「平成18年度南アルプスの保護林におけるシカ被害調査」について
中部森林管理局は、南アルプスの亜高山から高山帯においてシカの被害が見受けられることから、平成18年度に「南アルプスの保護林におけるシカ被害調査」を実施しました。なお、調査内容は以下のとおりです。
調査場所「南アルプス北部(主に長野県側)の保護林」
駒津峰・双子山、北沢峠、仙丈岳、三峰岳、熊の平、北荒川岳、塩見岳、本谷山、三伏峠の稜線部および登山道のお花畑やダケカンバ帯
調査結果
- シカによる植生被害が顕著に確認された場所は、ダケカンバ群落と雪田草原であった。
- ダケカンバ林の林床植生が、シカの重要な餌場になっている。食害の結果地被植生が単純になりイネ科草本、マルバダケブキなどが優先しており、今後さらに強い食圧がかかると林床植生の消滅、地表の裸地化が懸念される。
また、ダケカンバ林の延長上の雪田草原を良好な餌場として利用しており、雪田植生(お花畑)はシカの採餌場となっている。
藪沢、馬の背、仙塩尾根、井川越、北荒川、塩見岳、本谷山、三伏峠など南アルプスの代表的なお花畑が壊滅的な被害を受けている。
高茎草本が消滅・衰退し、イネ科草本やマルバダケブキが優先する単純植生に変化している。食圧が高い場所は牧草地のようになっている。 - ハイマツ林はシカの踏み込みを阻害していてほとんど被害無し。2~3箇所において剥皮されていた。風衝草原では採餌に十分な量がなく、適していないためか被害は少ない。
- 希少種についても多くの植物が被害を受けている。
シカ被害地写真(仙丈岳のお花畑)
以前、高山植物が咲いていた仙丈岳(馬の背)のお花畑 (提供:上伊那教育会)
馬の背のシカ被害地(お花畑の変化) 撮影:平成18年8月