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林野庁

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第1部 第 VI 章 第2節 原子力災害からの復興(2)

(2)安全な林産物の供給

(特用林産物の出荷制限の状況と生産継続・再開に向けた取組)

食品中の放射性物質については、検査の結果、基準値を超える食品に地域的な広がりがみられた場合には、原子力災害対策本部長が関係県の知事に出荷制限等を指示してきた。

きのこや山菜等の特用林産物については、「一般食品」の放射性セシウムの基準値100Bq/kgが適用されており、平成30(2018)年1月18日現在、13県175市町村で、原木しいたけ、野生きのこ、たけのこ、くさそてつ、こしあぶら、ふきのとう、たらのめ、ぜんまい、わらび等23品目の特用林産物に出荷制限が指示されている。このうち原木しいたけについては、平成30(2018)年1月18日現在、6県93市町村で出荷制限が指示されている。

林野庁は、原木きのこの生産再開に向けて、平成25(2013)年10月に「放射性物質低減のための原木きのこ栽培管理に関するガイドライン」を策定し、全国の都道府県に周知した。同ガイドラインでは、生産された原木きのこが食品の基準値を超えないようにするための具体的な栽培管理方法として、原木・ほだ木は指標値以下の原木を使用すること、発生したきのこの放射性物質を検査することなどの必須工程のほか、状況に応じて原木・ほだ木を洗浄することなどを示している(資料 VI -6)。

資料VI-6 放射性物質低減のための原木きのこ栽培管理に関するガイドラインの概要

原木しいたけについては、平成30(2018)年1月18日現在、6県58市町村で出荷制限が解除(一部解除を含む。)され、生産再開が進みつつある。林野庁では、きのこ等の特用林産物生産者の生産継続・再開に向けて、安全なきのこ等の生産に必要なほだ木の洗浄機械の整備等を支援しているほか、きのこ原木の非破壊検査機(*48)を用いた安全性確保のための技術の検証等を実施している。

このほか、林野庁では、野生のきのこ・山菜等の出荷制限の解除が円滑に進むよう、平成27(2015)年11月に「野生きのこ類等の出荷制限解除に向けた検査等の具体的運用」の考え方を整理し、具体的な検査方法や出荷管理について関係都県に周知した。このような中で、野生のきのこ・山菜類、たけのこの出荷制限の解除も進みつつある。


(*48)従来のきのこ原木の放射性物質の検査は、チェーンソー等を用いて原木からおが粉を採取し、検査機器で計測している(破壊検査)が、原木のままでの検査を可能とするもの。「平成26年度森林及び林業の動向」204ページを参照。



(きのこ原木等の管理と需給状況)

林野庁は、食品中の放射性物質の基準値を踏まえて、きのこ原木と菌床用培地の「当面の指標値」(きのこ原木とほだ木は50Bq/kg、菌床用培地と菌床は200Bq/kg)を設定しており(*49)、都道府県や業界団体に対し、同指標値を超えるきのこ原木と菌床用培地の使用、生産及び流通が行われないよう要請を行っている(*50)。

東日本大震災以前には、きのこ原木は、各県における必要量のほとんどが自県内で調達されていたものの、他県から調達される原木については、その半分以上が福島県から調達されていたことから(*51)、多くの県できのこ原木の安定調達に影響が生じた。このような中、林野庁では、平成23(2011)年度から、有識者、生産者、流通関係者等から成るきのこ原木の安定供給検討委員会(*52)を開催し、全国4地区の安定供給実行委員会(*53)と連携して、需要者と供給者のマッチングを行っている(*54)。

きのこ原木の需給状況については、平成25(2013)年9月以降は、森林所有者等によるきのこ原木の供給可能量がきのこ生産者等によるきのこ原木の供給希望量を上回る状況が多くなっており(資料 VI -7)、きのこ原木のマッチングが進んでいると考えられるが、平成29(2017)年9月末時点で、供給希望量54万本のうちコナラが約9割を占めている一方、供給可能量56万本のうち約9割がクヌギ等となっており、樹種別にみるとミスマッチが生じている状況にある。


