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林野庁

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平成30年度 森林及び林業施策

概説

1 施策の背景(基本的認識)

我が国の森林は、戦後に植栽されたスギやヒノキなどの人工林が大きく育ち、木材として利用可能な時期を迎えようとしており、これまでの「森林を育てる」だけでなく、「木を伐って、住宅などに使って、伐った後に再び植栽する」という新たな時代がやってくる。

しかし現状は、毎年増加する人工林資源の4割程度しか利用されず、人工林資源を有効に活用しているとは言えないことに加え、森林の手入れが行き届かず、国土保全や水源涵(かん)養、地球温暖化防止などの森林の公益的機能が十分に発揮されているとは言い難い。

このような状況となっている原因の一つは、我が国の森林の所有が小規模・分散的で、効率的な林業経営が難しくなっているとともに、多くの森林所有者が林業経営への関心を失っていることにある。

その一方で、多くの林業経営者は、経営規模を拡大したいとの意向があるものの、「事業地の確保が困難」、「路網が未整備」、「林業機械等の資本装備の更新が困難」などの理由から実現できず、主伐の予定がない多くの森林所有者と、意欲と能力がある林業経営者との間にミスマッチが生じており、充実した人工林資源が有効に活用されにくい状況にある。

このような課題に対し、「規制改革推進に関する第2次答申」(平成29(2017)年11月29日規制改革推進会議)、「農林水産業・地域の活力創造プラン」(平成29(2017)年12月8日改訂(農林水産業・地域の活力創造本部決定))を踏まえ、森林所有者が管理できない森林を市町村が引き受け、経済ベースで活用できる森林については、意欲と能力のある林業経営者に林業の経営を託し、自然的条件が悪く、経済ベースで活用できない森林については、市町村自らが経営又は管理(以下「公的管理」という。)を行う「新たな森林管理システム」を構築し、その際に市町村が公的管理を行う費用について、創設が決まった「森林環境譲与税」(仮称)の一部を活用することとしている。

さらに、「新たな森林管理システム」を構築することが見込まれる地域を中心に、路網整備や高性能林業機械の導入等の支援を集中的に実施することとしている。

平成30(2018)年度においては、「森林・林業基本計画」(平成28(2016)年5月閣議決定)等を踏まえ、「新たな森林管理システム」の構築と森林環境税(仮称)の活用という改革を通じて、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を進めるため、適切な森林整備及び保全、多様で健全な森林への誘導等による森林の多面的機能の維持及び向上を図りつつ、施業の集約化や路網整備、人材の育成及び確保等を通じた原木の安定供給体制の構築や、CLTの利用促進、公共建築物等への木材利用促進、木質バイオマスの利用促進等、新たな木材需要の創出に取り組むことが必要である。

また、平成28(2016)年の熊本地震や平成29(2017)年の九州北部豪雨等の集中豪雨により被災した山地の復旧整備、「流木災害等に対する治山対策検討チーム」中間取りまとめ(平成29(2017)年11月林野庁)や流木災害の発生を受けて実施した緊急点検を踏まえた総合的な流木対策等に取り組むことが必要である。


2 財政措置

(1)財政措置

平成30(2018)年度林野庁関係予算においては、一般会計に非公共事業約1,097億円、公共事業約1,900億円を計上する。特に、「農林水産業・地域の活力創造プラン」に沿って、森林所有者自らが適切な経営管理を行うことができない森林の経営・管理の委託を市町村が受け、意欲と能力ある林業経営者に再委託を行い、森林経営の集積・集約化を行うとともに、再委託できない森林及び再委託に至るまでの森林においては、市長村が公的管理を行う「新たな森林管理システム」を構築し、その際、生産性の高い森林については、「新たな森林管理システム」を構築することが見込まれる地域を中心として路網整備等の重点化を図ることで、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の両立を目指す。このため、

(ア) 「林業成長産業化総合対策」として、「林業・木材産業成長産業化促進対策」による、意欲と能力のある林業経営者の育成、「新たな森林管理システム」を構築することが見込まれる地域を中心とした路網整備や高性能林業機械の導入、主伐時の全木集材及びそれと一貫して行う再造林、木材関連事業者等が行う施設整備等の支援

「ICT・人づくりによる成長産業化支援対策」による、ICT等の先端技術を活用した森林施業の効率化や需給マッチングによる流通コストの削減などスマート林業の構築に向けた取組、施業現場の管理者育成等の支援

「木材需要の創出・木材産業活性化対策」による、非住宅分野を中心としたJAS構造材等の利用拡大、中高層建築物等に活用できるCLTの利用促進、公共建築物の木造化・木質化に向けた普及促進、「地域内エコシステム」の構築促進などによる新たな木材需要の創出、地域材の生産・加工・流通体制づくり、高付加価値木材製品の輸出拡大等の支援

(イ) 「森林・林業人材育成対策」による、林業への就業前の青年に対する給付金の支給や、新規就業者を現場技能者に育成する研修等の支援のほか、効率的な現場作業を主導することのできる現場の管理者を育成するためのキャリアアップ研修等の支援

(ウ) 「森林・山村多面的機能発揮支援対策」による、地域における活動組織が実施する森林の保全管理や森林資源の利用等の取組の支援のほか、地域における自伐林業グループ等による将来的な林業経営の集約化に資する森林管理や資源利用等の取組の支援

