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林野庁

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第1部 第1章 第4節 国際的な取組の推進(4)

(4)我が国の国際協力

我が国は、持続可能な森林経営等を推進するための国際貢献として、技術協力や資金協力等による「二国間協力」、国際機関を通じた「多国間協力」等を行っている。

平成28(2016)年の世界の森林分野の政府開発援助による拠出金6億4千万ドルのうち、我が国は3千6百万ドルを拠出しており、フランス、ドイツ、英国に次ぐ世界第4位の金額を拠出している(*179)。


(*179)OECD Stat



(二国間協力)

我が国は、「技術協力」として、JICAを通じて、専門家派遣、研修員受入れ及び機材供与を効果的に組み合わせた技術協力プロジェクト、研修等を実施している。令和元(2019)年度には、コンゴ民主共和国等で新たに森林・林業分野の技術協力プロジェクトを開始した。令和元(2019)年12月末現在、森林・林業分野では、18件の技術協力プロジェクトを実施している。林野庁からは、JICAを通じて7か国に8名の専門家を派遣している(資料1-46、事例1-7)。

「資金協力」としては、供与国に返済義務を課さない「無償資金協力」により、森林造成プロジェクトの実施や森林管理のための機材整備等を行っている。また、JICAを通じて開発資金の低利かつ長期の貸付け(円借款)を行う「有償資金協力」により、造林の推進や人材の育成等を目的とするプロジェクトを支援している。

事例1-7 ホンジュラスにおける生物回廊の設定及び管理能力の強化に向けた支援

中米のホンジュラスは、熱帯に属する生物多様性が豊かな国であり、森林生態系の連続性の確保や地域の生物多様性の維持・強化等を目的に、他の中米各国との連携の下、生物回廊注の構築を進めている。その一方で、森林の農地への転用、毎年繰り返される森林火災、病虫害の大発生等により森林の減少・劣化も大きな問題となっている。

こうした状況を背景に、我が国は、首都テグシガルパの東方数十kmに位置するラ・ウニオン生物回廊を対象に、平成28(2016)年からJICA技術協力プロジェクト「ラ・ウニオン生物回廊プロジェクト」を開始した。林野庁職員を含む長期専門家を派遣し、ホンジュラスにおける生物回廊にかかる国レベルの施策の推進を支援するとともに、ラ・ウニオン生物回廊の設定・維持保全活動に取り組む地方公共団体等の能力の強化等に取り組んでいる。また、得られた知見を生物回廊管理のモデルとして取りまとめることを目指して、野生動物の生息情報の収集、森林火災予防対策、水源地域の保全活動、環境に配慮した営農など、住民参加による生物多様性保全活動の創出にも取り組んでいる。

注:生物回廊とは、生物多様性の保全や生態系サービスの維持等を目的とした、複数の保護区域及びそれらを接続する森林等から構成された区域



(多国間協力)

「国際熱帯木材機関(ITTO)」は、熱帯林の持続可能な経営の促進と合法的に伐採された熱帯木材の貿易の発展を目的として、昭和61(1986)年に設立された国際機関である。ITTOには、熱帯木材の生産国・消費国から73か国及びEUが加盟しており、本部を我が国の横浜市に置いている。我が国はITTOに対し、加盟国としての分担金や本部事務局の設置経費に加え、持続可能な熱帯林経営の推進や違法伐採対策のための普及啓発及び人材育成に必要な経費を拠出している。令和元(2019)年12月に行われた第55回ITTO理事会(ITTC(*180)55)では、新しい資金調達の試行や、緑の気候基金(GCF(*181))等との連携強化等が採択された。また、前回(第54回)理事会以降、加盟国等から20件、総額5.1百万ドル(うち我が国から7件、85万ドル)のプロジェクト等に対して拠出又は拠出表明されたことが報告された。

「国際連合食糧農業機関(FAO)」は、各国国民の栄養水準と生活水準の向上、食料及び農産物の生産及び流通の改善並びに農村住民の生活条件の改善を目的として、昭和20(1945)年に設立された国連専門機関(*182)であり、本部をイタリアのローマに置いている。我が国はFAOに対し、加盟国としての分担金の拠出、信託基金によるプロジェクトへの任意拠出、職員の派遣等の貢献を行っている。平成29(2017)年以降、任意拠出した資金を活用し、開発途上国において植林を大幅に増加させるための土地利用計画の策定、各国の森林関連法制の情報の整備や施行能力の強化に向けた取組への支援を実施している。

また、我が国は、平成5(1993)年以降、国連、UNDP、アフリカ連合委員会(AUC(*183))等と共同でアフリカ開発会議(TICAD(*184))を開催しており、令和元(2019)年8月に横浜で「第7回アフリカ開発会議(TICAD 7)」を開催した。同会議の成果文書として気候変動、防災、人材育成等を含む「横浜宣言2019」が採択され、その具体的措置を定めた「横浜行動計画2019」において、持続可能な森林の管理のための専門家派遣や技術協力のための取組に関する内容が盛り込まれた。


(*180)「International Tropical Timber Council」の略。

(*181)「Green Climate Fund」の略。

(*182)それぞれの専門分野で国際協力を推進するために設立された国際機関で、国連憲章第57条及び第63条に基づき国連との間に連携協定を有し、国連と緊密な連携を保っている国際機関のこと。

(*183)「African Union Commission」の略。

(*184)「Tokyo International Conference on African Development」の略。



(その他の国際協力)

「日中民間緑化協力委員会(*185)」では、令和元(2019)年12月、中国の北京で第20回会合を開催し、前年度に実施した植林緑化事業のレビューとともに、これまで19年間、日中両国により進めてきた植林緑化事業が終了することから、全体の評価等について意見交換を行った。その結果、事業の成果が着実に積み重ねられてきたことを確認するとともに、引き続き森林・林業分野において日中で協力していくことで一致した。

同委員会は、平成12(2000)年から毎年開催されている。植林緑化事業には、これまで日本側から82の民間団体、中国側から各関係省庁及び29の省・自治区・市における多数の地元住民が参加しており、日中両国民の信頼関係、相互理解の増進に貢献してきた(*186)。


(*185)中国における植林緑化協力を行う日本の民間団体等(NGO、地方公共団体、民間企業)を支援することを目的として、平成11(1999)年11月に、日中両国政府が公文を交換し設立された委員会。同委員会は、日中両政府のそれぞれの代表者により構成され、助成対象とする植林緑化事業の選定に資するための情報及び意見の交換等を実施(事務局は日中緑化交流基金)。

(*186)林野庁プレスリリース「「日中民間緑化協力委員会第20回会合」の結果概要について」(令和元(2019)年12月11日付け)


挿絵5

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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