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林野庁

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「持続可能な木材利用」閣僚級フォーラム

令和4年5月26日

2022年5月3日(火曜日)、大韓民国で開催された「第15回世界林業会議」期間中の特別イベントとして、主催国の大韓民国と国連食糧農業機関(FAO)の呼びかけにより、「持続可能な木材利用」閣僚級フォーラムが開催されました。

我が国政府を代表し、林野庁の織田次長が、再生可能な資源である木材の循環利用の重要性や国際熱帯木材機関(ITTO)等の国際機関と連携した貢献について発言しました。

1.開催日時・場所

日時:令和4年5月3日(火曜日)17時30分~19時00分(現地時間)

場所:ソウル(大韓民国)

2.閣僚級フォーラムの結果概要

(1)背景・目的

持続可能な木材生産と利用は、森林の価値を高め、気候変動を緩和します。炭素集約型材料の代わりに、持続可能な木材を利用することは、経済回復、農村地域の成長、循環型経済への移行といった幅広い目的との相乗効果を生み出します。

本フォーラムは、参加国の木材利用に関する経験や政策を共有し、持続可能な木材利用の可能性を最大限に追求することにより、持続可能な社会に向けて前進するための道筋を模索することを目的にしています。

冒頭、セメドFAO事務局次長から、持続可能な木材利用(sustainable wood-based solutions)による、カーボンニュートラルで強靭な経済の構築への期待がオープニングメッセージとして述べられました。

続いて、大韓民国、カメルーン共和国、日本、オーストリア共和国、ペルー共和国、ガボン共和国及びコンゴ共和国の閣僚等から、持続可能な木材利用の拡大に向けた自国の取組の紹介とグローバルな行動の拡大に向けた発言がありました。我が国からは、林野庁の織田次長が登壇しました。

(2)各国発言

第一部では、持続可能な木材利用に向けた各国の経験と政策の紹介、第二部では、持続可能な木材利用に向けた将来展望がテーマとして設定されていました。

第二部における織田次長の主な発言のポイントは以下のとおり。

(ア)持続可能な木材利用の拡大には、再生可能な資源である木材の循環的利用(伐って、使って、植えて、育てる)による
   持続可能な森林経営が大切であることを強調
(イ)我が国における木材利用の促進の取組は、幅広い関係者による協議会の設立等の官民連携イニシアティブや「公共建築
   物等木材利用促進法」の制定等の政策的な枠組みの整備により、着実に進展
(ウ)海外での取組としては、ITTOへの拠出を通じて、ベトナム等の木材生産国における、持続可能な木材利用の拡大を
   支援
(エ)持続可能な木材利用のグローバルな展開のために、我が国の木材利用促進の経験を共有すると共に、引き続き、FAOや
   ITTOを通じて、持続可能な森林経営と木材利用に貢献



各登壇者からも持続可能な木材利用を推進するための方策の共有や今後の展望について、発言がありました。

各登壇者の主な発言は以下のとおり。

大韓民国(山林庁チェ長官):今日において森林産業は、気候変動に取り組む産業として捉えることができる。我が国の森林政策は、育てて、伐って、使って、植える、循環的利用によるカーボンニュートラルの達成への貢献を核に位置付けている。鉄やコンクリート等の炭素集約的な素材で建設されている都市において、今後は木材利用を推進し、炭素固定と木材の付加価値向上を図ることが重要。国内の森林の多くは1960~1990年代に造成され、未だ若く、輸入木材に依存しているのが現状。主要な木材輸入国として、合法木材の利用の促進と世界の森林保全に取り組んでいる。

カメルーン共和国(森林・野生動物省ンドンゴ大臣):カメルーンの森林面積は22百万ha、そのうち劣化した森林は0.6%。森林法に基づき、持続可能な森林経営、地域経済への貢献、地域住民の参加、生物多様性の保全、民間連携を柱として経営している。森林は重要な収入源であり、将来世代へ継承するもの。森林劣化は1%未満ではあるが、森林産業は国家収入の中で3番目を占め、雇用も含め森林が劣化する影響は大きい。ITを活用した国家資源管理システムや多国間の枠組みを活用し、引き続き森林の保全に努めたい。

