需要拡大については、川上から川下までの事業者間での需給情報等を共有できる効率的なサプライチェーンの構築を進めるとともに、経済界等との協力の下、都市の木造化、CLT等の利用、輸出等の促進を図る。

このため、

1)「林業成長産業化総合対策」として、

(ア)「林業・木材産業成長産業化促進対策」により、意欲と能力のある林業経営者を育成し、木材生産を通じた持続的な林業経営を確立するため、資源の高度利用を図る施業の実施、路網整備、高性能林業機械の導入、木材加工流通施設の整備等を支援(特に、路網整備については、近年の自然災害の激甚化等を踏まえ、路網の開設に加え、法面保護工等の機能強化を推進)

(イ)「林業イノベーション推進総合対策」により、ICTを活用して資源管理や生産管理を行うスマート林業を推進するとともに、早生樹等の利用拡大、自動化機械や木質系新素材の開発等による「林業イノベーション」の取組を支援

(ウ)「木材需要の拡大・生産流通構造改革促進対策」により、都市の木造化等に向けた木質耐火部材等の利用促進、CLT等の利用促進、民間との連携による中高層・非住宅建築物等への木材利用の促進、公共建築物の木造化・木質化等による新たな木材需要の創出、高付加価値木材製品の輸出拡大、サプライチェーン構築に向けたマッチング等の取組を支援

2)「「緑の人づくり」総合支援対策」により、林業就業前の青年に対する給付金の支給や、新規就業者を現場技能者に育成する研修、高校生や社会人を対象としたインターンシップ等を支援するとともに、森林経営管理制度の円滑な実施に向け、市町村の森林・林業担当職員を支援する人材の育成を推進

3)「森林・山村多面的機能発揮対策」により、森林・山村の多面的機能の発揮を図るため、地域における活動組織が実施する森林の保全管理や森林資源の利用等の取組を支援

4)「新たな森林空間利用創出対策」により、国有林における多言語による情報発信、木道整備等を実施するとともに、森林空間を健康、観光、教育等の多様な分野で活用する新たなサービス産業(「森林サービス産業」)の創出の取組を支援

5)「花粉発生源対策推進事業」により、花粉症対策苗木への植替え、花粉飛散防止剤の実証、花粉飛散量予測の精度向上につながるスギ・ヒノキの雄花着花状況調査等の推進やこれらの成果の普及啓発等を一体的に支援

6)「シカによる森林被害緊急対策事業」により、被害が深刻な地域等における林業関係者が主体となった広域的かつ計画的な捕獲等のモデル的実施、捕獲等の新技術の開発・実証、国土保全のためのシカ捕獲等を実施

7)「森林整備事業」により、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を実現するとともに、国土強靱化や地球温暖化防止等にも貢献するため、意欲と能力のある林業経営者やその経営者が経営管理を集積・集約化する地域に対し、間伐や路網整備、主伐後の再造林等を重点的に支援

8)「治山事業」により、豪雨災害など激甚化する災害への対応等国土強靱化のため、荒廃山地の復旧・予防対策、危険地区の治山施設の機能強化・老朽化対策、総合的な流木対策等を推進

等の施策を重点的に講ずる。

また、東日本大震災復興特別会計に非公共事業費約48億円、公共事業費約114億円を盛り込む。


(*1)「臨時・特別の措置」(重要インフラの緊急点検等を踏まえた防災・減災、国土強靱化のための緊急対策に係る分)約368億円を含んだ額。



(2)森林・山村に係る地方財政措置

「森林・山村対策」、「国土保全対策」等を引き続き実施し、地方公共団体の取組を促進する。

「森林・山村対策」としては、

1)公有林等における間伐等の促進

2)国が実施する「森林整備地域活動支援交付金」と連携した施業の集約化に必要な活動

3)国が実施する「緑の雇用」新規就業者育成推進事業等と連携した林業の担い手育成及び確保に必要な研修

4)民有林における長伐期化及び複層林化と林業公社がこれを行う場合の経営の安定化の推進

5)地域で流通する木材の利用のための普及啓発及び木質バイオマスエネルギー利用促進対策

6)市町村による森林所有者情報の整備

等に要する経費等に対して、地方交付税措置を講ずる。

「国土保全対策」としては、ソフト事業として、U・Iターン受入対策、森林管理対策等に必要な経費に対する普通交付税措置、上流域の水源維持等のための事業に必要な経費を下流域の団体が負担した場合の特別交付税措置を講ずる。また、公の施設として保全及び活用を図る森林の取得及び施設の整備、農山村の景観保全施設の整備等に要する経費を地方債の対象とする。