林野庁では、引き続き、供給希望量の多いコナラを主体に供給可能量の掘り起こしを行うとともに、きのこ原木のマッチングを推進することとしている。

このほか、日本特用林産振興会では、「西日本産クヌギ原木を使用した東日本での原木しいたけ栽培指針」を作成し、しいたけ生産者等に周知することにより、クヌギを用いた栽培方法の普及にも取り組んでいる。


(*49)「「きのこ原木及び菌床用培地の当面の指標値の設定について」の一部改正について」(平成24(2012)年3月28日付け23林政経第388号林野庁林政部経営課長・木材産業課長等連名通知)、「「きのこ原木及び菌床用培地の当面の指標値の設定について」の一部改正について」(平成24(2012)年8月30日付け24林政経第179号林野庁林政部経営課長・木材産業課長等連名通知)

(*50)「きのこ原木及び菌床用培地の指標値の設定について」(平成23(2011)年10月6日付け23林政経第213号林野庁林政部経営課長・木材産業課長等連名通知)

(*51)「平成23年度森林及び林業の動向」43-44ページを参照。

(*52)平成25(2013)年度までは「きのこ生産資材安定供給検討委員会」、平成26(2014)年度からは「安全なきのこ原木の安定供給体制構築に係わる検討委員会」と呼称。

(*53)平成25(2013)年度までは「安定供給実行委員会」、平成26(2014)年度からは「安全なきのこ原木安定供給体制構築支援に係わる実行委員会」と呼称。

(*54)「平成24年度森林及び林業の動向」61ページを参照。



(薪、木炭、木質ペレットの管理)

林野庁は、平成23(2011)年11月に、調理加熱用の薪と木炭に関する放射性セシウム濃度の「当面の指標値」(燃焼した際の放射性セシウムの濃縮割合を勘案し、薪は40Bq/kg、木炭は280Bq/kg(いずれも乾重量))を設定し(*55)、都道府県や業界団体に対し、同指標値を超える薪や木炭の使用、生産及び流通が行われないよう要請を行っている。

平成24(2012)年11月には、木質ペレットについても放射性セシウム濃度に関する「当面の指標値」(樹皮を除いた木材を原料とするホワイトペレットと樹皮を含んだ木材を原料とする全木ペレットは40Bq/kg、樹皮を原料とするバークペレットは300Bq/kg)を設定している(*56)。


(*55)「調理加熱用の薪及び木炭の当面の指標値の設定について」(平成23(2011)年11月2日付け23林政経第231号林野庁林政部経営課長・木材産業課長通知)

(*56)林野庁プレスリリース「木質ペレット及びストーブ燃焼灰の放射性セシウム濃度の調査結果及び木質ペレットの当面の指標値の設定等について」(平成24(2012)年11月2日付け)



(木材製品や作業環境等の放射性物質の調査・分析)

林野庁では、消費者に安全な木材製品が供給されるよう、福島県内において民間団体が行う木材製品や木材加工施設の作業環境における放射性物質の測定及び分析に対して、継続的に支援している。これまでの調査で最も高い放射性セシウム濃度を検出した木材製品を使って、木材で囲まれた居室を想定した場合の外部被ばく量を試算(*57)すると、年間0.031mSvと推定され、国際放射線防護委員会(ICRP)2007年勧告「一般公衆における参考レベル下限値:実効線量1mSv/年」と比べても小さいものであった(*58)。また、木材加工施設内における粉じんの放射性セシウム濃度は、検出限界以下であった。

福島県においても、県産材製材品の表面線量調査を定期的に行っており、放射線防護の専門家から環境や健康への影響がないとの評価が得られている。

このほか、林野庁では、製材品等の効率的な測定検査手法の検証・開発について支援を行っており、これまで、原木用、製材品用の表面線量の自動測定装置が開発されている。平成28(2016)年度には、集成材製造工程における自動測定装置が試作され、原木の受入れから木材製品の出荷に至る安全証明体制構築に向けた取組が進められている。


(*57)IAEA-TECDOC-1376で報告されている、居室を想定した場合の試算に基づき算出。

(*58)木構造振興株式会社、福島県木材協同組合連合会、一般財団法人材料科学技術振興財団 (2016) 安全な木材製品等生産技術検証・開発事業報告書: 58.




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