オーストリア共和国(農業・地域・観光省パテック副大臣): EUは2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標を立てており、森林産業はその主要なアクター。我が国は、持続可能な森林経営に基づく木材を輸出する森林国。2020年には国内の森林セクターのために350百万ユーロの資金を追加的に提供した。我が国は、今後の世界的な行動の拡大のため、FAO、EUと連携し、持続可能な木材利用のための連携プラットフォームの設立を支援する。各国からの参加も期待している。

ペルー共和国(森林・野生動物庁コルドバ長官):ペルーの森林面積は73百万haで国土の半分を占める。気候変動の緩和、森林の減少・劣化対策、低炭素社会の実現、野生動物の保護に関して、地域住民と共に取り組んでいる。技術指導や基準設定、制度の整備等を通じた住民に対する違法伐採対策の充実も重要。

ガボン共和国(水・森林・海洋環境省ホワイト大臣):ガボンの国土の88%が熱帯林。年間100百万トンの炭素を吸収するカーボンポジティブ国である。現在我が国の経済の60%が石油由来であるが、持続可能な森林を基礎とした持続可能な経済への移行が必要。これまでEUや米国、アジアへ原料の輸出をしてきたが、今後は国内で付加価値を付けていきたい。

コンゴ共和国(森林・経済省マトンゴ大臣): 我が国は、1970年から択伐とゾーニングによる森林経営を実施。木材は地域住民の主要な収入源であり、産業としての発展が期待されている。「持続可能な木材」の定義が重要であり、基準の設定が必要。我が国では、認証や追跡システムを活用している。事業者の58%がFSC等の認証を取得し、森林減少率はごくわずか(0.06%)。再植林や民間連携、REDD+による森林再生を推進していく。

(3)「持続可能な木材利用に関する閣僚宣言」の採択

本フォーラムの成果として、今後の持続可能な木材利用をグローバルに拡大する意志を込めた閣僚宣言が採択、公表されました。

閣僚宣言の概要は以下のとおり。

〇持続可能な木材の生産と利用は、森林の価値を高め、気候変動を緩和する。木を用いた建築や木と共に生活することは、
 再生可能な材料への需要を高め、グリーンリカバリーの推進力となる。

〇炭素集約型材料の代わりに持続可能な木材を利用することは、カーボンニュートラルを達成し、より強靭な経済を構築す
 るための、費用対効果が高く、革新的な貢献となる高い可能性を有している。

〇持続可能な木材の利用に当たっては、持続可能な森林経営に基づくべきであることと共に、森林における炭素放出、生物
 多様性の喪失、その他の重要な森林サービスの低下など、森林の木材生産以外の多様な役割とのトレードオフのリスクに
 対処し、森林経営、劣化した森林の回復、造林の取組を強化する必要がある。

〇我々は、必要な行動を拡大するための、政策の強化と技術的対話、国及び主要な利害関係者間の交流等を推進する。その
 ためのFAOをはじめとする森林に関する協調パートナーシップ(CPF)(※)メンバーによる支援を歓迎する。

〇我々は、持続可能な木材利用の可能性を最大限に追求することで、よりカーボンニュートラルで強靭な経済を構築し、よ
 り持続可能な社会に向けて前進できると確信する。

(※)CPFは、森林に関する実質的なプログラムを持つFAO、ITTO等の15の国際機関・事務局による自主的なパートナーシップ。持続可能な森林経営や森林保全を通じて2030アジェンダの達成に貢献することを目的としている。

持続可能な木材利用に関する閣僚宣言(英文)
持続可能な木材利用に関する閣僚宣言(仮訳)

お問合せ先

森林整備部計画課海外林業協力室

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