さらに、森林吸収源対策等の推進を図るため、林地台帳の整備、森林所有者の確定等、森林整備の実施に必要となる地域の主体的な取組に要する経費について、引き続き地方交付税措置を講ずる。


3 税制上の措置

林業に関する税制について、令和2(2020)年度税制改正において、

1)山林所得に係る森林計画特別控除の適用期限を2年延長すること(所得税)

2)林業用軽油に係る石油石炭税(地球温暖化対策のための課税の特例による上乗せ分)の還付措置の適用期限を3年延長すること(石油石炭税)

3)再生可能エネルギー発電設備等の特別償却制度(省エネ再エネ高度化投資促進税制(再生可能エネルギー部分))について、特別償却率を14%に引き下げた上でその適用期限を1年延長すること(所得税・法人税)

4)独立行政法人農林漁業信用基金が受ける抵当権の設定登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用対象者を拡充すること(登録免許税)

5)国有林野の管理経営に関する法律の一部改正に伴い、樹木採取権を法人税法等における減価償却資産等として規定すること(複数税目)

6)森林組合の連携手法の多様化等に関する制度改正において、改正後の森林組合等について、現行制度と同様の特例を措置すること(複数税目)

7)林業・木材産業改善資金等の貸付けを受けて森林組合等が取得した林業者等の共同利用に供する機械等の課税標準の特例について、適用期限を3年とすること(固定資産税)

8)森林環境譲与税に地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金を活用できることとし、令和2(2020)年度から令和6(2024)年度までの各年度の譲与額を見直すこと(森林環境譲与税)

等の措置を講ずる。


4 金融措置

(1)株式会社日本政策金融公庫資金制度

株式会社日本政策金融公庫の林業関係資金については、造林等に必要な長期低利資金について貸付計画額を240億円とする。沖縄県については、沖縄振興開発金融公庫の農林漁業関係貸付計画額を60億円とする。

森林の取得、木材の加工・流通施設等の整備、災害からの復旧を行う林業者等に対する利子助成を実施する。

東日本大震災により被災した林業者等に対する利子助成を実施するとともに、無担保・無保証人貸付けを実施する。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた林業者等に対し、実質無利子・無担保等貸付けを実施する。


(2)林業・木材産業改善資金制度

経営改善等を行う林業者・木材産業事業者に対する都道府県からの無利子資金である林業・木材産業改善資金について貸付計画額を38億円とする。


(3)木材産業等高度化推進資金制度

林業経営の基盤強化並びに木材の生産及び流通の合理化又は木材の安定供給を推進するための木材産業等高度化推進資金について貸付枠を600億円とする。


(4)独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証制度

林業経営の改善等に必要な資金の融通を円滑にするため、独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証や林業経営者に対する経営支援等の活用を促進する。

債務保証を通じ、重大な災害からの復旧、「木材の安定供給の確保に関する特別措置法」(平成8年法律第47号)に係る取組及び事業承継を支援するための措置を講ずる。

東日本大震災により被災した林業者等に対する保証料の助成等を実施する。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた林業者等に対し、無担保等により債務保証を行うとともに、保証料を実質免除する。


(5)林業就業促進資金制度

新たに林業に就業しようとする者の円滑な就業を促進するため、新規就業者や認定事業主に対する研修受講や就業準備に必要な資金の林業労働力確保支援センターによる貸付制度を通じた支援を行う。


5 政策評価

効果的かつ効率的な行政の推進、行政の説明責任の徹底を図る観点から、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号)に基づき、「農林水産省政策評価基本計画」(5年間計画)及び毎年度定める「農林水産省政策評価実施計画」により、事前評価(政策を決定する前に行う政策評価)や事後評価(政策を決定した後に行う政策評価)を実施する。



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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