(エ) 「花粉発生源対策推進事業」による、花粉症対策苗木への植替えの支援、花粉飛散防止剤の実証試験、スギ・ヒノキの雄花着花状況調査等の推進やこれらの成果の普及啓発等の一体的な実施

(オ) 「シカによる森林被害緊急対策事業」による、被害が深刻な地域等における林業関係者が主体となった広域かつ計画的な捕獲等のモデル的な実施

(カ) 林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を実現するため、意欲と能力のある林業経営者や、その経営者が森林経営を集積・集約化する地域に対し、間伐や路網整備、主伐後の再造林等を重点的に支援する森林整備事業の推進

(キ) 集中豪雨、流木災害の拡大等に対する山地防災力の強化のため、荒廃山地の復旧・予防対策、総合的な流木対策の強化等を行う治山事業の推進

等の施策を重点的に講ずる。

また、東日本大震災復興特別会計に非公共事業約58億円、公共事業約266億円を盛り込む。


(2)森林・山村に係る地方財政措置

「森林・山村対策」、「国土保全対策」等を引き続き実施し、地方公共団体の取組を促進する。

「森林・山村対策」としては、

(ア) 公有林等における間伐等の促進

(イ) 国が実施する「森林整備地域活動支援交付金」と連携した施業の集約化に必要な活動

(ウ) 国が実施する「緑の雇用」新規就業者育成推進事業等と連携した林業の担い手育成及び確保に必要な研修

(エ) 民有林における長伐期化及び複層林化と林業公社がこれを行う場合の経営の安定化の推進

(オ) 地域で流通する木材の利用のための普及啓発及び木質バイオマスエネルギー利用促進対策

(カ) 市町村の森林所有者情報の整備

等に要する経費等に対して、地方交付税措置を講ずる。

「国土保全対策」としては、ソフト事業として、U・Iターン受入対策、森林管理対策等に必要な経費に対する普通交付税措置、上流域の水源維持等のための事業に必要な経費を下流域の団体が負担した場合の特別交付税措置を講ずる。また、公の施設として保全及び活用を図る森林の取得及び施設の整備、農山村の景観保全施設の整備等に要する経費を地方債の対象とする。

また、上記のほか、森林吸収源対策等の推進を図るため、林地台帳の整備、森林所有者の確定等、森林整備の実施に必要となる地域の主体的な取組に要する経費について、引き続き地方交付税措置を講ずる。


3 税制上の措置

林業に関する税制について、平成30(2018)年度税制改正において、

(ア) 森林吸収源対策に係る地方財源を確保するため、森林関連法令の見直しを踏まえ、平成31年度税制改正において、森林環境税(仮称)及び森林環境譲与税(仮称)を創設すること

(イ) 木質バイオマス発電設備等の再生可能エネルギー発電設備等の取得等をした場合に、取得価額の20%の特別償却ができることとすること(所得税・法人税)

(ウ) 山林所得に係る森林計画特別控除(収入金額の20%控除等)の適用期限を2年延長すること(所得税)

(エ) 軽油引取税の課税免除の特例措置(林業、木材加工業、木材市場業、堆肥製造業)の適用期限を3年延長すること(軽油引取税)

等の措置を講ずる。


4 金融措置

(1)株式会社日本政策金融公庫資金制度

株式会社日本政策金融公庫資金の林業関係資金については、造林等に必要な長期低利資金について、貸付計画額を223億円とする。沖縄県については、沖縄振興開発金融公庫の農林漁業関係貸付計画額を60億円とする。

森林の取得や木材の加工及び流通施設等の整備を行う林業者等に対する利子助成を実施する。

東日本大震災により被災した林業者等に対する利子助成を実施するとともに、無担保・無保証人貸付けを実施する。


(2)林業・木材産業改善資金制度

経営改善等を行う林業者・木材産業事業者に対する都道府県からの無利子資金である林業・木材産業改善資金について、貸付計画額を38億円とする。


(3)木材産業等高度化推進資金制度

木材の生産又は流通の合理化を推進するために必要な資金等を低利で融通する。

意欲と能力のある経営者等を支援するため、貸付利率の優遇、伐採・造林の一貫作業に対応した資金の新設等を行い、その貸付枠は、600億円とする。


(4)独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証制度

林業経営の改善等に必要な資金の融通を円滑にするため、独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証の活用を促進する。

東日本大震災により被災した林業者・木材産業者に対する保証料等の助成を実施する。


(5)林業就業促進資金制度

新たに林業に就業しようとする者の円滑な就業を促進するため、新規就業者や認定事業主に対する研修受講や就業準備に必要な資金の林業労働力確保支援センターによる貸付制度を通じた支援を行う。

その貸付枠は、5億円とする。


5 政策評価

効果的かつ効率的な行政の推進、行政の説明責任の徹底を図る観点から、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号)に基づき、「農林水産省政策評価基本計画」(5年間計画)及び毎年度定める「農林水産省政策評価実施計画」により、事前評価(政策を決定する前に行う政策評価)や事後評価(政策を決定した後に行う政策評価)を推進する。



お問合せ先

林政部企画課

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代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219